連載
接客しながらゾンビを撃退するワンオペ夜勤ゲーム「Service with a Shotgun」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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客のどうでもいい世間話に耳を傾けながら,片手には冷たい散弾銃を握りしめる。
今宵もまた,逃げ場のない孤独な夜勤シフトが幕を開ける。
本日は,Nolyn Vansyckleが手掛ける「Service with a Shotgun」を紹介しよう。本作はゾンビが徘徊する終末世界を舞台にしたアクションシューティングだ。プレイヤーは雑貨店「アンデッド・デポ」の店員ジョーンズとなり,五日間の過酷な勤務シフトを生き延びていく。
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本作の特徴は,全く異なる二つの作業を同時にこなさなければならない点にある。カウンターには個性豊かな客が訪れ,身の上話やトラブルを語りかけてくる。彼らの言葉を読み,適切な返答を選ばなければならない。だが,会話中も時間は止まらない。視界の隅では,飢えたゾンビたちが窓を突き破ろうと押し寄せてくるのだ。
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客の話を聞きながら,視線を素早く窓へ向け,群がる敵に狙いをつけて引き金を引く。会話の内容は後のクイズに出題されるため,読み飛ばすことは許されない。正解すれば報酬が得られ,弾薬の購入費に充てられるからだ。逆に答えられなければ資金は尽き,防御手段を失うことになる。
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読むことと撃つこと。本来なら切り分けて行われるはずの二つの行為が,ここでは渾然一体となって襲いかかってくる。脳が引き裂かれるような忙しさを味わいながら,プレイヤーは次第にこの異常な日常へと順応していくのだ。
命がけの聞き取りテスト
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ただの会話劇だと思って甘く見てはいけない。客は唐突に「さっきの話,聞いてた?」と問いかけてくる。元恋人の名前や注文した品物を正確に思い出せなければ,チップは貰えず,弾薬代すら稼げない。ゾンビの頭を吹き飛ばす轟音の中でも,客の言葉を一言一句漏らさず記憶する必要がある。この意地悪な仕組みが,プレイヤーを極限の集中状態へと叩き込むのだ。
暴力と安らぎの不協和音
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血肉が飛び散る凄惨な光景とは裏腹に,耳に届くのはゆったりとしたローファイ・ヒップホップだ。激しいロックではなく,あえて落ち着いた音楽を流すことで,目の前の殺戮行為が単なる「作業」へと変質していく。この奇妙な心地よさは,深夜のコンビニで感じる独特の浮遊感に似ている。暴力と癒やしが隣り合わせにある空間は,一度味わうと癖になるはずだ。
死ぬまで終わらない接客業
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世界が滅びかけているというのに,客たちはクーポンの期限や人間関係の揉め事に固執する。窓ガラス一枚隔てた先には死が迫っているが,それでも店を開け,笑顔で商品を売らなければならない。この滑稽なまでの「日常の維持」は,現実の社会構造に対する痛烈な皮肉ともいえる。理不尽な客と暴力的な現実の板挟みになる感覚は,現代の労働者が抱えるストレスそのものである。
読むことと撃つこと。脳の別々の領域をフル回転させる本作は,忙しさの中に快感を見出す人のための作品だ。ありふれた日常業務と非日常のバイオレンスが混ざり合う奇妙な味わいを,ぜひその手で確かめてほしい。
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