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「勝利の女神:NIKKE」がIPとして成功するまで。“IP管理”に重きを置いた,グッズやイベントの制作事情[NDC25]
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印刷2025/06/27 09:40

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「勝利の女神:NIKKE」がIPとして成功するまで。“IP管理”に重きを置いた,グッズやイベントの制作事情[NDC25]

 韓国のゲーム開発者向けイベント「Nexon Developers Conference 25」(NDC25)で実施された,講演「勝利の女神:NIKKEはいかにして成功したIPになったのか」をレポートしていく。

 本講演では,「勝利の女神:NIKKE」iOS / Android / PC)のディレクターを務めるユ・ヒョンソク氏が登壇し,同作がIPとして成功するまでの試行錯誤を“ゲーム外施策”にフォーカスして語った。

 なお,講演名についてだが,以前に別の講演でインゲームに関するセッションがあったため,こちらは“いかにして成功したIPになったのか(後編)”に相当するものと思ってほしい。

「勝利の女神:NIKKE」ディレクターのユ・ヒョンソク氏
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 本作は韓国のゲームクリエイター,キム・ヒョンテ氏率いるSHIFT UPが開発した“背中で魅せるガンガールRPG”だ。パブリッシングはLevel Infiniteが担当している。その人気は今や語るまでもないだろう。

 今回の講演は,キム・ヒョンテ氏の相棒ユ・ヒョンソク氏が,NIKKEをグローバルに展開していくうえで,どのようにしてIPを拡張してきたかを焦点としている。氏は「普段はゲームのことばかり話していて,専門分野ではないので緊張していますが,私がNIKKEのゲーム外施策をとおして知り得たノウハウをお伝えします」と述べ,講演をスタートさせた。

クイズ「紅蓮が使っている武器の名前は?」
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 最初はグッズの話から。ユ・ヒョンソク氏が業界のうわさ話を聞いている限り,韓国ではグッズやイベントといったゲーム外施策で,黒字の収益を出せているタイトルは数えるほどしかないという。

 また,サブカルチャーゲームの訴求力は高まっているが,グッズやイベントに対する触手はまだまだ。コンビニや電車などの至るところにイラストがあり,年がら年中イベントが行われている日本とは違うという。

 そのため,韓国のゲーム会社,さらにグッズ・イベントの制作会社も,例えば「ゲームの舞台化」「声優朗読会」など,変わり種の施策の知見を養えておらず,SHIFT UPもまた同様だったという。
 ゆえに,社内でノウハウを蓄積してきたそうだ。

会場では上画像のクイズの正解者に,ユ・ヒョンソク氏のサイン入りグッズが贈られた
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 IP拡張の基本技「グッズ」の商品ラインナップには“意図”が必要だという。また,イベント会場やポップアップストアなど,どう販売するのかの考えがないと,業者と実のある相談をするのは難しいらしい。

 まず,昨今のグッズで一番求められやすいのは,アクリル製のスタンドやキーホルダーだという。アクリル系グッズは原価が安く,販売性も高いため,事業面のリスクを抑えやすい。
 なお,単価は「アクリルの枠に対してイラストをどれほど近づけるか」「透明度やサイズはどれくらいか」で上下するようだ。ともかく,グッズ展開の際には必ず備えたほうがいい商品だと断言する。

 しかし弱点もある。アクリル系グッズが安価で人気で売れやすいからと注力してしまうと,ポップアップストアなどでは見栄えに欠け,売り場が寂しく見えてしまう。実際,オンラインストアだろうとアクリルスタンドばかり並んでいたら,その気持ちも分かる自信がある。

 そこで同社は,アイテムを以下の分類で考えた。

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 上の画像では,アクリルスタンドや缶バッジなど,作りやすく売れやすいライト分類がラインナップ全体の50%。マウスパッドやマグカップなど,ミドル分類は40%。そしてフィギュアやアートブックなど,ヘビー分類は10%という内訳になっている。

 つまり,ライト分類で汎用性を生み,ミドル分類で多様性を高め,ヘビー分類を見栄えのするフラッグシップ商品として提示する。なお,出品場所や時期によってはミドル分類でも目玉商品になるという。

 こうしたバランスのいい準備が,ファンの満足度を高め,事業のリスクを減らせる手法だとした。そのうえで,グッズには“ゲームの性格に合う自分たちなりの工夫”をするのがいいとも語る。

NIKKEの場合,アクリルスタンドでゲーム画面を表現。古今東西の広告では顔を見せるのが鉄則だが,本作はこれで説得力があるからスゴい。また,「アクリルスタンドはフィギュア需要の代替にもなる」という意見もおもしろく思えた
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 反響があったグッズとして,TCG(トレーディングカードゲーム)が挙げられた。NIKKEは「ユニオンアリーナ」「ヴァイスシュヴァルツ」「ニベルアリーナ」にタイトル参戦したが,なかでもユニオンアリーナでは,レッドフードのレアカードがフリーマーケットで180万円で取引されたほどの希少性を生み出したのだとか。

 これはNIKKEのみの力ではなく,いくつかのTCGの韓国版が同時期に展開されるなど,TCG業者側のノウハウと市場戦略のおかげだったという。また,ユ・ヒョンソク氏は「とにかく,その領域の知見が深い業者を見つけることが大切です」としつつ,関係各社への感謝を言葉にした。

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売れ筋の缶バッジは,韓国の展示会で販売された「若かりしころのユさんの缶バッジ」。ユ・ヒョンソク氏は何回も制作を断ったが,業者にどうしてもと言われ説得されてしまった。当人は「誰がこんなオッサンのバッジを……」と思っていたが,会場で最初に売りきれたという。「これは私の人気ではなく,誰かがガチャ用のお守りにしたからです」と,ネタ商品ゆえのミームがうまく波及したようだ
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日本の「痛バッグ」は,韓国ではまだ奇異なものとして見られるそうだ。これはグッズ消費文化が醸成した国ならではのアイテムで,ほかの国・地域では(世間の目も考えて)使いづらいのだとか
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 グッズ展開を広げるなかで,ユ・ヒョンソク氏は推しキャラクターのグッズ発売に喜ぶ人を何回も見てきた。そして「ファンの気持ちをとりこぼさないようにしたい」と考えた。つまり,人気キャラクターだけでなく,なるべく多くのキャラクターをグッズ化するという意志だ。

 市場原理として,人気キャラクターは売れやすい。業者も率先してグッズ化を提案してくるようだ。しかし,NIKKEではアクリルスタンドや缶バッジなどのライト分類商品で,キャラクターバリエーションに気を配ってきた。すべては「それを持っている自分自身を誇りに思える,そういう雰囲気づくりに役立ちたいからです」。

 事業性を加味すると,いきなり全キャラクターをグッズ化するのは,まだ困難であるという。それでも,ゲーム内イベントとの連動をきっかけに制作など,多様性のあるグッズ展開を推進してきた。

グッズ化のキャラクター選定基準。人気傾向は出ているが,それ以外もちゃんと配慮
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 グッズの制作段階では,商品の種類と採用キャラクターを決めたあと,どんなリソースを使うかが重要となる。このとき,ゲーム内リソースを積極的に活用することが,コスト的にも推奨されるようだ。

 しかし,これも問題がある。端的に「グッズの種類が違うが,同じイラストが使われているアイテム」は,商品ラインナップを曖昧にする。同じイラストの再利用はユニーク性を下げるのだ。

 ファンの満足度で見れば,やはり描き下ろしイラストは強い。ゆえにゲーム内リソースを積極採用し,種類を増やしつつ,販売場所に応じたテーマで描き下ろしを用意するのがいいとした。また,ゲームの「物語性」をなるべく正しく表現するのも大事だともいう。

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 次に,グッズとはまた事情が異なる「イベント」について触れられた。こちらは国・地域ごとの例で紹介されている。

 まず日本では,ゲームIPのさまざまなイベントが大々的に行われてる。イベントの種類も多く,ノウハウも培われており,やれることは多い。それだけに強力なIPがひしめき合うのは言うまでもないが,「日本でイベントをしたいなら,自分たちで直接なにかするよりも,とにかく理解の深い業者を探して頼むことをおすすめします」と述べた。

 なお,ユ・ヒョンソク氏が直近で思い出深いのは,京都・嵐山駅とのコラボだったという。当日はスタンドパネルの設置や,スタンプラリーイベントが実施されたが,そこでファンが見せた「アニスならこう出てくるはず」といった熱意ある体験が,個人的に勉強になったそうだ。

 また,ゲーム開発者のいまいち行き届かない要望でも,うまいこと形にしてもらえるノウハウ自体が,日本市場の強みらしい。

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 一方,韓国はどうか。ユ・ヒョンソク氏は日本で開催したイベントを韓国でも再現したいと挑んだところ,好評は得たが,反響は思ったよりもなかったそうだ。原因は規模の小ささだったとするが,それ以上に「保守的な韓国では,まだ早いなと思いました」とのこと。

 まず韓国では,日本のようにコンビニや飲食店のそこら中にゲームIPのイラストが飾られていることがない。そのため,露出時はカジュアルなミニキャラなど,一般層にも受け入れやすい選出が求められる。

 さらにオフラインイベントひとつ取っても,インフラが整備されているとは言えない状況とのこと。そのせいで,日本と比べるとイベントの種類も制限されてしまう。グッズ類の訴求力は高いため,商品ラインナップを充実させるのは効果的だとするが,「韓国でも早く,日本のようなイベント施策が受け入れられるようにがんばりたいです」と語っていた。

 このほか,ノウハウを持った日本の業者の参入も,韓国におけるゲーム外施策の活性化につながるのではないかと話した。

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 欧米の場合は,韓国と同じようにオフラインイベントがあまり多くはない。単純に土地が広すぎて,移動コストが高いためだ。
 そのため,欧米圏では距離的問題を無理に克服するよりも,場所を問わないオンラインイベントを模索したほうがいいという。

 欧米ではRedditやDiscordなどのコミュニティを通じて,“ネタを生み出して遊ぶ文化”が盛んだ。そのため狙いとしては,そういうコンテンツを提供し,生産させる機会を生むのが効果的らしい。

 ただし,NIKKEはMLB(メジャーリーグベースボール)に共同パートナーとして参加したことがある。このときはテレビ中継があったため,場所に縛られず適切に露出できたようだ。つまるところ,アニメ・エキスポなども含めて,大型リアルイベントに乗じるのは得策なのだろう。

 なお露出させる素材のテイストについては,ハードなSF系やサウンドを積極的に活用するといいと述べていた。

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 最近,とくに勢いを感じるのは東南アジアだという。参加者たちが撮影したイベントの写真を見ると,画面を突き抜けてくるような熱意を感じるらしい。なかでもコスプレ衣装の表現が比較的大胆なほうらしく,公式としても参考になりそうだとしていた。

 なお,東南アジアは気候が暑く,地域間の移動も簡単ではないため,イベントを進める場合は国ごとに施策を催すのが最善のようだ。

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 実際のイベント内容については,ゲームの進行状況と合わせる,あるいは特殊性を感じるイベントでゲームと切り離す(クリスマスやお正月),さらに「できるなら,物語を感じ取ってもらえるイベントにしたほうがいいと思います」とし,個人的な体験例が紹介された。

 2023年,ユ・ヒョンソク氏は来日中,同年にサービス終了となったモバイルゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ」の展示会イベント「アイドルマスター シンデレラガールズ 〜ありがとうが集まる場所〜」に足を運んだという。

 会場内は展示の導線が一方通行で整備され,歩いて進んでいくだけで,アイドルたちや限定イベントの紹介が時系列に沿って目に入っていく。そして最後の空間には,ひとつだけ置かれた,ガラスの靴。

 ユ・ヒョンソク氏はデレマスPというわけではなかったそうだが,知らない人でもこみ上げてくるものがある物語性の高さに,いたく感動したそうだ。そして,韓国でもこうした物語のあるイベントをやりたいと展望を語り,「その先の物販も見事でした(笑)」と褒めたたえた。

画像はNIKKEのオーケストラコンサート。内容は物語性も意識
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グッズはディスプレイにもこだわりがあるとよし
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 デジタルコンテンツについては,音楽をとても大切にしてきた。いずれもゲーム内の物語性を意識した楽曲で,オーケストラコンサートを開けるほど厚みのあるラインナップをそろえてきた。

 なお,NIKKEはオリジナル楽曲が500曲以上にものぼり,これはそろそろなんらかの記録を狙えるのではないかと思って調べたそうだ。すると,サービス24年選手のMMORPG「RuneScape」が1000曲超に達していることを知り,記録化は断念。「あと5年待ってください……」とのこと。

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コミックスなどのストーリーコンテンツも,ユーザーにアピールしやすいアイテム。ただし,キャラクターや設定が崩れない範囲のコントロールは必要
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 「私はよく,二次創作は必要ですか? と聞かれます」と,二次創作に対する考えにも触れていく。ユ・ヒョンソク氏は「サブカルチャーゲームに二次創作は必須」と言い切る。

「NIKKEはゲームとして有名になりましたが,世の中の誰もが知っているわけではない。例えば,NIKKEの二次創作には“Doro”というキャラクターがいます。世間ではNIKKEを知らなくても,Doroは知っている人さえいます。そういう人たちにどんなゲームかと聞かれたら,『Doroが出てくるゲームだよ』と答えてもいいんじゃないかなと」

 Doroの創作物としてのアレコレは各自で調べてもらいたいが,リーチできない層にもアプローチできる手段になり得るなら,二次創作は広く受け入れたほうがいいというスタンスのようだ。

 一方で,二次創作ガイドラインはリリース前から詳細かつオープンに作成しておき,しっかりと公開しておく重要性も念押ししていた。

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コラボも積極的に活用するべき
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 IPを管理・展開していくためには,思った以上の労力がかかる。NIKKEの場合,当初は開発チームがそのまま担当していたが,労働コストも1.5倍に増えるほどだった。
 またIPを無作為に拡張すると,キャタクターや世界観の魅力がいずれ崩壊し,ユーザーをがっかりさせてしまう結果もありうる。

 そこでSHIFT UPは「IP運用管理チーム」を設立した。これは外部・内部と開発を仲介する,いわば潤滑油的な存在のようだ。そうしたチームが求められるほどに,IP管理は簡単なことではないのだろう。

 ついでに「IP運用管理チームは人員募集中です!」と宣言した。

IP管理ができていないとこうなるの表現(ユ・ヒョンソク氏のデスク)
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 ユ・ヒョンソク氏いわく,運営型ゲームが長続きするかどうかは,企画にかかっている。中国や欧米はアートやシステム構造も含め,ゲームの全体的な設計を企画として扱う(ことがある)。対して,韓国のゲーム業界は専門的に細分化されすぎているせいか,企画は企画,アートはアート,プログラムはプログラムと,企画の幅も狭まりがちだという。

 韓国ではおもに“運営のなかに事業がある”という。そのため「運営が先か,事業が先か」という難題に直面してしまう。ユーザーが求めるものと,会社に求められるものとでせめぎ合いが発生するわけだ。

 その点,SHIFT UPはプレイヤーのゲーム利用料金を「Pay to Love」と見なし,みなが愛情を持っているから,お金を使ってくれていると考えている。こうしたPay to Love(に値する有料販売など)の感覚を養っていくことこそが,無料で遊べるゲームでは大切だとする。

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 サブカルチャーゲームはPvEゲームが主流だが,PvEというのは慢性的にコンテンツ不足になりがちでもある。結果,開発速度が追いつかず,ファンの満足度を高められなくなってしまう。
 これまでの韓国ゲームでは,この課題の解消のために,PvP要素を足すのが定番だった。けれど,PvEゲームのままで足りないコンテンツを補ってくれるものこそ,グッズやイベントなどのIP運営だという。

 ゲーム外施策を楽しんだユーザーは,満足な体験を踏まえて,そのゲームをより多角的に楽しめるようになる。また,ゲーム外施策はプレイを中断している人にもニュースとして響きやすいため,ときには休眠ユーザーを起こすことにもつながる。これこそが,PvEゲームにおいて必要なことで,フリーユーザー中心のIPにおける戦略だとする。

 IP運営は,現代サブカルチャーゲームの効果的な運用法なのだ。

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 ユ・ヒョンソク氏は最後に「私たちは今,ゲームを楽しさの主軸をしつつ,ゲーム以外の活動でもユーザーの方々の思い出を育んでいこうとしています。いつも完璧なチームではないと思いますが,今日の講演も楽しんでくださっていればうれしいです。また,SHIFT UPは今後さまざまなゲームを送り出していくつもりです。『Stellar Blade』コラボもよろしくお願いします!」と述べて,講演を終えた。

 実のところ,講演はとても丁寧で聞きやすかった反面,時間が足りず,グッズの話以降は爆速の押し進行になってしまった。4Gamerは講演終了後,補足も含むユ・ヒョンソク氏のインタビューに参加している。さらなる深掘りは後日掲載予定の記事を楽しみにしてほしい。

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