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それはドン底からの復活劇。「共闘ことばRPG コトダマン」が最大のピンチから売上昨対比170%を記録するまで[CEDEC 2025]
そんななか,7周年を迎えた「共闘ことばRPG コトダマン」(iOS / Android。以下,「コトダマン」)は,運営6年目に新主人公を実装し,売上昨対比170%という驚異的なセールスを達成した。メインシナリオにおいても,ユーザーアンケートで過去最高の評価を記録している。
だが,その道のりが順風満帆であったかと問われれば,そうではない。
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ユーザー満足度が「これだけ下がったことは一度もなかった」と言わしめるほどに低下し,ついにはワースト記録を更新する深刻な事態に見舞われていた。「コトダマン」の運営チームは,このどん底からいかにしてV字回復を遂げたのか。
「CEDEC 2025」にて行われたMIXIの吉岡 翔氏のセッション「7周年を迎える『共闘ことばRPGコトダマン』のストーリー/世界観の生存戦略」では,7年間の歩みと,失敗から得た学びが語られた。その内容を振り返ってみよう。
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運営5年目に訪れたピンチ
ケーススタディへと移る前準備として,まず「コトダマン」のこれまでの歩みが紹介された。
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運営1〜2年目までは「キボウ・ツラミ編」を,3年目からは「ユーキ編」がメインストーリーとして展開された。コラボ流入によるユーザー増加,過去最高難度のラスボスの登場もあいまり,運営4年目にて第一の絶頂期を迎えた。
このころ,既存のコア層とコラボでの流入層によって,ユーザー分布はかなり極端な形になっていたそうだ。
節目となる5年目に突入するにあたり,よりユーザーの趣味嗜好に合わせた展開をすべく,コトダマンチームは改革へと乗り出した。それまでの登場キャラクターをオミットした新世界「言王界」を舞台に,月替わりで主人公が交代する群像劇にシフト。3か月サイクルで主人公たちが共闘し,強大な敵と戦うストーリーラインを採用したのだ。
加えて,コラボで流入した層を意識し,キャラクターを2頭身から3頭身へと変更し,子供っぽさを感じさせないデザインを目指すことになった。
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そうして迎えた運営5年目,大幅な刷新もむなしく,ユーザー満足度は過去最低を記録し,ユーザーからは「頭身変更はやめてほしい」「群像劇は愛着が湧かない」「キャラが使い捨てにされている」といったネガティブな反応が向けられるようになった。
6年目のましろ誕生によるV字回復まで
5年目の新章開始から約3か月が経過したころ,コトダマンチームは重大な決断を迫られていた。
キャラクターの指示書作成からリリースまでには通常7か月,どんなに急いでも6か月は必要となる。翌年4月の周年に向けて何らかの対策を実装するには,8月の時点で方向性を確定させなければならない。追加の調査を待つ時間的余裕はなく,吉岡氏らは「集められるだけの確証でリスクを踏んで判断をしよう」という決断を下した。
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まず着手したのは,問題の本質を見極めるためのデータ分析だった。
新章開始時に実施したアンケートには数千件の回答が寄せられており,その約1割に頭身変更に関する言及があると判明した。2023年の当時は,AIによる自動集計はまだ一般的ではなかったため,チームメンバーは膨大な記述を一つひとつ手作業で確認し,ポジティブとネガティブの評価を分類する地道な作業を行ったそうだ。
集計の結果は,チームの予想を超えて深刻なものだった。無課金層から高課金層まで,LTV(顧客生涯価値)の高低に関わらず,すべての層でネガティブな評価が上回っていた。男女ともに同様の傾向を示し,プレイ歴で分析しても新規ユーザーと既存ユーザーの区別なく,押しなべて否定的な反応が見られた。
この分析の結果,頭身変更がユーザー体験を損なっており,小手先の修正では解決できない根本的な問題であることが見えてきたのだ。
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つぎに直面したのは,どの頭身に戻すべきかという課題だった。「コトダマン」のイラストは1年目から4年目にかけても少しずつ進化を続けており,元に戻すといっても,どの時点のスタイルを基準とすべきかは自明ではなかった。統計的な手法に頼ることもできたが,ここは長年タイトルに関わってきたデザイナーとプランナーの経験と感性を信じることにしたのである。
まず,イラストに求められる要件を定義した。1つ目は,インゲームの性能を体現できていること。2つ目は,キャラクターの性格や設定,属性が一目で理解できること。3つ目は,ユーザーが好きであると感じられること。4つ目は,肢体の表現が美しくできることだ。
その後,各要件を満たすと考えられるベンチマークキャラクターを社内アンケートを使って選出。その結果,4年目の最後期,タイトルが最も好調だった時期のイラストスタイルを採用することになり,変更直前の状態に戻すという結論に至った。
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しかし,イラストの方向性を修正するだけでは,問題の完全な解決には至らない。5年目に登場した3人の主人公を,そのまま2頭身に戻すことは新たな違和感を生む可能性があった。
さらに,4年目までの世界観と5年目の世界観が完全に分断されており,多くの既存ユーザーが愛着を持つ,過去のキャラクターたちと新しい世界の接点が失われていた。これらの複雑に絡み合った問題を解決するために生み出されたのが,新主人公“ましろ”である。
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ましろは,3つの役割(主人公,狂言回し,マスコットキャラクター)を同時に果たすよう設計された。「言葉の意味は辞書的に知っているが,使い方を知らない」という設定を持たせ,12か月のストーリーを通じて言葉の真の意味を学び,成長していく姿を描いていく。
さらに,言王界の創造主とラスボスの作ったアンドロイドの設定も持たせ,分断された世界観を接続する役割を担わせた。この多層的な設定により,それまで分断されていた世界観を自然に接続することが可能となった。過去に登場したキャラクターたちとも,「じつはましろを通じてつながっていた」という,後付けの設定を追加できる構造が生まれたのである。
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ましろへの愛着形成を促進するため,1年間の物語が完結するまではガチャには投入せず,全プレイヤーが入手可能な配布キャラクターとして実装。専用育成クエストやSNSでの日常的な露出により,接触頻度を高めた。
ストーリーにおいても,ましろを中心とした物語構成に変更し,3か月ごとに異なる国を巡る形式とすることで,毎月登場する構造を確保したそうだ。
結果,ユーザー満足度は6年目終盤に過去最高を更新。6周年のガチャ施策では売上昨対比170%着地,ARPU 177%の驚異的な成果を達成し,V字回復を遂げるに至ったのだ。
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得られた3つの教訓
吉岡氏は,セッションのまとめとして7年間の長期運営で得た3つの教訓を提示した。
1つ目は「ストーリーには柔軟性が必要」ということ。運営型タイトルにおいては,運営方針やガチャ設計の変更といった,外的要因によって予定が変わることは日常茶飯事である。どれほど完璧なストーリープランを立てていても,翌月のガチャ設計が変わってしまえば予定していたキャラクターと出会うことはなくなってしまう。
そういった日々変わり続ける状況に適応していくには,いかなる状況にも対応できるストーリーの柔軟性が必要になってくる。ストーリーの基本的な設定に余白がなければ,日々変わり続けられるだけの余裕は生まれないと吉岡氏は話した。
つぎに挙げられたのは「もったいなくても捨てる。ないものは作る」だ。ダメだと分かっているものをリリースすれば,ほぼ間違いなくダメな結果が返ってくる。ならばギリギリまで粘って変える必要があり,どんなタイミングであっても果敢にトライする精神が大切だという。
最後は「ユーザーを心の中に」。仮想のユーザーを設定し,施策を楽しんでもらえるかを対話すること。そのためには日ごろからエゴサーチを行い,ときには人力でユーザー反応調査を行う。ユーザーの生の声をテキストで読んでいるだけでも,「うちのタイトルのユーザーさんってこういうことを考えているんだ」というのが見えてくるそうだ。
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ストーリーを作る側のパッションは伝わりづらい実情に触れ,チームのなかで信用されるのは,ガチャの設計や,イベントの仕様,ユーザーの肌感を理解できている人間であると話す。キャラクターにどんなスキルを持たせ,どういった効果があり,それがユーザーにどのように刺さるか,根拠となる事例の数値と合わせながら話せる。
吉岡氏は,変わり続けることを求められる時代においては,そうした多角的な視点で提案できるストーリープランナーの存在が大切であるとコメントし,セッションを締めくくった。
4Gamer「CEDEC 2025」記事一覧
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