環境保護団体もゲームショウに。「Microsoft Flight Simulator」をベースに開発したMOD「Flying Guardians」で，Greenpeaceとともに熱帯雨林アマゾンを守る

　ブラジル・サンパウロで開催されているBrasil Game Show 2025（BGS2025）の会場で，思わず足を止めたブースがあった。そこに掲げられていたのは，ゲームメーカーのロゴではなく，Greenpeaceのロゴだ。

　環境保護団体として知られる同組織が，なぜゲームショウに？　と尋ねてみたら，ゲームを通じてより多くの人に環境保護を知ってもらって，力を注げるよう，ゲームMODを開発しているとのこと。今回の展示の中心となっていたのは，「Flying Guardians」という名のフライトシミュレーターのMODだ。
　筆者は不勉強で知らなかったのだが，すでに2024年4月に配信されており，実際のアマゾン熱帯雨林の衛星画像をもとにした地形を飛行できるという。

ゲームを通して“アマゾンの現実”を伝えたい

　「Flying Guardians」は，「Microsoft Flight Simulator」をベースに，Greenpeace Brasilが開発を進めていた。最大の特徴は，Planet Labs PBC^※が提供する衛星データを活用し，現実のアマゾン地域を地図上に再現している点だ。

※米国の衛星データ企業。地球観測衛星を数百機運用し，地表の変化を高頻度で撮影している

　プレイヤーはGreenpeace仕様の航空機を操縦し，アマゾン上空を飛行しながら違法伐採や金採掘の跡を発見できる。衛星画像には，撮影されたときの地表の色や質感，変化が反映されており，たとえば，森林伐採でできた裸地や金採掘によって濁った河川，掘削跡の広がりといったものが，画面上にリアルな形で表示される。
　プレイヤーはアマゾン上空を飛行しながら，こうした変化を緯度・経度付きで観測することができる。MODには座標情報を示すインタフェースが組み込まれており，観測地点を記録したり，SNS上で共有することも可能だ。
　これにより，デジタル世界でのゲームプレイが環境監視や問題提起の行動に変わる仕掛けになり，“ゲームプレイしながら環境保護”につながっていくというわけだ。


　アマゾンには金採掘もあることを実は初めて知ったのだが，それは深刻な環境汚染を招いているようだ。採掘現場では精錬に水銀が使われることが多く，その水銀が河川に流出して魚介類を通じて地域社会に広がり，さらに森林伐採や河川の流路変更による生態系の破壊，そして先住民族の健康被害やマラリア感染の拡大も問題視されている。

　Greenpeace Brasilの調査によれば，2023年だけで約1400ヘクタールの森林が違法採掘によって失われ，ヤノマミ族（先住民族）の土地では過去5年間で2万人以上の採掘労働者（侵入者）が流入したと報告されている。

　一方でアマゾンは，南米9か国にまたがる世界最大の熱帯雨林で，その面積は約550万平方キロメートル，日本全土のおよそ15倍にもなる広大な密林だ。地球上の酸素の約2割を生み出すことから「地球の肺」とも呼ばれ，推定3900億本の樹木と1万6000種以上の植物が生息している。

　同地域はまた，2200種以上の魚類や400種を超える哺乳類を含む驚異的な生物多様性を持ち，先住民族の生活文化の基盤にもなっている。
　しかし近年は，（読者の皆さんもニュースなどで聞いたことがあるかもしれないが）違法伐採や金採掘，農地拡大によって森林の減少が深刻化しており，そうした現状を伝えようというのが，このプロジェクトの狙いだ。

　今回の出展ではゲームそのものの試遊は見られず残念だったが，ゲームを媒介にした自然保護活動という面は大変に興味深い。森の守護者のようなユニフォームを着ているスタッフが熱心に説明してくれ，せっかくブラジルに足を踏み込んだのだから，少しでもこの問題に関心を寄せよう，と思った。
　
　「Flying Guardians」はすでに2024年にリリース済みで，公式サイトから無料でダウンロードして試すことができる。MODなので，まずは「Microsoft Flight Simulator」を入手する必要があるが，ヘリの操縦士として森林破壊をせき止めたいのであれば，ぜひ試してみてほしい。

「Flying Guardians」公式サイト

4Gamer「Brazil Game Show」記事一覧

「BGS 2025」公式サイト（ポルトガル語）