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TVアニメ「アークナイツ」第1期からの軌跡をたどったフィルムコンサート「【暁光追奏/FILM ON ORCHESTRA】」夜公演をレポート
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指揮者の吉田行地さんによる指揮のもと,アニメをはじめコンテンツに特化した演奏集団のHeartbeat Symphonyがクラシカルなパートを担当。ギター,ベース,キーボード,ドラムのバンド編成も楽曲に応じて加わり,作曲家の林ゆうきさんが制作した第1期から第3期までのテレビアニメ劇伴曲が演奏された,「【暁光追奏/FILM ON ORCHESTRA】」夜公演の模様をお届けしよう。
第1期の緊迫感溢れる楽曲群で幕を開けたフィルムコンサート
本公演の舞台となったLINE CUBE SHIBUYAは,渋谷公会堂として古くから知られているコンサートホールだ。入場するとグッズ販売コーナーが目に入り,2階のホワイエには「【暁光追奏/FILM ON ORCHESTRA】」のキービジュアルスタンドが展示されていた。
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公演では,テレビアニメ「アークナイツ」のストーリーに沿って,第1期「【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】」,第2期「【冬隠帰路/PERISH IN FROST】」,第3期「【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】」の劇伴曲が展開された。
また,ステージ上部のスクリーンに楽曲の映像に応じたアニメ映像が投影され,劇伴曲の臨場感を高めていた。
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公演の開幕を彩ったのは,悪魔の囁きを想起させるコーラスと行進曲のような楽器音が特徴的な「天災」だ。来場者を瞬く間に「アークナイツ」の重厚な世界へと引き込んでいく。
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そこから続けて,キャラクターテーマの「アーミヤ」「ドクター」の演奏へ。それぞれが持つ意思を感じさせるヴァイオリンが鳴り響くなか,決して明るくなりすぎないシビアなメロディラインが,より一層,会場の緊迫感を高めていた。
4曲目の「勝利への架け橋」は,一転して現代的な電子音が高速で走る戦闘曲に。開幕から3曲連続で続いた重めのテンポが一気に花開き,ハイテンポのカタルシスにつながっていた。
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次に,アニメのシナリオ全体を通して描かれたキャラクター“タルラ”のテーマ「タルラ」が挿入される。
ロドスの面々を圧倒する強大な炎を扱い,レユニオン・ムーブメントの首魁たるタルラのテーマが序盤に演奏されたことで,第3期の【焔燼曙明/RISE FROM EMBER】というタイトルイメージに向かって,コンサート全体が進むことを印象付けていた。
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一方,6曲目のキャラクターテーマ「ミーシャ」では,ミーシャの優しさ,その優しさに相反した悲壮な運命を,オーケストラの演奏が見事に表現しきっていた。
ここで,重い雰囲気を小休止させるかのように,ストリートテイストの中にジャジーな演奏を混ぜ込んだ楽曲「ペンギン急便」が差し込まれた。オーケストラの前方に位置したバンドメンバーが,ノリの良い音を響かせる。
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そして,繰り返されるギターリフが特徴的な戦闘曲の「孤軍奮闘」に移り,再びスリリングな空気感へ。ステージ上のスクリーン映像もアニメ内の戦闘シーンに入り,フィルムコンサートとしての完成度を大きく引き上げていた。
直後,「ドクター Pf Ver.」の落ち着いたピアノ音が響きわたる。本公演では,基本的に3,4曲でロウテンポからハイテンポに移り,そこから柔らかな楽曲に移る展開が多用されていた。
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さらに,「微かな光」のただ穏やかなだけではない,ほのかだが確実に希望を感じさせるピアノ演奏が続く。そこから第1期「黎明前奏/PRELUDE TO DAWN」の楽曲群を総括するようにして,11曲目に「黎明前奏」が演奏された。
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スクリーン上には,ドクターやアーミヤをはじめとしたロドスの面々が映る。悲壮感溢れる「アークナイツ」の世界のなかで,いまだ希望を追い続ける彼らの前途が感じられ,まさに来場者に希望を抱かせるセットリストと演奏が繰り広げられていた。
第2期の冷たさを表現しつつ,龍門を中心にした楽曲が展開
第1期のパートを終え,順繰りに第2期「【冬隠帰路/PERISH IN FROST】」の楽曲群が演奏される。
まずは,氷のなかの息遣いを思い起こさせるコーラスとストリング音が独特な,「浸透」が披露された。序盤の「天災」と似た雰囲気での立ち上がりだが,その後の展開は大きく変化する。
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第2期のタイトルにもある「冬隠帰路」が早々に披露され,レユニオン・ムーブメントのフロストノヴァの映像とともに,冷たさを象徴するようなメロディが流れていく。そこから,静かなピアノ曲「追憶」の演奏に入り,スノーデビル小隊を感じさせる曲は,一旦区切りを迎える。
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また,昼公演のセットリストに含まれていた「レユニオン・ムーブメント」の演奏が夜公演にはなかったので,中盤の盛り上がりどころがフロストノヴァやレユニオン・ムーブメント関連の楽曲ではなく,龍門関連の楽曲に集中していた。
楽団が「ウェイ」「龍門近衛局」「チェン」を次々と演奏することで,龍門内におけるウェイとチェンの対立にフォーカスする。
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キャラクターテーマ「チェン」の演奏時には,スクリーン上に,ウェイとチェンの戦闘シーンが流れる。ダイナミックな曲調も相まって,中盤でもっとも臨場感溢れる空気で,会場内が包まれていた。
次は打って変わって,ロドス内のキャラクターテーマである「ケルシー」が演奏された。スクリーンでは,ケルシーとクラウンスレイヤーの戦闘シーンが展開される。
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クラウンスレイヤーに対して,終始優勢だったケルシーの映像と強靭な曲調によって,コンサート中盤で唯一,ロドスの存在感を感じられた場面だ。
そして19曲目にして,中盤のラスト曲となったのは「冬逝」である。第2期の冷たい余韻を残し,第3期の楽曲群へと移行することとなった。
アーミヤ,チェン,タルラを中心とした構成でフィナーレへ
第3期「焔燼曙明/RISE FROM EMBER」パートの立ち上がりに用いられたのは,穏やかな日常を感じさせる「日常」と「平静」だ。これまでの演奏とは比べ物にならないほどの穏やかさが,会場内を温かく包む。
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しかし,次の楽曲からは終幕に向けて,ゆっくりとギアが上がっていく。「決意」の少しずつ加速していく曲調から,キャラクターテーマ「パトリオット」のミリタリーテイストなバンド演奏につながる。
ステージ上のスクリーンには,ロドスの面々とパトリオットが繰り広げた激戦が映る。本公演では総じて,アニメシナリオでタルラ戦に至るまでのレユニオン・ムーブメントとの戦いを振り返れた。
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続いての楽曲「静寂」では,パトリオットの死と,彼が背負ってきた過去への感傷を想起させるピアノの音色が会場の涙を誘う。
そして,いよいよタルラとの戦いに焦点が当たり,猛禽類のさえずりをイメージしたようなコーラスが入った「覚醒」の演奏によって,コンサートが佳境に入る。
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テンポの良いドラムやギターの音色で臨場感を表現した,楽曲「焔燼曙明」とともに,アーミヤの覚醒シーンがスクリーンに映されていく。覚醒後に刀剣を手にしたアーミヤは,チェンと共闘してタルラに挑む。
アーミヤ,チェン,タルラの激戦を彩った「焔燼曙明」では,アニメ第3期ラストの白熱した戦いのみならず,オーケストラが奏でる勇壮なメロディと,バンドによるロックテイストの音色が融合し,フィルムコンサートならではの編成を十二分に味わい尽くせた。
27曲目の「Truth」では,ゲストで糸奇はなさんが登壇。糸奇さんは,豊かな高音の歌声を会場に響かせ,静けさと伸びやかさを両立した圧巻の表現技法を披露し,コンサートの幕を引いた。
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しかし観客の拍手は鳴り止まず,壇上にゲストのReoNaさんが姿を見せてアンコールに応えた。ReoNaさんは,つぶやいて語りかけるような歌唱による楽曲「生命換装」をしっとりと歌い上げていく。
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アンコールの最後には,荘厳なオーケストラのメロディにロドスのひたむきさが混じった「リーダー」が演奏された。演奏後には観客の拍手を受けながら,林さん,糸奇さん,ReoNaさんをはじめとした面々の紹介と挨拶が行われ,公演全体が締め括られた。
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アニメ第1期から第3期まで,実質的にロドスとレユニオン・ムーブメントによる戦いのすべて,そしてタルラとの決着を追体験できた本公演。今後のアニメシリーズに応じて,再びフィルムコンサートが開催されることに期待しつつ,今後も「アークナイツ」に注目していきたい。
【暁光追奏/FILM ON ORCHESTRA】公演概要
●曲目
天災
アーミヤ
ドクター
勝利への架け橋(夜公演のみ)
タルラ
ミーシャ(夜公演のみ)
ペンギン急便
孤軍奮闘
ドクターPf Ver.
スカルシュレッダー(昼公演のみ)
微かな光
黎明前奏
浸透
冬隠帰路
レユニオン・ムーブメント(昼公演のみ)
追憶(夜公演のみ)
ウェイ(夜公演のみ)
龍門(昼公演のみ)
龍門近衛局
チェン
ケルシー
冬逝
日常
平静
決意
パトリオット
静寂
覚醒
焔燼曙明
Truth
・アンコール
絆 Pf Ver.
生命換装
リーダー
●会場
LINE CUBE SHIBUYA
●日程
2025年10月4日
●出演(敬称略)
吉田行地(指揮)
Heartbeat Symphony(演奏)
林ゆうき(作曲家)
ReoNa(ゲスト)
糸奇はな(ゲスト)
●主催
株式会社Yostar
Euphoric Production.,Co Ltd
株式会社文化放送
●制作
株式会社GLEAN
株式会社ハートカンパニー
「アークナイツ」公式サイト
「アークナイツ」ダウンロードページ
「アークナイツ」ダウンロードページ
(C)2017 Hypergryph Co., Ltd.(C)2018 Yostar, Inc. All Rights Reserved.
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