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印刷2025/06/27 09:25

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4周年越えの運営ゲームが第2の黄金期へと至るまで――苦境だった「クッキーラン:キングダム」再浮上までの旅路[NDC25]

 韓国のゲーム開発者向けイベント「Nexon Developers Conference 25」(NDC25)で実施された,講演「クッキーラン:キングダム 第二の黄金期への旅路」をレポートしていく。

 本講演では,Devsistersのキム・イファン氏が登壇し,4周年を迎えた運営型ゲームを,市場で再浮上させるまでのプロセスが解説された。

Devsisters「クッキーラン:キングダム」プロデューサーのキム・イファン氏
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 2021年1月にリリースされた「クッキーラン:キングダム」iOS / Android)は,「クッキーラン」シリーズのスピンオフ作品で,顔役のクッキーたちが冒険を繰り広げるアクションRPGだ。
 ユーザー数は世界累計で8000万人を超えている。

 だが本作は年々,サービス実績に陰りが見えていた。これはあらゆる運営型ゲームで起こってしかるべき苦境だが,本作の場合,2025年の4周年をターニングポイントに大きな苦境を乗り越えたという。

 壇上では,そのために実施した組織再編をはじめ,コンテンツデザインやプレイヤーエンゲージメントの強化など,KPI(業績指標)の大幅な向上に貢献した過程と戦略が紹介された。

 講演は,危機・工夫・飛躍の三段構成で進んでいった。

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 2023年8月。本作のサービス開始から約2年半が経過したころ,運営型ゲームとしての地盤が不安定に揺るぎはじめていた。

 その理由は,ゲームとしての危機だ。さまざまな指標が右肩下がりであること。長期的なマイルストーンの不在によって,不透明な将来への危機対策に不備があったこと。そして会社全体の長年の赤字経営によって,チーム運用が困難化していたのである。
 本作はこの時期,新たな方向性を模索する必要に迫られていた。

 そのすこし前の2021年,同社にキム・イファン氏が入社した。それから2年後の2023年,苦境にあった本作のプロデューサーとして,氏が抜擢された。しかし,入社から十分な時間も経過していない時節。氏は若手扱いされ,信頼性のないプロデューサーと見られていた。

 「正常化」。これは一時期,韓国ゲーム業界を揺るがした言葉だ。同社もまた,この言葉に揺るがされる中心地に立っていた。

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 キム・イファン氏は当初,本作を運営型ゲームとして再スタートさせるにあたり,開発・運営のテンポを保ちつつ,開発環境を効率化しなければ今後のサービスが追いつかないと判断した。

 やりたいことは山ほどある。ゲームのおもしろさを強化し,多角化したい。アップデートの構造も変化させたい。今どきはユーザーコミュニケーションも大切,どころか必須。すべてをやり遂げるのを難しくさせる意思決定の問題。健全なゲーム作りのための壁は大きかった。

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 まずは開発環境の整備に着手した。ゲームをアップデートしても,次のアップデートが同時にスタートダッシュをきってくる,永遠に似た,運営型ゲームならではの終わらぬサイクルだ。開発終盤ともなると「とりあえず出す」の意識に支配され,整理整頓まで気を配れなくなる。

 これの解決は難しいことだが,それでもやるべきと,キム・イファン氏はバラバラに崩れていた開発のパイプラインをまとめ直した。

 最初の小さな願いは「せめて,自分のせいでみんなの仕事が押される状況は避けたい」というものだった。もともとの信条は,その日の問い合わせにはその日のうちに答える,であった。信頼感を植えられていないチームでそれを成すのは大変だったが,当面は自らのすべてのリソースを投じて,周囲の信頼感を得られるように動いた。そうして徐々にだが,周りから,結果的に,受け入れられるようになったという。

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 次に「運営戦略チーム」を新設した。目先のアップデートを追うので精いっぱいにならないよう,より長期的観点でサービスの方向性を定めて,チームに伝搬していく。それが同チームの役割だった。

 チームが稼働しはじめると,目先の次,その次の視界まで確保できるようになり,みな自然と,戦略的に動き出せるようになった。

 運営戦略チームの設立を周囲に持ちかけた当初,みなは口々に「難しいだろう」と言った。ただ,その場にいたチームメンバーの両目が光っていたことを,キム・イファン氏は今でも思い出す。

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 当時の本作は,キャラクター実装の構想も甘かった。とくにきっかけもなく提供されるハイランクのキャラクターは,いつどこで誰がピックアップされるのか,悪い意味で分かりづらかった。

 それはユーザーに不誠実だろうと,キム・イファン氏にとってはプロデューサーとして初の記念日,3周年アップデートで整備に乗り出した。以降はハイランクキャラクターを「メインストーリーの流れに応じて」投入し,実装キャラクターに対する期待感も高めた。

 ストーリーは,来年にはエンディングを迎えていいとも考えた。終わったなら,次を考えて提供すればいいと決めたのである。この決意は,ユーザーコミュニケーションのためにはじめた公式配信の場で「この1年は,皆さんとの約束を守ります」と宣言し,己の枷にした。

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 従来のアップデート計画は,2か月単位でメインストーリーを更新していたが,それを細分化し,スケジュールを全般的に見直すことにした。以降はストーリー実装が約2か月〜3か月ごととなり,その中間に小型・中型の更新に相当する“ブリッジアップデート”を設けた。

 ゲームの更新頻度が高まることは,さらなるアップデート地獄の幕開けにもつながりかねない。だが,こうやってあらかじめ考えておくと,みんなが同じ絵を見て,同じ方向へと進めるようになった。

 それが開発チームに心の余裕をもたらし,視野を広げたのである。

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 ゲームのおもしろさはどうやって上乗せしていくのか。ゲームクリエイターなら全員が答えにあえぐであろう,最大の難問だ。

 その点,キム・イファン氏は本作において,開発がおもしろいと想定したコンテンツだけに注力するのではなく,楽しいのグラデーションを埋めきるように,「すべての楽しみ方」を提供しようと考えた。つまり,数打ちゃ当たるを数多くのコンテンツで実践したのだ。
 それをするだけの求心力が,このゲームにはまだまだ残っている。

 結果,すべてが当たったとは言えなかった。けれども人気の傾向は浮き彫りになった。そこから得たフィードバックを受け,さらなるブラッシュアップを試みる。そうして好循環を生み出すのだ。「このなかの1つは,誰かの好みに合ってほしい」そんな思いで挑戦した理由は,「世界中の人たちに,海外にはおもしろいゲームがあると伝えたいから」だという。

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 ユーザーコミュニケーションについては「私も得意ではありませんが」と前置きしつつ,このゲームを長く楽しんでいる人との“呼吸”を合わたいと考えた。そうして慣れぬ公式配信に挑戦し続け,YouTubeチャンネルの登録者数は,いつの間にか160万人を超える。

 また,開発をするうえでの哲学を環境に浸透させるのも大切なことだ。本作は以降,ゲームのアップデートは「開発が必要だと思ったらやる」。そこから発生してしまったユーザーからの不満は,「いち早くキャッチして,コミュニケーションで答えて修正する」とした。

 開発が必要だと思うことと,ユーザーの求めるもの。どちらか一方が正解という話ではない。これらを共存させるための手段がコミュニケーションなのだ。もちろん,すり合わせが難しい問題が立ちはだかったときは,さらなる深掘りを検討し,誰も気付いていないなにかを探り出す。
 とにかく一方的にならないよう,双方向の関係を構築した。

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 プレイデータの見方も定めた。ユーザーからの意見・要望は大切だが,まずは総意ともいえるビッグデータから見ることにしたのだ。こちらの計画が狙い通りに届いたのか,大量のデータを前に,具体的に解析しようとした。この作業中,自分たちの考えがまったく届かなかったであろう反応を目にするのはツラいが,分析と改善のサイクルはやめなかったという。

 この手段には副次的な産物もあった。プロデューサーの権威的な直感ではなく,ユーザーが遊んだ結果であるプレイデータをもとにした意思決定は,信頼されていなかったキム・イファン氏の姿勢を知らしめ,多くの人を納得させた。成功するたびに,周囲からの信頼も高まった。

 以前は,コンテンツを1つ作るだけでも精いっぱいだった。今は「コンテンツが多すぎるだろうか?」と悩むほどに,開発環境のパフォーマンスが向上したという。キム・イファン氏のこれまでの構造改革は,開発・運営の基盤を強固にし,彼らは未来を設計できるチームになった。

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 本作に2度目の黄金期が訪れたのは,2025年1月の4周年アップデートのこと。事前の仕込みで心がけたのは,「期待できるように」「没入できるように」「みんなのお祭りになるように」だった。

 4周年記念では,ユーザーの期待感が高まるよう,激動のストーリー展開に合わせて,人気キャラクターを満を持して実装した。イベント類もコンセプトを統一し,誰もがお祭り気分を味わえるよう,RPGらしい成長要素の差が気にならない新コンテンツも投入する。

 さらに,この機会に入ってくる初心者や,起きてくる休眠者に向けても新たなガジェットを導入した。「ウィッチャーというゲームが大好きなのです」というキム・イファン氏は,これまでのストーリーの断片を,ロード画面でイラスト付きで見られる仕様を導入した。

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 期待させ,没入させ,きめ細かいゲーム作りを体験させ,おもしろいと思ってもらい,「クッキーラン:キングダム」という大船に乗ってもらいたい。そんな思いで挑んだ4周年以降,本作のDAU(デイリーアクティブユーザー)は右肩上がりとなり,今では限りなく100%に近い90%超の上昇値となった。リテンション(ユーザー定着率)も文句がない。

 これにより,本作を取り巻く指標は大幅増加した。グローバル市場でも急激に競争力が高まり,韓国市場では,キム・イファン氏がプロデューサーになってから初めて,App Storeのランキングで1位になった。そのとき氏は,とても感動したそうだ。

 「私にとって4周年アップデートは,一度きりの良い判断ではなく,これまでの積み重ねがもたらした結果でした。今ではチームメンバーも一緒に歩んでくれていますし,彼らの苦労もようやく報われたと思います。2025年のサービス実績はすでに想定値を達成しています。ですので,これからは次期のために,さらなる努力をしていきたいと思います」

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 キム・イファン氏にNDC25の講演依頼が舞い込んだとき,当初は「自分には難しい」と思ったそうだ。あくまで,この業界にはよくあるエピソードの1つ。できれば断りたいと思ったという。
 それでも登壇したのは,いろいろな人がやってくる会場で,同じゲーム業界の人たちの参考になればと勇気を出したからだ。

 氏いわく,ゲーム業界にいる人たちは,心から他人を楽しませたい人たちだという。ゲーム作りの現場では,その思いが折れそうになるときもある。けれど,こうした話が誰かの道しるべになれば,それに越したことはない。「皆さんの心にも届いていたら,とてもうれしいです」と述べ,講演を締めくくった。

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