
企画記事
映画の興行を左右するのはゲーマーか!? 観ていて損なしの「マイクラ」「リロ&スティッチ」「きさらぎ駅 Re:」を紹介
昨今,日本ではアニメ映画や邦画が続々とスマッシュヒットを飛ばす一方,「年間興行成績のシェアがなんだかイマイチ……」となりがちなのが洋画です。世界的には公開直後のランキングが堂々の1位なのに,なぜか日本では2位とか3位とかに落ち着くこともしばしば。
配給会社の宣伝担当者が「あの国だけおかしいだろ!」と怒られたり呆れられたりしている気がしてならない,今日このごろです。
そんななか,2025年4月25日に封切りした劇場映画「マインクラフト/ザ・ムービー」が,6月2日時点で国内興行収入が36億円,動員数が276万人を超えたと話題になりました。全世界興行収入も9.47億ドル(約1354億円)を突破したことで,日本でも大ヒットした「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の全米オープニング記録を超え,ゲーム原作映画としては史上最大の記録になったそうです。
ということは,つまり,近年はゲーマーこそが映画の興行成績を大きく左右する存在といっても過言ではない(※所説あります)!
そんなわけでゲーム業界に一陣の映画風(えいがかぜ)を吹かすべく,いつだって時間のない皆さまに「マインクラフト/ザ・ムービー」をはじめ,ゲーマーなら見ておいて損なしの“現在公開中の映画”を厳選してご紹介。忙しくなる前に,ササッと話題作を押さえておきましょう!
※各作品,ほーーーんのわずかなネタバレあり
「マインクラフト/ザ・ムービー」
![]() |
もはやゲーマーには説明不要といってもいい,ピクセルアートの世界で遊ぶサンドボックス型ゲーム「マインクラフト」。その自由度の高さが創造性を刺激し,大人以上に子どもからの支持を得ています。家族との世間話や身の回りの話題で,「マイクラが子どもに大人気なのー」といった話を耳に入れたゲーマーも少なくないでしょう。
そんなマイクラを題材にしてしまった映画が,この「マインクラフト/ザ・ムービー」。私は公開直後の週末,郊外のショッピングモールに併設された映画館で鑑賞しました。場所が場所だけに子どもが多いだろうと予想していましたが,事実,スクリーンに集まっていたのは幼稚園児や小学校低学年と思われる子ども(+保護者)ばかり。
あたり一面が子ども子ども子ども。子ども人気は存じていたものの,「こ,これほどの勢いだったとは……」と今さらながらに驚きました。
映画本編はというと,アメリカで暮らす人々が“マイクラワールド”に迷い込む……という,よくある異世界トリップものです。
主役は学校になじめない少年から,さえないおじさんまで,ちょっと複雑な環境下にいる4人の男女。さらにマイクラでプレイヤーの代名詞的存在である「スティーブ」も加わり,のどかに見えるけど危険も多い世界を冒険することに。厳しい現実に直面している彼らも,マイクラのルールのなかでは,思いもよらない活躍を見せます。
「それでも、僕らにはゲームがある。」とは,過去の東京ゲームショウ2021のキャッチフレーズですが,現実がどうであれ,大好きなゲームのなかではどこまでも自由でいられる――そんな優しい気持ちにさせてくれる映画でした(まあ,ちょっとアメリカンなノリもあるけれど)。
ちなみに,本作はマイクラのあらゆる要素をしっかりと活用し,小ネタとして随所に盛り込んでいます。なので原作ゲームを把握しているに越したことはありません。とはいえ,なにかを生み出すクラフト系のゲームシステムに触れたことがあれば,なんとなく理解できると思います。マイクラをいっさい知らないゲーマーはそう多くないでしょうが,導入部分も丁寧なので,詳細が分からなくても十分楽しめますよ。
「マインクラフト/ザ・ムービー」公式サイト
「リロ&スティッチ」
![]() |
ディズニーを題材にしたゲームは多数存在しますが,シリーズ23周年を迎えた「KINGDOM HEARTS」もそのひとつ。ファンのなかには,5月にスマホ向けRPG「KINGDOM HEARTS Missing-Link」の開発中止が発表されたことで,悲嘆に暮れている人もいるかもしれません。
とはいえ我々は立ち止まっていられない。現在,鋭意制作中だという「KINGDOM HEARTS IV」をプレイするその日まで,くじけるわけにはいきません。そんな今こそ,ディズニー作品に触れて気持ちを高める絶好の機会……ということで,実写映画「リロ&スティッチ」の出番です!
スティッチといえば,「KINGDOM HEARTS II」や「KINGDOM HEARTS Birth by Sleep」などに登場し,テラ,アクア,ヴェントゥスたちとの“絆”にまつわるエピソードが描かれました。でも私,実は「KINGDOM HEARTS」シリーズこそほとんどのタイトルを遊んでいますが,ディズニー作品にはあまり詳しくない身なのです。
ですのでプレイ当時は,スティッチに対して「なんで6本足(?)と4本足の姿があるんだろ?」とか「孤独だったらしいけど,ちょっとイタズラがすぎない?」とか思っていました。
しかし,彼が生まれた経緯や受けてきた扱いを知った今となっては,「大暴れしてもいい! お前はなにも悪くない,もっと自由に生きるんだ!!」と思いっきり手のひら返ししています。KINGDOM HEARTSに起用された場面も納得で,もっと早く観ておけばよかった……!
![]() |
さて,実写映画「リロ&スティッチ」の話ですが,私は劇場公開に合わせたテレビ放送で,かつてのアニメーション版も視聴しました。そのうえでの感想は,実写版は変更されている部分も少なくないものの,思っていた以上に“アニメ版の内容に忠実”だったというもの。
個人的には,アニメ版ではとくに気にならない急な転換を,実写版では現実的かつ自然なつながりになるようシーンを足している,といった印象を受けました。エイリアンたちの科学技術を思えば,人間に化けて近づこうとする演出もうなずけますし,文化の違いでアレコレ失敗するのも,よりキャラクター性がにじみ出ていてよかったですね。
なにより,コアラような毛並みでモフモフしているスティッチのアクションが本当に愛らしい! 実際の撮影でも精巧に作ったパペットを用いたそうで,楽しそうに遊ぶリロとスティッチの動きはまったく違和感がありませんでした。イタズラが成功して楽しそうに笑ったり,悲しくてシュンとしたりする姿に,誰もがメロメロになること間違いなしです。
「リロ&スティッチ」公式サイト
「きさらぎ駅 Re:」
![]() |
約20年前,インターネット掲示板「2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)」の投稿で認識され,直近で話題を博したオカルトミステリーアドベンチャーゲーム「都市伝説解体センター」でもモチーフの1つとして扱われるなど,まことしやかにささやかれてきた都市伝説。それが“きさらぎ駅”であり,6月13日公開の映画「きさらぎ駅 Re:」の主題です。
初出となる2ちゃんねるの投稿では,投稿者が現実には存在しない駅,きさらぎ駅に迷い込み,その身に起きた不思議な体験をリアルタイムで実況しました。ですが,ほどなくすると投稿が途絶える。謎に満ちた唐突な終わり方が数々の憶測を飛び交わせて,その概念をこの世に定着させました。今でもこうして,さまざまな作品で取り上げられるほどに。
そんなきさらぎ駅を題材として,2022年に公開された映画が「きさらぎ駅」で,本作は“前作の3年後を舞台とした続編”となります。前作はホラーゲームやVRゲームのような1人称視点を採用し(映画業界ではPOVと呼ばれる撮影手法),異世界からの脱出を,「これじゃまるでRTAだ!」といった切り口で描いたことが話題となりました。
![]() |
続編の主人公は,前作できさらぎ駅から生還した女性。彼女が異世界から帰還すると,現実世界は自分以外,20年もの時が経過していた。外見が20年前のままの女に,世間は冷たい視線と疑念を送る。彼女は再び異世界へ踏み入れることを決意し,絶望からの脱出劇に身を投じる――。
ゲーマー目線の注目ポイントは「前作主人公と,今作主人公の邂逅」でしょう。ゲームではおおむね,主人公が2人もそろえば怖いものなし! それは本作も同様で,「そりゃ,RTAできるくらい知り尽くした2人がいれば……」という,期待通りの痛快な展開が見ものです。
内容も前作をなぞるだけではなく,まるで「アベンジャーズ」か「エクスペンダブルズ」か,はたまた「アルマゲドン」のような壮大(?)なシーンが見どころです。これはネタバレではありません。「キミ,ハリウッドで生まれた?」と思わせてくる予告映像を見れば分かります。
また,前作のその後ももったいぶらず,早め早めに懇切丁寧に開示し,「気になることは全部分かったね! じゃあ本番いくぞ!」とばかりのテンポで進めていくのも本作らしいなと感じました。観客を置き去りにする,ユーモアたっぷりの怒涛の展開がお見事です!
約20年の間に,我々の生きる環境は大きく変化しました。電車は時刻表など見ずにポチッと検索,PASMO(関東圏のICカード乗車券)があれば券売機なんていらず,ネットの闇は隙間ごと埋め尽くされ,話題の中心も匿名ではなく個人認証を求めるSNSが生んでいく。それでも,きさらぎ駅にまつわる真偽不明の情報がたびたび飛び交う。かつて生まれた都市伝説たちは,今も常に人々の好奇心を刺激している。
そんな今だからこそ,きさらぎ駅が目の前に現れたらどうなるのか――ひとつの意欲的な挑戦をぜひ,劇場で楽しんでほしいなと思います。
「きさらぎ駅 Re:」公式サイト
夏の目玉はこれだぁ!
![]() |
最後にこれから公開される期待作として,8月29日に封切りされる映画「8番出口」を挙げないわけにはいきません。
本映画は,同名の原作ゲーム「8番出口」の実写版です。同作は“ループする世界で異変を見つけて脱出するホラーゲーム”というジャンルを確立させ,今なお“8番ライク”を生み出し続けています。
映画の主演は,ゲーマーには人気アイドルや俳優というよりも,「パズル&ドラゴンズ」の熱心なプレイヤーとしてなじみ深いであろう,二宮和也さん。予告映像では,あの「おじさん」をはじめ,ゲーム内に登場したギミックをゲームらしく解いていく様子もうかがえます。
一方で,映像内にはゲームに登場していないロッカーや,謎の人物の姿が映されていたりも。本作はフランスのカンヌ国際映画祭「ミッドナイト・スクリーニング」部門で,観客総立ちのスタンディングオベーションで大歓声を受けたと報道されていますが,そうなった理由とは?
初夏を越え,夏を肌で感じるようになってきたこの季節。ゲーム業界も大活性の時期ですが,映画も負けず劣らずの熱さが続くようです。
最近「映画」,観にいきたくないですか?
「8番出口」公式サイト
- 関連タイトル:
実写映画/ドラマ/特撮
- この記事のURL: