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“俺と同じくらいの強さの奴に毎日会いに行く”を実現するために。「スト6」のVライバルができるまで[CEDEC 2025]
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本講演は,対戦格闘ゲーム「ストリートファイター6」(PC / PS5 / Xbox Series X|S / PS4 / Nintendo Switch 2)の,プレイヤーを模したAI「Vライバル(まねもんくん)」を通して,プレイヤー同士の対戦を元にしたAIの作成工程や,ゲームへの理解を深めさせ,次回のプレイへとつなげる仕組みなどを紹介するものだ。
※CEDEC運営事務局からの要請により,このレポートは講演の一部内容を省略したダイジェスト版となっている
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安原氏はまず,Vライバル(まねもんくん)の目的が「同じ強さの相手と毎日戦えるようにするため」であると語った。理由はシンプルに,対戦ゲームにおいて「同じ強さの相手と対戦するのは面白い」からだ。
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ストリートファイター6には,ある程度同じ強さの人と対戦できる「ランクマッチ」が用意されている。しかし,誰しもがいきなり対人戦に乗り気になれるかというと,そうではない。
また「ワールドツアー」や「アーケードモード」など,初心者が対人戦に至るまでをサポートするさまざまなモードも存在するが,安原氏はランクマッチへの挑戦には大きな崖があると感じたそうだ。
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その崖を越えるためには,2つのハードルが存在すると安原氏は続ける。
まず1つ目は,ストリートファイター6にさまざまなシステムや技術があるという「技術的ハードル」だ。しかし,最初からすべてを覚えられる人などいないので,これは先述の「同じ強さの相手との対戦」を行えば,段々と自身のレベルにあった技術を身につけられる。
次に,自分がしっかり動けているかどうか分からず,人によっては対戦相手に申し訳なさを感じてしまうといった「心理的ハードル」だ。これは,対戦後に何ができていたかを明確にして成長を実感させたり,逆に何ができていなかったかを教えて成長のきっかけを与えたりすることで,ハードルを下げられるという。
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そのためにVライバルに用意された機能が,各ランク別のAIによる「ライバルとの実践」と,対戦後にその内容を評価する「肯定とアドバイス」だ。
では,Vライバルで各ランク帯のプレイヤーの強さを再現するために,いったいどのような手順をとっていたのか,そのAIの構築について詳しい解説がされた。
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まずはじめに,日々世界中で行われるオンライン対戦のリプレイ(キーの入力情報)から,Vライバルのための学習データを作成する。そこには,特定の行動をとったタイミングのさまざまな情報を含んだ「スナップショット」と呼ばれるデータが,大量にまとめられている。
これにより,AIが「このシチュエーションではこの行動をとっている」という学習を行えるわけだ。
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ここで,実際にAIが学習していく様子を動画にまとめたものが紹介された。プレイヤーとAIが対戦するという内容で,1ラウンド目はプレイヤー側がずっと飛び道具を打ち続け,AIは何もせずそのまま敗北した。
次のラウンドでは,さきほどプレイヤーが見せた行動を学習したAIが,同じように飛び道具を打ち続けるようになった。しかしプレイヤー側はそれに対して,ジャンプ攻撃による飛び道具への対策を行う。
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すると,AIはプレイヤーが飛び道具を撃つタイミングでジャンプをしてくるようになった。今度はプレイヤーがその対策で対空攻撃を行い,これも覚えさせる。こうしてどんどん学習を進めたAIは,わずか数戦後にはさまざまな選択肢を取るようになっていた。
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スナップショットには「キャラクターのアクション」「空中かどうか」「ラウンド状況」「ゲージ状況」「弾の種類と発射されてからの時間」「キャラクターの位置」「相手との距離」という,7つの項目を数値化したものが記録されている。
VライバルのAIは,それらの数値から,現在のシチュエーションに近い数値のスナップショットを選択し,そのキー入力を再生しているそうだ。
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なお本機能は,対空などの反応が遅れたり,コンボ選択を間違えてしまったりと,プレイヤーが起こしがちな“うっかりミス”も再現することで,「強さ」よりも「らしさ」を重視したつくりになっているという。
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例えば,AIが「強パンチがヒットしてからコンボに入る」というスナップショットを対戦で再生したとする。そこでもし強パンチがガードされてしまった場合,その時点でAIは「ガードされた時」のスナップショットへと差し替えを行う。
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しかし,ヒットとガードの確認を100%行えるプレイヤーはまずいない。そのため,ガードされているのにそのままコンボ技を発動してしまったり,逆にヒットしているのにガードされた時の技を入れ込んだりしている人間らしいデータも,スナップショットには含まれているという。
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このようにVライバルは,実際の対戦で発生したシチュエーションを限りなく再現する,すべてのプレイヤーの分身ともいえる存在であることが説明された。これならば,いわゆるCPU戦で発生するような「理解不能な行動」や「超反応」といった人間らしさのない動きは,かなり少なくなるだろう。
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なお,セッションの後半では,2つ目のハードル「心理的ハードル」を越えるために,プレイヤーがゲームを楽しみながら上達できる,対戦後の評価やアドバイスについて解説が行われた。
アドバイスの内容はどうやって判断しているのか,その評価項目はどんなポイントから選出されているのかなど,こちらも興味深い内容となっていた。
後半ついては,後日掲載する詳報にてレポートを行うので,ぜひ楽しみにしてほしい。
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