
インタビュー
[インタビュー]「Pikmin Bloom」山﨑友敬氏が語る――仙台イベントの舞台裏から,アプリのこれから描く未来まで
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4Gamerは「Pikmin Bloom Journey 2025:仙台」の会場で,全体統括責任者の山﨑友敬氏に話を聞く機会を得た。本稿では,イベント開催地である仙台市や作品に込めた想いなどをたっぷりとお届けする。
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“杜の都”仙台市はピクミンと相性抜群!
4Gamer:
「Pikmin Bloom」としては初の東北地方,宮城県仙台市でのイベント開催となりました。改めて「Pikmin Bloom Journey 2025:仙台」に込めた想いを教えてください。
山﨑友敬氏(以下,山﨑氏):
最初のウォーキングイベント「Pikmin Bloom Tour 2023:札幌」を開催したときから,たくさんの人に楽しんでいただけるように,できるだけさまざまなエリアで開催したいという思いがありました。
「Pikmin Bloom Tour」や「Pikmin Bloom Journey」のほかにも,地域の方に協力していただき,大規模なイベントも多数開催してきましたが,東北地方で開催できていないことは私たちにとっても気になるポイントでした。
今回「Pikmin Bloom Journey 2025:仙台」を開催した宮城県仙台市は,別名“杜の都”と呼ばれています。「Pikmin Bloom」はお花を植えていくことがコンセプトで,その点でも親和性があり,都市の規模感もイベントにちょうどよく,ぜひ実現したいと考えていました。そのなかで御縁とタイミングが合い,開催できたことをとても嬉しく思っています。
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4Gamer:
実際に参加させていただき,市街地でも自然の美しさを身近に感じました。また歴史上の偉人 伊達政宗にまつわる史跡や商店街など,バランスよくいろいろな場所が見られるのも楽しかったです。
山﨑氏:
仙台市を訪れるのは2回目なのですが,駅前を中心としたエリアだけで史跡や温泉など,いろいろな表情があるのが魅力的ですよね。さらに少し外れると川があり,山もあり,バランスが取れています。
私もイベントのスペシャルスポットを全部巡ったのですが,とても清々しくて,「いいところだな」と思いました。
4Gamer:
街を歩いて回っていろいろな発見ができるのも,リアルイベントの楽しさの1つですね。
山﨑氏:
おっしゃるとおりです。「Pikmin Bloom」はお散歩からウォーキングまで,日々の“歩く”という行為を取り入れているゲームです。
先ほどの話題にも出ましたが,リアルイベントをいろいろな地域で実現したいと思っている理由は2つあります。1つは地域に住んでいる皆さんに自分たちの街で体験していただきたいということ。もう1つは,他の地域で暮らす皆さんが開催地に足を運び,新しい発見をしていただきたいということです。
そういう意味でも,リアルイベントのスペシャルスポットは史跡的なものから商店街のお店まで,ツアーガイドブックのように網羅的に紹介するのではなく,「これを知るとより楽しめますよ」という場所をギュッと濃縮し,体験していただくことを重視して選んでいます。
4Gamer:
メディア向けのツアーで,仙台市職員の皆さんからいろいろなお話を聞けたのも貴重な機会でした。これまでのイベントもそうでしたが,地方自治体と密に組んでイベントを開催されていますよね。
山﨑氏:
「Pikmin Bloom」は普段の街歩きも楽しいですが,リアルイベントでいろいろな街に出かけて発見をすることとも相性がいい作品です。
リアルイベント開催が決まった際には,今回なら仙台市さんにオススメの場所をお聞きし,我々としても「ここがいいのでは」とアイデアを出し,歩く距離などを考えながら協議してスペシャルスポットを選定しています。
全エリアを巡るのに易しすぎると物足りないですし,幅広い年齢の方が参加するので,きつすぎても楽しめなくなってしまいますからね。今回も,全スポットに行くのは大変だったと思います。
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4Gamer:
全部巡りましたが,途中休憩を挟みつつ,達成感のあるちょうどいいエリア規模だと感じました。エリアに地下鉄の駅が点在していて,うまく活用してショートカットできるのも助かります(笑)。
山﨑氏:
そうですね。ずっとストイックに歩くイベントではなく,街をいろいろ見て歩くのが楽しいイベントですからね(笑)。スペシャルスポットにカフェや名産品のお店を入れると,皆さん観光もちゃんと楽しんでくださっているのが嬉しいです。
「休みなく全部歩いて完走しました」というよりは,1日ゆっくり楽しんでいただくのにちょうどいい距離になるようにしています。
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ビッグフラワーやおまつりキノコ出現など,イベントが進化
4Gamer:
今回の仙台市は黄色ピクミンでしたが,「Pikmin Bloom Journey」はちょっとした物語性があり,ピクミンと一緒に旅している感が楽しめるのもステキですよね。
山﨑氏:
通常はあまりストーリー性がないのですが,有料の「Pikmin Bloom Journey」だけは,絵本のような物語を用意しています。
今回はちょっと食いしん坊の黄色ピクミンが登場し,スペシャルフラワーでエキスを取って与えても,なかなか満足しないという(笑)。
4Gamer:
イベントに参加しながら,「え,まだエキスほしいの?」って話しかけてしまいました(笑)。個性的で思い出も共有できるので,ほかのピクミンもかわいいですが,愛着が増しますよね。
山﨑氏:
イベントとして面白くできるように,チームで工夫しながらストーリーを作っています。
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4Gamer:
アプリ内だけでなく,仙台市内にリアルイベントでも初となるビッグフラワーのオブジェが登場したことにも感激しました。
山﨑氏:
「Pikmin Bloom Journey 2024:東京ドームシティ」ではキノコのバルーンを作ったのですが,そのときからチーム内で「ビッグフラワーも……」という思いはあったのですが,時間の関係もあり実現せず,本イベントで初登場となりました。
4Gamer:
作品と現実がリンクすると言いますか,より没入感が高まりますよね。イベントでは参加者の皆さんがピクミンサンバイザーをつけているので,より「Pikmin Bloom」の世界に入り込んだ感覚があるといいますか。
山﨑氏:
本当にそうですね。普段は見えないピクミンたちを連れて歩いているのが,リアルイベントだけはピクミンになれます(笑)。
イベント初期のころは,サンバイザーをどれくらいの人がつけてくれるんだろうかと思っていました。皆さん身に着けていただいて,参加していない方にも興味を持っていただけるのが嬉しいです。
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4Gamer:
今回のイベントでは,アプリ内にイベント限定の巨大な「おまつりキノコ」が出たのも印象的でした。参加人数の制限がなく,会場にいる皆でチャレンジできるのも,イベントならではの面白さだなと思いました。
山﨑氏:
リアルイベントの参加者のなかには,熱心にプレイしてくださっている方も多いので,通常のキノコはすぐに満員になってしまいます。これまでも「キノコがすぐに埋まってしまう」という意見は出ていて,解決のために議論を重ね,今回のように人数制限なくチャレンジできる「おまつりキノコ」を採用しました。
「おまつりキノコ」は,スペシャルエリアよりもさらに広域に配置しています。全部探すとちょっと大変ですが,「おまつりキノコ」を探す楽しさもありますよ……という仕掛けになっています。
4Gamer:
本イベントでは,「アクティブ2DAYオプション」(有料追加オプション)で2日とも参加できるようになりました。「おまつりキノコ」探しも含め,仙台市を観光し尽くすのにぴったりですね。
山﨑氏:
「アクティブ2DAYオプション」も,「おまつりキノコ」を広域に配置した理由の1つです。
参加者の皆さんに「こんなにあるので,全部楽しんでください!」というプレッシャーはかけたくありません。日帰りでも十分楽しめますが,週末開催のため泊まりがけで来る方の楽しみを広げる施策として取り入れています。
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4Gamer:
「おまつりキノコ」は,どんな場所に配置されたんですか。
山﨑氏:
皆さんが行く,名所と呼ばれるところが多いです。全体で10カ所ほどあり,離れたところですと瑞鳳殿(仙台藩祖・伊達政宗の霊廟)にもあります。
今年になってアプリ内の地図が広域対応し,遠くのキノコやビッグフラワーの位置が見られるようになりました。「おまつりキノコ」やスペシャルスポットの場所も見られるようになっているので,今後のイベントの際はぜひ活用してみてください。
4Gamer:
仙台市に来たからには,伊達政宗関連の史跡を巡りたいという歴史ファンの方もいますからね。瑞鳳殿に行って「おまつりキノコ」に出会うのは,楽しい思い出になりそうです。
山﨑氏:
そうですね。でも必須にすると本当に大変なので,そうはならないようにしています。
各観光地に興味がある方や,キノコを壊した際にもらえるポストカードが欲しいという方に楽しんでいただきたいです。
4Gamer:
スペシャルスポットのものもそうですが,イベントで手に入るポストカードはステキなものが多いですよね。
山﨑氏:
本作には「かわいいピクミンたちと一緒に歩く」,「シーズンイベントのデコピクミンを集める」など,いくつもの楽しみ方があると思っています。
その遊び方の1つがポストカード集めで,熱心なプレイヤーの皆さんからの注目度も特に高まっています。さらにポストカードは集めるだけでなく,友達と交換できるので,思い出を分かち合えるのも魅力です。今後も,ポストカードにはさまざまな活用方法が広がっていくと考えています。
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4Gamer:
今回参加して,海外からの参加者の方もたくさんいました。海外でのリアルイベントも開催されていますが,作品としての注目度もより高まっているのでしょうか。
山﨑氏:
最近は「ウィークリーチャレンジ」で“誰とでも”グループを組めたり,キノコチャレンジで遠くのフレンドを誘えるアイテム「キノコお助けメガホン」が追加されたりと,近くやリアルのフレンド以外とも遊べる作品になっています。そのため,国をまたいでフレンドになる方も多いです。
例えば昨年,韓国で光栄なことに「Pikmin Bloom」がブームになり,「日本のポストカードが欲しいのでフレンドになりませんか」と交流を呼びかけている姿もよく目にしました。
こうした広がりもあって,日本発の人気IPを世界にどんどん発信していきたいと考えています。ありがたいことにプレイヤー数も増えていますが,フレンドを強制するのではなく,1人でも心地よい距離感で楽しめるようなサポートは大事にしています。
またアプリと同じように,リアルイベントにも興味を持って日本に遊びに来てくださる海外の方が増えているのではないかと感じます。逆に,10月11日と12日に開催される「Pikmin Bloom Tour 2025:高雄」(台湾)には,日本から足を運んでくださる方が増えたら嬉しいですね。
最初にお話しした「地域の方にも,ほかの地域の方にも参加してほしい」という気持ちは,グローバルになっても変わりません。
4Gamer:
今後のリアルイベントで,より深めていきたい要素はありますか。
山﨑氏:
本作は位置情報ゲームのなかでも「歩く」という基本に根差した作品だと思っています。そして,作品と旅行で各地を歩くことはとても相性がいいと感じています。
今年立ち上げた「まち歩き」という機能があり,リアルイベントも大きな括りとして「まち歩き」に含まれます。「まち歩きポータル」という形で,参加したイベントの情報などを振り返ることができるようになっています。
これからも大きなイベント,小さなイベントを問わず,世界のいろいろな場所で楽しんでいただける展開を広げていきたいと思っています。
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アプリのこれから描く未来
4Gamer:
ここからは,改めて「Pikmin Bloom」の魅力についてうかがっていきたいと思います。「歩くことを楽しくする」というコンセプトに込められた想いを教えてください。
山﨑氏:
弊社は,人々に外に出てもらい,冒険してもらうことをミッションにしています。「Pikmin Bloom」は歩かないと始まらず,その理念をもっとも体現しているゲームだと考えています。普段のちょっとしたお散歩やウォーキングに寄り添う存在になってほしいと思っています。
4Gamer:
最近「レストラン」や「スーパーマーケット」にレアなデコピクミンが追加されるなど,日常でピクミンを探す楽しみが増える仕掛けが用意されているなと感じました。
山﨑氏:
日常的に出会えるデコピクミンのことを“ロケーションのデコピクミン”と呼んでいて,山に行けば「山のデコピクミン」,川に行けば「橋のデコピクミン」や「水辺のデコピクミン」に会えます。
実生活の行動がゲーム世界とリンクするのは,位置情報ゲームだからこそ実現できることです。どのように反映させていくかは常に考えているので,いろいろ探して見つけて楽しんでいただけているなら嬉しいです。
4Gamer:
近所を散歩するときも,「コインランドリーのデコピクミン」などレアな苗が出る場所を覚えて,そこまで足を運ぶようになりました。それ以外にもピクミンのおかげで,いろいろな場所に行かせていただいています(笑)。
山﨑氏:
そうなりますよね(笑)。旅で新しい発見があるのはある意味当たり前のことですが,歩きなれた道でもそうした楽しみがあると提案できるのは,このアプリならではの価値だと思います。
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4Gamer:
開発・運営チームとして,大切にしていること,意識していることはありますか。
山﨑氏:
アプリの機能を複雑化しすぎないことですかね。機能が増えると操作も複雑になりがちなので,なるべく始めたばかりの方でも楽しめるように,操作性はシンプルに保ちたいと考えています。
また,新しい機能を追加するだけでなく,使いにくい機能を改善することも同じくらい重要なポイントだと思っています。
4Gamer:
長く愛される作品だけに,最初の一歩が踏み出せない人もいるかもしれません。初心者に向けたアドバイスをお願いします。
山﨑氏:
ゲームのなかには,初期から始めた方と今始めた方で大きな差が生まれてしまうものもあります。「Pikmin Bloom」でもレベルや持っているデコピクミンの種類に差は出てしまいますが,苗を見つけて,ピクミンと一緒に歩くという基本的な楽しみ方は変わりません。
4Gamer:
確かに。キノコチャレンジには一定のレベルが必要ですし,レベルによって隊列に入れられるピクミンの数が変わるなどの違いはありますが,基本的には平和なお散歩がメインですね。“ロケーションのデコピクミン”に関しては,お住まいの場所のリアルラックのほうが重要なイメージがあります(笑)。
山﨑氏:
そうなんです(笑)。レベル20くらいまで育てれば,先行しているプレイヤーさんたちとほぼ同じことができます。今から始める方にとっては,まだ出会っていない“ロケーションのデコピクミン”がたくさんいる状態なので,外に出るたびに新しい出会いが待っているんです。いろいろなデコピクミンを集めるのは,とても楽しい経験になると思います。
イベント限定のデコピクミンについても,新規の方がずっと入手できないままになるのは私たちにとっても残念なので,できるだけ復刻するようにしています。新規の方も,長く遊んでくださっている方も,皆さんに楽しんでいただけるよう意識しています。
4Gamer:
「コミュニティ・デイ」のミッションをこなすと手に入るフラワーバッジについても,定期開催イベントで入手できるチャンスがあるのが親切でいいなと思いました。
山﨑氏:
季節の花が咲く「コミュニティ・デイ」は,ご要望も多かったため,毎月どこかの週の土日に開催するようになりました。とはいえ,「土日は予定があって……」という方もいらっしゃいます。
そこで周年やハーフアニバーサリーのタイミングでも「コミュニティ・デイ」を実施し,お題をクリアすることで特定期間のフラワーバッジを獲得できるようにしています。全部そろっている方には物足りないかもしれませんので,ゴールドに輝く特別なアイテムが手に入る「とても難しいお題」も用意しました。幅広い層に楽しんでいただくための工夫です。
4Gamer:
今後,アプリとして挑戦したいことはありますか。
山﨑氏:
今後については,ここではまだ言えないことばかりでして(笑)。
1つ考えているのは「ライフログ」です。ピクミンと一緒に歩いた歩数,植えた花,撮影した写真といったデータを自動的に記録し,後から振り返られるようにしたいと考えています。
任天堂さんと協力しながら,これから10年,20年と続く作品にしていきたいので,思い出を上手に振り返られる仕組みを実現できればと思っています。そのためにどんな要素があればいいのか,新規の方がどうすれば楽しんでくれるのかを含め,これからも模索していきます。
4Gamer:
最後にファンの皆さんに,メッセージをお願いします。
山﨑氏:
いつも遊んでいただき,コメントなどを拝見して,我々も大きな励みをいただいています。もうすぐ4周年を迎えますが,それに向けたイベントも企画していますので,ぜひ楽しみにしていてください。
先ほどもお伝えしたとおり,10年続くアプリを目指して開発を進めています。これからも一緒に楽しんでいただけたら嬉しいですし,我々も皆さんとともに成長していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
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――2025年9月20日収録
「Pikmin Bloom」公式サイト
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