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[インタビュー]「Crusader Kings III」の最新DLC「All Under Heaven」は,なぜ極東までカバーしたのか。開発者に聞いた
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印刷2025/10/11 12:00

インタビュー

[インタビュー]「Crusader Kings III」の最新DLC「All Under Heaven」は,なぜ極東までカバーしたのか。開発者に聞いた

 日本でもコアな人気を誇る「Crusader Kings」シリーズ。最新作の「Crusader Kings III」は国際的な評価も高い作品となっている。そんなCK3だが,新DLCが出るたびにマップが東に拡張されていき,最新DLCとなる「All Under Heaven」ではついに日本がマップ上に登場する。
 これはこれで日本のCKファンの一員としては嬉しい話ではあるのだが,疑問も残る。「なぜCK3で日本を?」という,根源的な疑問だ。荒っぽく言って,平安時代の日本にはCrusaderもKingsもいないはずではなかろうか(後者は解釈次第とはいえ)。
 東京ゲームショウ2025の折に,この抜本的な疑問を開発者に聞く機会を得た。なぜこんなとんでもないDLCが開発されたのか,そしてどうやってこんなとんでもないDLCを作り上げることができたのかを,急ぎ足ながらも聞いてみた。

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4Gamer:
 まず最初に自己紹介をお願いします。

Lucia Dzediti氏:
 Crusader Kings IIIのプロデューサーのLucia Dzeditiです。

Riad Deneche氏:
 同じくQAマネジメントのRiad Denecheです。よろしくお願いします。

4Gamer:
 まず最初にうかがいたいのは,「なぜ?」です。Crusader Kingsは,タイトルの通り,CrusaderとKingsのゲームです。これまでの拡張されてきたなかで,イスラム圏や,中央アジアが追加されてきたのは,とても分かりやすい物語です。中国もまた,ちょっと時代は古くなりますが,唐代のネストリウス派や,元におけるフランシスコ会による布教など,キリスト教と一定の関係を有しています。
 しかしながら日本にキリスト教が伝来したのは1549年と考えられていますので,あまりにも時代が違います。またCKが扱う時代に日本人が十字軍に大規模な関与をしたことも,おそらくないはずです。
 なのになぜ,今回のDLC「All Under Heaven」で日本を含めようと思ったのでしょうか?

Dzediti氏:
 理由は様々ですが,最も大きな理由は「この時代の,日本や東南アジアも含めた東洋を遊びたい」という声が大きかったからです。
 たしかにこの段階では,例えば日本とヨーロッパ勢力の関係は極めて限定的なものでした。とはいえこの時代は,ダイナミックな変化が起こった,とても興味深い時代でもあります。なのでアジア全域をカバーしていくことにしました。

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4Gamer:
 CK3時代の日本が面白いというのは間違いないですし,その一方でこの時代を舞台にしたゲームは少ないという点から見ても,CK3が日本を扱ってくれるのはとても嬉しいのですが,端的に言って大変ではありませんでしたか? それに東南アジア諸国まで含めていくとなると,各地で異なる「封建制度」を有していましたし……。

Deneche氏:
 ご指摘の通り,東洋と西洋では「封建制度」が異なりますし,中国と日本とでも異なります。また,血統の残り方も違います。ですので我々はそのために新しいゲームシステムを追加することにしました。ヨーロッパとは違う体験ができて,遊んでいて楽しいDLCになったと思います。

4Gamer:
 歴史を題材にしたゲームを作るとなると,いわゆるヒストリカル・リサーチも大変な重要な意味を持ちます。そしてこれは決して簡単なことではありません。
 今回のDLCを作成するにあたり,リサーチ関係で最も印象に残っているのは何ですか。

Dzediti氏:
 CK3が扱う時代の西洋は,歴史的な文献や資料があまり残っていません。これに比べ,東洋は驚くほどのテキストが残されていますし,そのテキストの保存状態も非常に良好です。これには強く驚かされました。
 幸運なことに,私達のチームには優れた歴史学者が複数います。彼らはどこに行って何を調べれば良いのかを知っていますから,歴史学の教授陣から話を聞くといったことも可能でした。
 一方で,我々がこの調査をもとにゲームを作るにあたっては,「この膨大な情報を,どうやってシステムにまとめ,ゲームに実装するのか」という問題に直面することになりました。すべてをゲームに取り込むことはできませんから。

Deneche氏:
 Dzeditiが言う通りです。実際,我々は歴史をできる限り正確に描くことも重視していますが,それと同じくらい,プレイヤーにその時代の空気を感じられるよう,その時代に没入できるようにすることも重視しています。その時代について書かれた本を読むのとは違う,主体的な体験ができるものを作らねばならないのです。
 これはとても困難なことです。なにせ我々は実際にその時代に生きていたわけではないのですから。

 ですから我々は,直接話を聞くことにしました。日本のプレイヤーと話をしたんです。幸いにも我々はクローズドベータテストを大規模に行うチャンスがあり,そこには日本のファンも参加してもらいました。「867年の日本であなたがCK3を遊べるとしたら,あなたなら何がしたいですか?」といった質問に答えてもらえたのは,とてもありがたかったですね。

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4Gamer:
 その質問は,なかなか答えにくい質問だったと思います。ゲームの領域に限って言えば,日本で人気があるのは基本的に戦国時代ですし,CK3が扱う時代の日本史に詳しいという人は,かなり専門度の高い人ではないかと思います。
 それに正直なところ,平安時代の末期から鎌倉時代,そして室町時代にかけてであれば,なんとなく「こういう遊び方ができるのだろう」というイメージが湧きますが,平安時代となると想像するのが難しいですね。

Dzediti氏:
 平安時代については我々も考えることが多かったですね。詩の時代でもあったし,外に向くというよりは内に向いていた時代でもあります。ですが我々としては,CK3が扱っている時代を無理に変えたくはなかったんです。だから平安時代にも取り組みました。
 もちろん我々は,侍の時代に大いなるファンタジーを抱いているプレイヤーが世界中にいることを知っています。ですがCK3は歴史をテーマとしたゲームです。ですのでゲームが始まった段階では,その時代がそうであったような状況が,ゲームの中になくてはなりません。

 とはいえ,いったんゲームが始まってしまえば,そこで何をするかはプレイヤーの自由です。ですので一例を挙げれば,何年からゲームを開始しようとも,侍になったり将軍になったりすることは可能です。プレイヤーが自分が抱くファンタジーをゲームの中で実現できることもまた,大切なことだと我々は考えています。

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4Gamer:
 Paradox Interactiveのストラテジーゲームはそこの振れ幅がとても大きなゲームであり,それが魅力のひとつだと感じます。
 さて,ヒストリカル・リサーチ以外にも,もうひとつ困難な側面があるように思います。それは翻訳です。現状ではCK3はMODでしか日本語対応がなされていませんが,今回のDLCを期に,なんらかの動きがあり得るのでしょうか?

Dzediti氏:
 もちろん考えています。やはり公式なローカライズがあったほうが,日本のプレイヤーの皆様もより深く我々のゲームを楽しめると思いますので。いまは「All Under Heaven」のリリースを期待してお待ち下さい,と申し上げておきます。

4Gamer:
 いろいろと難しいことが山盛りだと思いますが,期待しています。

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「CK3史上,最大のDLC」を作るということ


4Gamer:
 さて,ここまでは日本の話を聞いてきましたが,「All Under Heaven」には東南アジアも含まれるのですよね?

Deneche氏:
 そのとおりです。今回のDLCは,過去最大のDLCとなります。いわゆる「旧世界」と呼ばれる世界に関する大量の情報が,今回のDLCには詰め込まれています。
 そして実際に遊んで,とても楽しいDLCになっていると感じます。私は開発に携わりながらプレイもしていますが,とても,とても長いプレイ時間になっていますね。

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Dzediti氏:
 東南アジア諸国や朝鮮半島の国々は,中国とも日本とも異なるシステムを有していますが,当然これらも再現しています。「すべてを完全再現」というわけではありませんが,特定の国を特別に選んで再現ということもしていません。大変な仕事になりましたが,ベストを尽くしました。

4Gamer:
 カンボジアやタイでプレイできると思うと胸が踊りますね……。ところで先程,開発チームには優れた歴史学者たちがいるという話をうかがいましたが,このチームはCKシリーズ専門のチームなのでしょうか。それとも会社全体で1つのチームがあって,他のシリーズの調査もしているのでしょうか。

Deneche氏:
 弊社は大きな1つのスタジオですが,同時にサブ・スタジオも有しています。そして各スタジオの間では研究者の行き来があって,例えば他のサブ・スタジオから日本の中世の歴史の専門家を呼ぶ,といったことをしています。

Dzediti氏:
 我々はとても優れた人々と仕事ができることを,幸運に感じています。日本展開におけるパートナーについても,同じことが言えます。「All Under Heaven」について言えば,これは私のキャリアの中で,最も作っていて楽しいDLCとなりました。

 また,新しく学んだことも無数にありました。
 西洋世界では,ハリウッド的なテンプレートが強い力を持ちます。ですがそれは,往々にしてファンタジーでしかないし,非常にアメリカナイズされた視点で作られています。

 しかし実際に日本の歴史を学んでみると新しい驚きに満ちていて,これをなんとかして世界中の人々に知ってほしいと感じるようになりました。アジアのファンだけが遊ぶものではなく,西洋のファンにもこの興味深く,豊かな歴史を感じてほしい。それくらい,面白く,興味深い体験となりました。

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4Gamer:
 個人的な印象ですが,CKシリーズはこれまで,日本では他の作品よりも注目が弱かったように思います。Paradox Interactiveの歴史グランドストラテジーゲームのうち,CKシリーズだけがマップ上に日本が存在しないのですから,これは仕方がない側面もあったかと思います。
 しかし今回のDLCで,ついに日本がCK世界の地図に登場します。つきましては日本の熱心なCKファンのために,メッセージをお願いします。

Dzediti氏:
 「All Under Heaven」を皆様のお目にかけられたことに,とても興奮しています。申し上げた通り,このDLCには我々の全力を投入しています。また同時に,初めて一緒に仕事をする仲間との出会いがとても多い仕事でもありました。そうでなくては,プレイヤーの皆さんが楽しめる,ユニークな体験を作れないからです。

 私自身,仕事でもこのDLCをプレイしていますが,趣味の時間にもプレイしています。そしていちゲーマーとしてゲームを楽しむと同時に,これほどの仕事を成し遂げたチームのことを誇りにも思います。
 皆様のお手元にこのDLCを1日も早くお届けしたい,多くの方々に楽しんでもらいたいと思っております。また遊んで頂けたなら,感想をうかがえればとても嬉しいです。

Deneche氏:
 我々は常に,コミュニティの皆様と話をしたいと思っています。このことは日本のコミュニティの皆様に対しても,同じです。是非,ご意見やご感想をお聞かせください。

4Gamer:
 本日はどうもありがとうございました。

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「Crusader Kings III」公式サイト

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