連載
錆びついた独房でスロットを回して借金を返済する「CloverPit」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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私は理由もわからぬまま,見えざる誰かに課せられた「負債」を返済するため,スロットを回し続ける。これは破滅までの時間をコインで買う,絶望のゲームだ。
本日紹介する「CloverPit」は,Panik Arcadeが開発したローグライト・スロットビルダーだ。ジャンルとしては,ローグライトの戦略性とスロットマシンの運要素を融合させ,そこにPS1時代を彷彿とさせるローポリなホラーテイストを加えた作品となっている。プレイヤーは謎の独房に閉じ込められ,スロットマシンを回してコインを稼ぎ,ラウンドごとに増加する負債を返済し続けなければならない。
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このゲームのコア・ループは,「スロットを回す」「コインを稼ぐ」「負債を返済する」というシンプルなサイクルで構成されている。しかし,その根底には深い戦略性が存在する。
ゲームの心臓部となるのが,150種類以上ある「チャーム」の存在だ。プレイヤーはスピンで稼いだコインや,特定の条件で得られる「チケット」を使い,これらのチャームを購入していく。チャームには,特定のシンボルの価値を高めるものや,リールの挙動自体を変化させるものなど,さまざまな効果がある。
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このシステムの真価は,複数のチャームを組み合わせることで生まれる「シナジー」にある。特定のチャーム同士を組み合わせることで,相乗効果が発生し,スピン一回あたりの獲得コインが爆発的に増加する。強力なシナジーを構築し,システムを「破壊」するほどのジャックポットを叩き出すことが,このゲームの大きな魅力である。
また,プレイヤーは常にリソース管理の判断を迫られる。将来の大きなリターンのためにチケットでチャームを揃えるか,あるいは目先の負債を返済するためにコインを堅実に稼ぎ,ATMに入金して利子を得るか。この絶え間ないリスクとリワードの計算が,ゲームプレイに緊張感を与えている。
中毒性の高いシナジー構築
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本作の最も核となる面白さは,チャーム同士の組み合わせによって生まれる無限のシナジーにある。最初は小さなコインしか生み出さないスロットマシンが,チャームを揃えることで桁違いの数字を叩き出すようになる過程は,強い達成感を与える。どのチャームを選び,どのような組み合わせを狙うかという戦略的な考え方が,単なる運試しのゲームではない奥深さを生み出している。
ホラー雰囲気との独創的な融合
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「数字を大きくする」という満足感のあるローグライトのメカニクスを,あえて閉鎖的で不気味なホラーの文脈に落とし込んでいる点が,本作の最大の特徴だ。ザラついたローポリゴンのグラフィックス,音楽を排した環境音中心のサウンドデザイン,そして多くを語らない環境ストーリーテリングが,常にプレイヤーに不安と緊張を強いる。ジャックポットの喜びは,純粋な達成感ではなく,「破滅を一時的に免れた」という安堵にすぎない。
負債がもたらす絶え間ない緊張感
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各ラウンドの終わりに必ずやってくる「負債の返済」という締め切りが,ゲーム全体を引き締めるペースメーカーとして機能している。プレイヤーは常に返済額を意識しながら,長期的なエンジン構築(チャーム購入)と短期的な生存(返済)の間でバランスを取る必要がある。このシステムが,単調になりがちなスロットを回す行為を,緊迫したサバイバルチャレンジへと変えている。
「CloverPit」は,スロットマシンを基盤としたシナジー構築の楽しさと,プレイヤーを心理的に追い詰めるホラーの雰囲気を巧みに融合させた,独創性の高い作品である。コアとなるゲームシステムは奥深く,強力なコンボを発見して数字がインフレしていく過程には,高い中毒性がある。
システムを理解し,数字を大きくしていくことに喜びを感じる戦略的なプレイヤーと,ユニークな世界観や雰囲気を重視するプレイヤーの両方におすすめできる一作だ。
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