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[インタビュー]最大で6万本の予測だった「Valheim」はどのように生まれ,大きくなったのか。TGS会場でデザイナーたちに聞いた
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印刷2025/10/06 17:48

インタビュー

[インタビュー]最大で6万本の予測だった「Valheim」はどのように生まれ,大きくなったのか。TGS会場でデザイナーたちに聞いた

 2021年にアーリーアクセスが始まった「Valheim」は,開始から1か月で500万本を売り「Steamで最もプレイされたゲーム」の座を獲得,2022年6月には1000万本を突破するなど,世界的な大ヒット作となった。2026年にはPS5版のリリースを予定しており,PC版も1.0として2026年に正式リリースが期待されている。

 そんな「Valheim」だが,最初から今の成功が見えていたわけではなかったようだ。東京ゲームショウに出展されたブースにてDesigner&Lead EngineerのJonathan Smårs氏と,3D ArtistのLisa Tveit Kolfjord氏にお時間をいただき,「Valheim」がどのようにして生まれ,育ってきたのかを聞いてみた。

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「最大で6万本」の予測だったValheim


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4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
 まずはなぜ今,東京ゲームショウに出展しようと思ったのでしょうか?

Smårs氏:
 PlayStation 5版のアナウンスが大きな契機となっています。「PS5版の情報を出すから,東京ゲームショウに出展した」と言っても過言ではありません。実際,PVやトレイラーのナレーションも日本市場に向けて作りましたしね。
 PS5版は最初からバージョン1.0として完全な「Valheim」を体験できる予定で,PC版とのクロスプレイも可能になります!

4Gamer:
 実は自分はシェブデの街で,リリース前のValheimを見たことがあります。そのときは「このゲームは売れるだろうか」と不安げな様子も見て取れましたが,結果は1200万本を超える大ヒット作となりました。
 この展開は予想できていましたか?

Kolfjord氏:
 まったく予想外でした。売れて2万か,よくて3〜4万本くらいだろうと思っていましたね。パブリッシャのCoffee Stain Studiosも「最大で6万本」という予測を立てていましたし。
 それが蓋を開けてみたらいきなり50万本のヒット作となり,本当に驚きました。

Smårs氏:
 実際,会社が維持できるくらいに売れてくれればそれでいい,くらいにしか思っていなかったですよ(苦笑)。

4Gamer:
 オープンワールド・サバイバルアクションというジャンルには,多数の競合がいます。そしてそのうちいくつかは,Valheimに負けないくらい大きなタイトルです。
 そんななか,Valheim独自の強みは何だと考えていますか?

Kolfjord氏:
 そうですね,まずは建築関係に大きな特徴があると思っています。
 Valheimは建物を解体すると,その建物を建設したときに使った資材が100%戻ってきます。これによって,いわゆるお使い的な作業は大幅に減っています。
 また他の作品と違い,建築に一定のルールがあるのも特徴かなと思います。結果,ルールに従ってまとまりのある家を作れますし,「何を作ればいいのかわからない」といった状態にもなりにくい。自由は素晴らしいことですが,自由すぎると困ることってありますよね。

Smårs氏:
 それから,友達とマルチプレイをするとき,互いにやるべき作業を分けて楽しみやすいのも特徴です。木を伐採する,戦う,家を建てるなどなど,「これがしたい」という役割を分担しやすいんです。

4Gamer:
 もう何度も聞かれていると思いますし,自分も以前聞いたことがある質問なので恐縮なのですが,なぜテーマとしてヴァイキング文化を選んだのでしょう?

Kolfjord氏:
 私達の身近にある文化だ,というのが一番大きいですね。
 実際,Valheimは北欧神話をベースにしているだけでなく,私達にとって馴染み深い童話なんかも取り込んでいるんです。
 例えば川沿いにネックというモンスターが出ますが,これは日本だとカッパに近い存在で,子供に川を畏れさせるために親が語る物語が由来となっています。

4Gamer:
 Valheimは大きな規模のゲームへと育っていっていますが,ロードマップはどのようにして定められたのでしょうか。またなにかイレギュラーな実装などはありましたか?

Kolfjord氏:
 実はロードマップはあまり決めていないんです。バイオームこそ決めていましたが,シナリオは開発し始めてから作られたものですね。

Smårs氏:
 イレギュラーという点で言えば,最初は船が存在していなかったということが挙げられます。最初は大きな島が1つあるという構造だったこともあって,船で渡るべき海がそもそもなかったんです。
 しかし開発スタッフから「ヴァイキングがテーマなのに船が出てこないなんてあり得ない!」という,それはそれは強い要望がありまして,結果として船が実装され,船が渡る海も実装されていきました。


小規模チームとしてのIronGate Studio


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4Gamer:
 Valheimは小規模なチームで制作されていますが,IronGate Studioは何人のチームで始まって,いまは何名いるのでしょう?

Smårs氏:
 最初は1人で,すぐに2,3人に増えましたが,とはいえ小さなチームでした。小さなチームであることは今も変わっておらず,会社全体で16名,開発スタッフは7〜8名というところですね。

4Gamer:
 インディーゲームが盛り上がりを見せる中でもバッドニュースとして,開発チーム内部での不協和音,ないし最悪の場合はチーム解散といった問題も耳にすることがあります。
 IronGateのような小さなチームは,いったん分断が大きくなると致命傷を負うように思えますが,小さなチームをうまくマネジメントするノウハウを教えてもらえますか?

Smårs氏:
 我々はうまくやれていると思います。実際IronGateからは,いまだに離脱したチームメイトがいないんですよ。「この成功は自分のおかげ」みたいな文化がないのが大きいかなと感じています。

Kolfjord氏:
 開発者的に言えば,Valheimはまだ完成した作品ではない,という点も大きいと思っています。誰もが「1.0がリリースできるまでは見届けたい」と思って仕事をしてきましたし,これからもこのゲームがどういう形になるのか見ていきたいと思っています。
 そういう意味で,我々は一緒に旅をする仲間のようなものです。仲が良いし,メンバーが抜けることもないんじゃないですかね。

Smårs氏:
 私としては,いまのIronGateくらいの規模感がちょうど良いと感じます。お互いがどんな仕事をしているかも知っていますし,どんなスキルを持っているかも知っています。これが大きな会社だと「面識はあるけれど何をしている人なのかわからない」みたいなことがありますが,IronGateではそんなことはありません。
 そうやって互いに知り合いだからこそ生まれる信頼関係の深さや,コミュニケーションの深さといったものは,ゲーム開発にとって大いにプラスになっていると感じます。

4Gamer:
 開発スタッフはどのようにリクルートしているのでしょう? 公式サイトにリクルートのページはありますが,それだけですべてが上手くいくとは思えません。Valheimは世界的に有名なタイトルですから応募の数も多いでしょうし,そうなると「この人ならチームにフィットする」という確信を持って採用する難度も上がるのではないでしょうか。

Smårs氏:
 IronGate Studiosでは,スウェーデン語を話せる人を採用しています。小さなチームなので,緊密なコミュニケーションを重視しているんです。なので外国の方でもスウェーデン語を話せるなら採用されますが,今のところ全員スウェーデン人ですね。

Kolfjord氏:
 あと,IronGate Studiosは完全リモートワークではなく,定期的な出社も必要となっています。オフィスはシェブデにありますから,この条件も満たすとなると,それだけで結構厳選されてしまいますね。

4Gamer:
 なるほど,結構な狹き門ですね。となると,地元であるシェブデからの応募が多そうにも思えます。

Smårs氏:
 全員が全員,シェブデ在住というわけではありません(苦笑)。ただ私はシェブデ大学を卒業して,IronGateに加わりました。


スウェーデンのゲーム開発支援システムの実情


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4Gamer:
 Sweden Game Arena(以下,SGA)の目的のひとつでもある地域の雇用促進ができているのは素晴らしいことだと思います。
 というところでSGAの話に入りたいのですが,ValheimはSGAの支援を受けていましたが,実際のところ,SGAはどれくらい有益に機能していましたか。

Smårs氏:
 私達はこのゲームがSGAの手を離れてからチームに入ったので,支援を受けている最中のことを詳しくは知りません。
 ですがエンジニアはオフィスを安く借りれれたことを喜んでいました。また,普通では得られない様々な人脈が得られたのはありがたかったですし,当時のチームの力ではまず得られないようなコンタクトを得られたのも大きかったようです。

Kolfjord氏:
 IronGate Studiosは今もSGAと協調して活動しています。Sweden Game Conferenceへの登壇もしていますし,SGAのスポンサーにもなっています。また女性開発者への支援や開発援助など,メンターとしてのサポートも行っています。

4Gamer:
 自分も何度かSGAを取材してきて,とても素晴らしい取り組みだと感じています。ですが世に完璧なものなどありませんから,なにかしらSGAへの不満もあるのではと思います。その点についてうかがえますか。

Kolfjord氏:
 やはり地方がベースの組織なので,地域を越えて何かをとなると,なかなか届かないという問題があります。
 そのうえで,これはSGAに対する不満というよりスウェーデン政府への不満となりますが,ゲーム産業に対して国レベルでの支援がないというのは大きな問題です。助成金が出ないんですよ。

 スウェーデンは伝統的に鉄鋼業が盛んですが,スウェーデンのゲーム産業はすでに鉄鋼業より大きな産業規模に到達しています。なのにゲーム産業には国からの支援が得られないというのは,本当におかしいと思います。国がSGAをバックアップしてくれれば,SGAを全国展開していくことで,もっと良いゲーム制作環境が作れるのに……政府は口だけ出すけど出資はしないんですよね(苦笑)。
 小さなチームがニッチでコアなゲームを作るのであれば,低い投資額でも制作可能です。しかも海外でヒットすれば,税収としてすぐに反映される。投資の回収が容易なんです。なのに国はそういう支援をしないんですよね。

4Gamer:
 スウェーデンにはSGA以外にも様々な優れたプログラムがあるとはいえ,政府レベルとなると意外と支援が手薄なんですね……。


シェブデという街でのゲームづくり


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4Gamer:
 ところで大変に失礼ながら,シェブデの街は若者にとってそこまで魅力的な街ではないように思えます。娯楽と言えばボウリング場と映画館があるくらいですよね。

両氏:
 そのとおりですね(苦笑)。

4Gamer:
 そこで質問なのですが,オフィスをどこか別の街に移転しようと思ったことはありませんか? ストックホルムとか,さもなくばもっと南の,気候が温暖な地域とか。

Kolfjord氏:
 オフィスを移転する構想はないですね! まずなにより代表がシェブデの街が大好きで,ここに骨を埋める覚悟でいます。なのでIronGateの代表が代わらない限りは,シェブデからオフィスが動くことは考えにくいですね(笑)。
 それに,我慢できるなら通勤するという手もあります。生活の基盤は都市に起き,仕事はシェブデという形ですね。

Smårs氏:
 それから,確かにシェブデの街はイケてないかもしれませんけど,私達のオフィスはめっちゃイケてますので(笑)。

4Gamer:
 シェブデには世界的に有名な開発会社が複数ありますが,ValheimをパブリッシュしているCoffee Stain Studiosもシェブデの企業です。パブリッシャとしてのCoffee Stain Studiosはいかがですか。ゲームにヤギを出せ,みたいな要求がされたりしますか?

Kolfjord氏:
 Coffee Stain Studiosとの関係は良好ですし,実際,彼らはとても良い人たちです。発売までのマーケティングプランの立案や,配信者の手配など,非常に多くの面でサポートを受けました。
 もちろんクリエイティブについても自由にさせてもらっています。私達が作りたいものを作れていますね。ヤギを出せと言われたこともないです(笑)。
 それから我々としても,すべてをCoffee Stain Studiosにおまかせしているわけでもありません。ローカライズはIronGate社内で進めていますし,東京ゲームショウへの出展はUkiyo Studiosさんと直接進めました。

4Gamer:
 近年インディーゲームが世界的に注目されるなか,悪いニュースも時折耳にするようになりました。それはパブリッシャに事実上の詐欺行為を働かれた,といったタイプのニュースです。日本でもこのような問題を気にする開発者は少なくありません。
 IronGateは素晴らしいパートナーを見つけられましたが,これにはなにかコツのようなものがあるのでしょうか?

Kolfjord氏:
 まずそもそも,Valheimにはそんなにパートナーからのオファーがなかったという実情があります。そして声をかけてくれたCoffee Stain StudiosのオフィスはIronGateのオフィスから道を渡ってすぐそこにあるんですよね。彼らとは常日頃から話もしていましたし,食事を一緒に食べることも多いです。もとより信頼関係があったんです。

Smårs氏:
 Coffee Stain Studiosは,生まれたばかりのValheimという小さなプロジェクトを信用してくれるパブリッシャでした。そしてIronGate,あるいはValheimは,売り手側ではありませんでした。そんななか,「君たちに賭けよう」と言ってくれたのはとても嬉しかったですね。

4Gamer:
 普段からパブリッシャを「特別な他人」として見ていなかったのが功を奏した側面があるわけですね。
 さて,最後になりますが,日本のファンにメッセージをお願いします。

Smårs氏:
 まずは東京ゲームショウをとても楽しんでいます,とお伝えしたいです。ファンとの交流ができるのは,本当に楽しいですね。そしてそれに負けず劣らず,ValheimのPS5版も楽しいゲームであることをお約束します。

Kolfjord氏:
 我々は漫画やアニメ,ゲームなどを通じ,日本の文化を楽しませてもらっています。ですので,このゲームを通じて日本人にもスウェーデンの神話や文化を楽しんで欲しいです。
 それから我々は小さなチームですので,ファンレターやフィードバックも常に見ています。応援のメッセージやご意見など,いただければとても嬉しく思います。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

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