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「ボコスカウォーズ」がボコスカ感満載のカードゲームに。読み合いと運の揺らぎの両方が楽しい「ボコスカード」プレイレポート[BitSummit]
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印刷2025/07/28 16:25

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「ボコスカウォーズ」がボコスカ感満載のカードゲームに。読み合いと運の揺らぎの両方が楽しい「ボコスカード」プレイレポート[BitSummit]

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 「ボコスカウォーズ」で知られるラショウ氏が新作カードゲーム「ボコスカード」を引っ提げて,京都市勧業館みやこめっせで行われたインディーゲームイベント「BitSummit the 13th Summer of Yokai」に現れた。
 「ボコスカウォーズ」の「王」や「重騎士」「壁」「牢屋」といったキャラクターたちがカードになって登場し,これらの相性を考えて相手の性格を読む力を問われつつ,運にも大きく左右されるという,独特のボコスカ感が楽しい作品だ。

「BitSummit the 13th Summer of Yokai」,PYGMY STUDIOブースの様子
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 「ボコスカウォーズ」は,1984年にラショウ氏が手掛け,ファミコンを含むさまざまな機種に移植されたゲームだ。プレイヤーはスレン王の王国軍を率い,宿敵・オゴレス王が待ち構えるバサム帝国へと攻め込んでいく。「騎士」「兵卒」などさまざまなキャラクターたちは,それぞれ敵との相性が決められており,有利な組み合わせで戦うのが勝利への鍵となる。

My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)より「ボコスカウォーズII
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 2023年のBitSummitでは,「ボコスカウォーズ」を原作とするボードゲーム「ボコスカチェス」が出展されていたが,今年はこの製品版と「ボコスカード」が出展されていた。

写真上が「ボコスカード」,写真下が「ボコスカチェス」
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2023年の「BitSummit Let's Go!!」で出展されていた「ボコスカチェス」。この時はコマが木製で,戦闘の結果はアプリで処理していた
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 「ボコスカチェス」同様に「ボコスカード」も2人対戦型で,1人はスレン王,もう1人はオゴレス王を担当する。王をはじめとした軍勢がカードになっており,2人のカードセットは同じ内容である。つまりは五分五分だ。
 カード同士を戦わせ,「ボコスカウォーズ」を再現した相性でこれを解決,先に王が倒された方が負けとなる。このルールについてラショウ氏は「トランプで遊ぶ『戦争』のようなものである」と表現する。戦争ではトランプの数字を比べて勝敗を決めていたが,「ボコスカード」はもう少し複雑で,相手の人となりを読むのが重要だ。

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 さて,カードには「重騎士(Great Knight)」「重兵卒(Great Pawn)」「ビショップ(Bishop)」という特殊兵科が含まれており,こちらは取り除いて「教会」という特殊な山を作る。
 そして,残った「王(King)」「ヒーロー(Hero)」「騎士(Knight)」「兵卒(Pawn)」「木(Tree)」「牢屋(Prison)」「壁(Wall)」といったカードをシャッフルして山にする。山から5枚を取って手札とすれば準備は完了だ。

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 「ボコスカウォーズ」の場合,どの味方を使ってどの敵を狙うかはある程度制御できたが,地形に味方が引っかかるなどハプニング的な面白さがあった。こうした要素は手札にどのカードが来るか分からないところで表現されている。ランダムで選ばれた手札から,相手に勝てるようカードを出して対決させるのだ。

 「ボコスカード」の勝負は,「ボコスカウォーズ」を再現した相性で「勝ち」「負け」「引き分け」の3通りとなり,常勝の最強カードは存在しない。王の場合,騎士,兵卒,木に勝ち,王,ビショップ,牢屋,壁とは引き分けとなり,ヒーロー,重騎士,重兵卒には負ける。敗北の条件は自分の王が負けることなので,手元にすべてのカードがあるなら,王を最後まで残しておくのが最善手となる。

 しかし,「ボコスカード」ではランダムな5枚が手札となるため,いきなり王が手札に来ていた,なんてことも十分あり得る。そして,この条件は相手も同様である。第一手で王を出したら,相手が初期カードでは唯一王に勝てる兵科であり,カードセットの中に1枚しかないヒーローを手札に持っていて,いきなり出してきて勝負が決した,なんてことも起こり得るわけだ。

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 こうしてお互いにカードをぶつけ合い,5枚の手札がなくなれば,山から新たな5枚を補充して対決を続けていく。負けたカードは取り除き,勝ったカードはひとまとめにしておく。カードがすべてなくなった場合,勝ったカードのみを再びシャッフルし,王が倒されるまで戦い続ける。負けると使えるカードが減るため不利になるし,相手から残りカードを推理されやすくなる。ジワジワと手持ち兵力が減っていく様はまるで戦争のようだ。

 本作の面白さは,カード同士の相性がある程度極端なところにある。
 例えば壁は,ほとんどのカードと引き分けることができるため,戦力の温存が大事な本作では強力であるが,兵卒と重兵卒にだけは負けてしまう。何も考えないと,残りカードや性格から読まれてしまい,壁に兵卒をぶつけられることもある。
 とはいえ,カードはシャッフルされるし,手札からどのカードを出すかはプレイヤーの任意である。たとえ相手の残りカードをすべて把握しても,相手の性格や気まぐれ,手札の運によって何が出るかは分からない。考え抜いて勝てることもあれば,運で負けることもある。頭を使いつつもユルい感じが「ボコスカウォーズ」っぽい。

 原作では勝利した兵卒が重兵卒に,騎士が重騎士にパワーアップしていたが,こうしたシステムは本作でも再現されている。兵卒や騎士が勝つと,教会の山から1枚を引くことが可能だ。教会は前述の通り重兵卒,重騎士,ビショップという強力なカードで構成された山で,引くと勝ったカードの山に加えられる(即座に戦力にはできず,次のループで使用可能となる)。
 相手の王を仕留められるのは,初期に1枚だけ存在するヒーローを除けば重兵卒と重騎士のみなので,兵卒や騎士で勝って自軍を育てるのは原作通りに重要になるわけだ。そして,ビショップはすべての相手と引き分けになるうえ,その後の戦いでは「大富豪」の「革命」のように勝敗の相性が逆になる。教会から上手くビショップを引ければ一発逆転も起こり得るが,教会の山もシャッフルして作るため,こちらも運次第だ。

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 会場ではラショウ氏に「ボコスカード」の狙いについて聞くことができた。

4Gamer:
 「ボコスカチェス」発売おめでとうございます。今回「ボコスカード」というトランプっぽいカードの出展ですが,なぜこうした形にしたのでしょう?

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ラショウ氏:
 「ボコスカチェス」にはボードとコマがあるので,携帯性を考えてカードと判定表だけで遊べる「ボコスカード」を作りました。旅先の特急列車に乗って,向かい合わせの席でトランプをやるような感じで楽しめるものを目指したんです。あと,最近はバーでお酒を飲みながらカードゲームをやるのが楽しいので,あんまり考えないで遊べるルールがいいな……ということで現在の形になりました。

4Gamer:
 リラックスしつつ楽しめるカードゲームということですね。

ラショウ氏:
 トランプの戦争って,何も考えずにひたすら遊べるじゃないですか。あんな感じですね。「ボコスカウォーズ」も戦争のゲームだから,そこにある運要素を取り入れればいい。「ボコスカチェス」では出せなかった「ボコスカ」っぽさを,五分五分のカードを使った戦いで再現してみようと思ったんです。

4Gamer:
 勝敗に運の要素が絡みますが,これは意図的なものなんですね。

ラショウ氏:
 そうです。「ボコスカチェス」のルールだと,頭が良い人が圧倒的に強い。例えば大人と子どもであれば,遊ぶ前から勝敗が分かっているような状態です。現在はコミュニケーション手段としてのアナログゲームも見直されており,親子で遊ぶような機会もすごく多いと思います。だから,「ボコスカード」では両者を何とか対等にしたいという思いがありました。

4Gamer:
 なるほど。5枚の手札はランダムですし,そのうえで相手の性格を把握しての読み要素もある。

ラショウ氏:
 ちなみに,手札が5枚なのは少年漫画で対決するシーンのイメージですね(笑)。

4Gamer:
 現在,カードゲームといえば2人が異なるカードプールを持つトレーディングカードゲームが流行しています。五分五分のカードにしたのはなぜでしょう?

ラショウ氏:
 トレーディングカードだと,いっぱいカードを買って強いものを集めるので,お金がある方が強くなるという側面は否定できません。それってどうなの? ゲームが行き詰まっちゃうんじゃないの? と思ったんですね。
 カードを五分五分にすることで,こうした呪縛からは解放されますし,勝つってどういうことだろう,負けるってどういうことだろう……ということさえ考えてしまえるゲームになります。運がいいと自信をもって振る舞えますし,負けた側も運が悪かったとスッキリできる。ゲーム全体の勝敗だけでなく,対決1回1回の勝ち負けもありますから,どこかで勝って楽しい思いができる。
 つまり,「ボコスカード」には後味がいい勝ち方と後味がいい負け方の両方があります。そして,これはゲームというものの本来のあり方であり,理想じゃないかと思うんですよ。

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4Gamer:
 運の良し悪しや場の勢い的なものは確実に存在していますから,それを納得して受け入れることができるのが「ボコスカード」なんですね。

ラショウ氏:
 「ボコスカチェス」を作って思ったのが,人ってそもそもエンターテイナー性を持っていて,ゲームをお互いに面白くしていこうという気持ちがあるということです。「ここでいっちょ仕掛けてやろう」「ドラマチックな展開を作ってやろう」「それなら受けて立ってやろう」という,丁々発止のやり取りができる。

4Gamer:
 確かに,顔を突き合わせて遊ぶボードゲームだと重要な要素ですよね。互いが「盛り上げてやろう!」とエンターテイナーになることで,ゲーム体験が変わってくる。

ラショウ氏:
 そうしたやり取りがあって1プレイを終える頃には,お互いの良い所も悪い所も分かっている。「こんなことに全力を尽くせる俺たちって……」という感じで友情さえ芽生えるような気もします。

4Gamer:
 単に話をするよりも,深く分かり合えた感があるんですよね。

ラショウ氏:
 だから,たとえ負けても「よくぞ自分を破ってくれた」という気持ちになりますし,ポジティブな感想の多いゲームだと思います。知り合いと遊んでいても,いろいろな戦術が移り変わっていくんですよね。こうした無限の仕掛け合いがあるのが楽しいゲームが「ボコスカード」です。実力や知性の差が大きく出ることなく,運の要素も強いから,毎日何時間もプレイし続けるというよりは,時々遊んで毎回楽しめる“常駐もののゲーム”ですね。

4Gamer:
 「ボコスカード」の製品化も期待しています。ありがとうございました。


 ヒーローやビショップ,教会といった「ボコスカウォーズII」のフィーチャーを加えたカードは,お互いに互角であるため,読み合いが重要になり,自然と会話が生まれる。手札は運なので,1回1回の勝敗が殺伐としない。なんとも不思議なプレイフィールを味わえるのが「ボコスカード」だ。兵科ごとの相性こそ複雑に感じられるかもしれないが,判定表1枚で済むし,数値の計算がないので遊びやすい。また,言語に頼るところもないので,年齢性別を問わず遊びやすいゲームであると感じられた。

 ラショウ氏が作詞したシリーズの主題歌「すすめボコスカ」の5番では「ついにまみえた宿敵(てき)よ 愛しい程の我が宿敵 果し合いの時だ つまりは五分五分だ」と,五分の条件で全力を尽くして戦うからこその相互理解と,その美しさについて描かれている。
 ラショウ氏は「ボコスカード」の良さも五分の戦いと,試合を終えての理解にあるというが,こうした点が両作品で共通しているのは,興味深いものがある。「ボコスカード」のさらなる展開を期待したい。

「BitSummit」公式サイト

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