
インタビュー
V字回復した胸いっぱいのRPG「ブラウンダスト2」が目指すは「斬新な下品さ」。シリーズを支えるキム・ジョンホ氏に話を聞いた[TGS2025]
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本作は,2023年6月22日にグローバルリリースされた。日本で2018年3月にサービスが始まった「ブラウンダスト」(iOS/Android)の後継作で,当初高い注目を集めたものの,不具合などから勢いを落としていった。
しかしながら,ここ1年半で段階的にプレイヤー数を回復し,現在は,サービス開始当初を上回る勢いだという。
その舞台裏について,本作のサービス事業部門を総括し,グローバルサービスの強化を目的としたタスクフォースの統括責任者も務める,キム・ジョンホ氏に話を聞いた。
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4Gamer:
まずは,自己紹介をお願いします。
キム・ジョンホ氏(以下,キム氏):
はい,ブラウンダスト2の事業を統括しているキム・ジョンホと申します。ゲーム業界では15年ほど働いていて,NetmarbleやNCSOFTでそれぞれ4年から5年ほどキャリアを積みました。NCSOFTでは,「リネージュ2M」の事業担当も務めて,その後,2021年にNEOWIZに入りました。
最初は「ブラウンダスト」の事業担当を務め,自然な流れで,「ブラウンダスト2」も担当しています。
4Gamer:
今回,「京まふ」「東京ゲームショウ」と短期間に連続出展していますが,狙いは何でしょうか。
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今まで各地域の最大都市でイベントをやっていたのですが,遠くのエリアの方々が残念がっていました。そこで「いろいろな都市でイベントを開催しよう」という趣旨が,京まふにちょうどマッチした形です。
関西の方は京都へ,関東の方は東京へ来て楽しい思い出を作ってくれれば嬉しいなと。
4Gamer:
では,ほとんど同じ出展内容にしたのは意図的ということですか。
キム氏:
はい。意図的にまったく同じものにしていて。ファンに負担をかけたくないので,どちらか一方に参加すれば,十分楽しめるようにしました。
4Gamer:
ファンへの思いやりを感じます。
さて,ブラウンダスト2は,ここ1年半でV字回復を果たしたと伺っています。サービス開始時から現在まで,プレイヤー数はどのように変化していきましたか。
キム氏:
DAU(デイリーアクティブユーザー)基準で説明しますと,ローンチ時は約27万人でスタートしました。ただ,初期にアプリの不安定性やコンテンツ不足,ビジネスモデルなど,全体的にファンの期待に応えられなくて。
プレイヤー数は,2,3か月で急激に落ち込み,2023年11月ごろには,4万人程度,つまり,80%以上の人が離脱してしまったのです。
4Gamer:
かなり落ち込んでいますね。
キム氏:
はい。でも,その頃から残ってくれた4万人のファンが喜ぶアップデートを続けていきました。開発陣4人のライブ配信など,ファンに喜んでもらえるアクションを続けた結果,2023年12月の0.5周年から段階的にプレイヤー数を回復して。
1周年には約12万人,1.5周年には約17万人,そして,2周年には約27.5万人という,ローンチ当時のDAUを超えるV字回復を果たしました。
4Gamer:
ターニングポイントとなるきっかけは,何だったのでしょうか。
キム氏:
やはり,最低に落ち込んだ2023年11月,12月ですね。「これからどうサービスを続けていくか」を考えたとき,多くの不便な状況にも関わらず,ゲームを続けてくださり,コミュニティでさまざまな意見をくださる方々を満足させるべきと決心し,ファンを守るための戦略を明確に進めることができました。
4Gamer:
その残っていた4万人のファンが喜ぶ要素とは何だったのでしょうか。
キム氏:
ブラウンダスト2の最大の強みは,やはりイラストでした。とくに肉感があってセクシーなイラストが非常に人気だったので,この方向で発展させていこうと。
それに加えて,ゲームがプレイヤーの負担にならないようにしました。課金もプレイ時間もそれぞれのプレイスタイルに合わせて,無理なくプレイできるように。
また,いつ戻ってきても楽しくゲームができることにフォーカスして,アップデートを進めました。
力を入れ続けているのが,ストーリーの面白さを確保することです。キャラクターに愛着が持てるような物語を展開し,インタラクション要素もいれて,さらに好きになれるようにしています。
4Gamer:
V字回復を実現できた具体的な要素は何だと思いますか。
キム氏:
主に3つあります。
第1に,ゲームに不足な点はありましたが,公式イラストレーター・折り紙さんの素晴らしいイラストに,雰囲気のいいグラフィックス,戦略的な戦闘システムなど,ゲーム自体のもつポテンシャルが高かったということです。
これがなければ,成功できなかったと思います。
第2に,NEOWIZがファン中心の戦略をとても大事にしていることです。
「短絡的な売上にこだわらず,しっかりとファンダムの成長に力を入れていけば,自然と回復できる」という戦略を忍耐強くとれたからこそ,ファンの反応を見ながら,一緒に成長ができたと思います。
最後に,失敗を恐れずに挑戦したことです。いつも謙遜な心を持って,失敗しても次の挑戦をする。ライブ配信をやってみて,オフラインイベントに参加してみて,どうやったらファンが喜んでくれるだろうと悩みながら,挑戦を繰り返したことがV字回復の要素です。
要は,私たちを信じてゲームをプレイしてくださるファンの皆さんに,楽しい思い出を作っていただきたかったのです。
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4Gamer:
なるほど。その挑戦が,あの2周年の水着PVにも現れていると思います。
キム氏:
あれも挑戦の一環です。分かってくれて嬉しいです。
4Gamer:
残っていたファンが喜んだイラストは,いわゆるセクシー路線ですが,ブラウンダスト2が考えるセクシーさの哲学はありますか。
キム氏:
開発の言葉を借りると「斬新な下品さ」です。
リリース当初から私たちがやっていることは,常に一貫しています。ファンの皆様が喜んでくださることをもっと上手くやろう,と。
それを突き詰めていったら,斬新な下品さにたどり着いたのです。
4Gamer:
ブラウンダスト2のLive2Dの使い方は,言語化するのが難しいですが,本当に斬新で天才的だと思います。
キム氏:
ファンの皆さんからいただく「こいつら何なんだ!?」という反応を褒め言葉として受け取り,皆さんに喜んでもらえることをいつも考えています(笑)。
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4Gamer:
ブラウンダスト2は,グローバルでサービスを展開していますが,地域によってデザインの受け入れられ方の違いはありますか。
キム氏:
ありますね。だいたいの人気順位は似ているところがありますが,地域によって爆発的に人気を集めるキャラクターがいることもあります。
たとえば,4月に出した「鋼の君主 ウィルヘルミナ」は,欧米や日本で爆発的な反応がありました。金髪碧眼のクールビューティーをコンセプトにしたキャラクターで,もちろん韓国やほかの地域でも十分反応は良かったです。
4Gamer:
あのとんでもなく伸びるタイツの……。
「私はベイルーンの為の剣、そのものである。」
— 【公式】ブラウンダスト2 (@BROWNDUST2_JP) April 9, 2025
ベイルーンを守護する鉄血の女王、
「鋼の君主 ウィルヘルミナ」(CV #遠藤綾 さん)が
満を持して明日10日メンテナンス後より登場!!
ぜひ、仲間に加えてくださいね!
※「鋼の君主… pic.twitter.com/5bkUI4JT4w
キム氏:
はい,それです!
4Gamer:
初めて見たとき,映像のインパクトにびっくりしました。人気爆発の理由は何でしょう。
キム氏:
金髪碧眼,クールビューティー,カリスマ的な女性というサブカルチャー文化では定番の要素に,お尻スパンキングというギャップ的な要素が人気を爆発させた理由だと思います。
4Gamer:
個人的に,韓国のセクシーなゲームといえばお尻のイメージが強いので,少し意外な結果です。
キム氏:
実は,お尻はグローバルでみんな好きだと思うのですが,むしろアメリカやヨーロッパ,あと日本での反応が非常にアツいんです。
韓国だと,「ネブリス」「ロエン」あたりの人気が高く,「エクリプス」のような全体的に豊満なキャラクターは,どの地域でも同じくらい人気です。
4Gamer:
なるほど。では,最近登場した「ティル」のように,もっと肉感を増やしていくのでしょうか。
本日の公式放送で、紹介がありました新規実装キャラクターの紹介?!??
— 【公式】ブラウンダスト2 (@BROWNDUST2_JP) September 8, 2025
【ティル (CV:#礒部花凜 さん) 】
『私、子犬じゃなくてオオカミなんですよ、オオカミッ!』#ブラウンダスト2 #ブラダス2 pic.twitter.com/UVQ8baJ492
キム氏:
むっちり系もスレンダー系もバランスよく出していく予定です!
4Gamer:
セクシー路線を突き進んでいますが,プラットフォームの審査で怒られることはないのでしょうか。
キム氏:
幸い,意外と大丈夫で,プラットフォーム側も尊重してくださっています。ただ,パブリックに見える場所では,ある程度の隠し処理をしています。
これはプラットフォームに言われたわけではなく,あくまで自主的な取り組みです。
インタビューに同席していたスタッフによると,動画広告を出稿するとき,光で隠したものを提出したら「胸が光っているのはおかしい」と言われ,消したものを再提出すると,「やっぱ光ありでお願いします」と言われた出来事もあったそうだ。
4Gamer:
なるほど。線引きは重要だと思いますが,ラインを越えてしまったことはありますか。
キム氏:
開発中にはありましたね。さすがにここまではやってはいけない,と。
App StoreとGoogle Playというメジャープラットフォームでサービスをしているゲームとして,ラインを飛び越えないギリギリの範囲でサービスしてこそ素晴らしいゲームだと思いますので,しっかりと一線は守っています。
もちろん不快感を覚えないように,努力しています。
4Gamer:
ストッパー役は誰になるのでしょうか。
キム氏:
まず私が見て,本当に大丈夫かな,というものについては,事業チーム内で一緒に確認します。
とくにブラウンダスト2は,一枚絵ではなく,アニメーションが多いのですが,アニメの前段階は「ヤバイ」ことが多いんです。
実際に動かして見たら,このくらいなら大丈夫だな,という判断になることもあります。具体的には,「リベルタ」とかですね。
4Gamer:
実際のゲーム画面だと,2Dのドット絵がメインになりますが,そこでギャップを感じるといった声はありましたか。
キム氏:
そういったフィードバックもありますが,このギャップも私たちが狙った仕掛けの1つです。
最初は戸惑うんですが,ゲームのコアな部分で作りたかったJRPGをしっかりと作れていたからこそ,そのままファンになってくれています。
意外かもしれませんが,そこで離脱する人は少ないのです。
4Gamer:
マネタイズの話もお聞かせください。ガチャチケットやダイヤをかなり配布していますが,収益は得られていますか。
キム氏:
幸い,サービスの運営が続けられるくらいの課金は発生しています。配布が多いので,プレイヤー数ベースだと,売上的には少なめかもしれませんが。
面白い話だと,私たちがライブ番組に水着で出演したとき,視聴者の反応が「こいつらは,私たちが支援した」「俺たちの課金が水着になった」という反応が多いので,ありがたい気持ちでいます。
4Gamer:
パスやパッケージ,ダイヤなどの課金要素はいろいろとありますが,実際はどれが多いのでしょうか。
キム氏:
やはりガチャがメインなのですが,パッケージでガチャチケットをお得に含めているものが多いので,パッケージの売上の割合が高いですね。
4Gamer:
ブラウンダスト2のサブタイトルとして「胸いっぱいのRPG」というフレーズがありますが,これに込められた思いをお聞かせください。
キム氏:
もともとは,「ハイエンド2DグラフィックスRPG」と言っていました。ブラウンダスト2の特徴をしっかりと伝えていると思っていたのですが……正直,かっこつけてるし,皆さんの頭にも残らないものでした(笑)。
そんなとき,昨年冬頃から,日本運営チームが日本向けに「胸いっぱいのRPG」というサブタイトルを使い始めて。これが日本のファンの皆さんに「面白い」とすごく好意的に受け入れてもらえたんです。
それを聞いて,「もういっそ,これを全世界共通の公式サブタイトルにしちゃおう!」となりまして,ロゴまで作っちゃいました。
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この胸いっぱいのRPGには,「本当にフィジカルな胸がいっぱい」という意味と,「冒険や困難を通じて,胸がいっぱいになる感動の物語」という2つの意味が込められています。
だからこそ,ファンの皆さんにも面白く受け入れてもらえたのだと思います。
ブラウンダスト2らしい,強烈でちょっとユーモラスなサブタイトルを考案してくれた日本チームはもちろん,「このアイデアで行ける!」と背中を押してくれた日本のファンの皆さんには,本当に感謝しています。
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4Gamer:
最後に,ファンへのメッセージをお願いします。
キム氏:
これは営業コメントではなく,本心なのですが(笑)。
今ブラウンダスト2のサービスを担当していて,本当に楽しい気持ちでいっぱいです。オフラインイベントを増やしたことで,ファンのみなさんが喜んでいる姿をダイレクトに感じられています。
ファンと一緒に楽しい思い出を作れているからこそ,本当に楽しくて,ファンの皆さんとも真摯なコミュニケーションが取れていると思います。
足りない部分を継続的に発展させながら,さまざまなイベントを通じて直接お会いできればと思います。皆さんの愛に報いる時間を必ず用意させていただきます。
本日は,このような機会をいただいた4Gamerさんにもお礼申し上げます。
4Gamer:
いえいえ。こちらこそ,本日はありがとうございました!
「ブラウンダスト2」公式サイト
「ブラウンダスト2」ダウンロードページ
「ブラウンダスト2」ダウンロードページ
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- 編集部:或鷹
- カメラマン:畑沢亮太

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