
企画記事
グッドモーニング,ナイトシティ! Nintendo Switch 2版「サイバーパンク2077」登場を機に,あらためて作品の魅力を語りたい
普段Switchやスマホで遊びつつ,こういう記事もクリックするあんたのことだ。きっと名前くらいは目にしたことがあるだろうな。2020年末,PC,PlayStation,Xboxに登場したこのゲームは,その圧倒的なビジュアルと底なしのディストピア,そして魂を揺さぶるドラマで,世界中の奴らを虜にした。
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「そういや騒ぎになっていた気がする」って? まあ,今の大規模なゲームじゃ珍しい話じゃない。バグだの最適化だので,こっちの街みたいにあちこちで騒動になっていたよな。だが,そのまま終わったわけじゃない。気が遠くなるような修正とアップデートの果てに,今じゃ誰もが「傑作」と認めるようになった。
そして2023年,大型DLC「仮初めの自由(Phantom Liberty)」が世界を塗り替えた。新たなシナリオと舞台,そして深淵を覗き込む奴らがこの世界に加わった。
――なあ,あんた。今度もまた,ただ見ているだけでいいのかい?
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と,最初は冒頭の1行だけ本作の主人公・V(ヴィー)っぽい雰囲気で書いてみたら,フィクサー……じゃなくて編集氏から「フルスイングで!」とオーダーがあってこんな冒頭になったが,ここで仕切り直しを。オープンワールドRPGの名作である本作のNintendo Switch 2版「サイバーパンク2077 アルティメットエディション」がリリースされたのは,Switch2の発売日である2025年6月5日のこと。ハイエンドPCや新世代機のパワーでこそ動くと思われていたサイバーパンク2077が「まさかSwitch2にくるとは!」と驚いた人も少なくないだろう。
本稿では,「サイバーパンク2077」という作品の特徴や魅力をあらためて紹介するとともに,Switch2版の仕上がりや実際にプレイしてみて感じたこともお伝えしていきたい。
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「サイバーパンク2077 アルティメットエディション」公式サイト
サイバーパンク2077とはどんなゲームか。まずは概要や物語をざっくりおさらい
本作の舞台は,こちら側とは異なる歴史をたどった未来のアメリカ西海岸にある自由都市ナイトシティ。2077年のこの街では,強大なメガコーポ(巨大企業)が絶大な影響力を持ち,最先端の技術を牛耳っている一方で,貧困や犯罪,暴力が日常的に蔓延している。
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超高層ビルが立ち並ぶアッパーサイドの真下ではストリートギャングたちの抗争が絶えず,そんな欲望と野望が交差する無法地帯が街のあちこちに存在する。人間の体はサイバーウェア(義体)に置き換えられ,脳とネットが直結することも当たり前になったこの世界では,倫理も肉体の定義もすでにすでにあやふやだ。
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本作の世界観や設定は,テーブルトークRPG「Cyberpunk 2.0.2.0.」をベースとしている。
その詳細については別途解説記事(こちら)に譲るとして,映画やアニメでイメージするなら「ブレードランナー」(1982年)や「ブレードランナー 2049」(2017年),「AKIRA」(1988年),「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」(1995年)といった,“退廃的かつハイテクな未来像”を描く,いわゆる……というか“そのまんま”だが,サイバーパンクと呼ばれる作品群の系譜にある。
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「サイバーパンク エッジランナーズ」公式サイト
プレイ前に読みたい「サイバーパンク2077」前史・徹底解説。英雄ジョニー・シルヴァーハンドの足跡から“暗黒の未来”を振り返る

11月の発売に向け期待が高まる「サイバーパンク2077」だが,そのベースとなったTRPG版について知る人は,日本ではそう多くないだろう。本稿では「2077」へと引き継がれているこの世界の成り立ちを,キーマンであるジョニー・シルヴァーハンドの足跡と共に紹介する。「2077」をより楽しむための副読本として活用してほしい。
そんな世界でプレイヤーの分身となるのは,裏社会で生きる一匹狼の傭兵・V(ヴィー)。Vは夢を追い,危険な依頼のなかで泥沼にハマっていくが,そこでロックスター兼思想家,ときどきテロリストな伝説の“ロッカーボーイ”ジョニー・シルヴァーハンドとの予期せぬ“出会い”を果たす。
出会いになぜ“”がついているのは,実際にプレイしてからのお楽しみ。ちなみにジョニー・シルヴァーハンドを演じるのは,あの俳優キアヌ・リーブス。日本語吹き替えはベテラン声優,森川智之さんだ。
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物語は,Vが自身の命にも関わる“とあるチップ”を抱えながら,企業同士や裏社会の抗争に巻き込まれていく過程が描かれる。いつか「メジャー」な界隈で名を馳せ,ナイトシティのレジェンドになることを夢見るVは,はたして己の運命を切り開けるのか,それとも露と消えてしまうのか――それは,プレイヤーであるあなたの選択に委ねられている。
オープンワールドゲームには,多数のサイドクエストを用意することで「多彩な展開」を謳う作品は多い。だが本作は,メインストーリーそのものが複雑に分岐し,そのどれもが軽く流せるようなものではない体験の“重み”と興奮,そして余韻をもたらしてくれる構成になっている。筆者は仕事柄,さまざまなゲームに触れてきたが,このレベルの分岐構造と密度,完成度を持つタイトルは,正直なかなか出会えるものではない。
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選択の自由だけでなく,選ばない自由も。あなた次第のVになれるゲームシステム
「サイバーパンク2077」は,恐ろしいほど自由に遊べるオープンワールドRPGだ。ゲームを始めてしばらくすると,プレイヤーはナイトシティのほぼすべてのエリアにアクセスできるようになる。
「シティ」とはいうものの,そこにあるのは“街”だけじゃない。ビジネス街にダウンタウン,妖しげな歓楽街,ハイソな山の手,計画途中で放棄されたリゾート地,さらには郊外の砂漠地帯まで,さまざまなロケーションがある。
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移動手段も自由自在で,車やバイクで高速道路をかっ飛ばしてもいいし,徒歩で裏路地を探索してもいい。それだけでも,事件に巻き込まれたり,誰かと偶然出会ったり,あるいは何も起こらなかったりと,クエストとは違った体験がそこにはある。
観光気分で街並みを楽しむのもよし,その土地のローカルな住人になりきって過ごすのもまた一興。行き先も,過ごし方も,すべてがプレイヤーに委ねられているのだ。
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Vに舞い込む依頼や,サイドクエスト(サイドジョブ)は,どれも丁寧に作りこまれており,印象に残るキャラクターとの出会いや,心に刺さるストーリー体験が待っている。
なかには,その後のナイトシティの情勢に影響を及ぼしたり,エンディングの展開にまで変化をもたらしたりするものもあり,それを体験すれば「この世界は生きている」と実感できるだろう。
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Vの育成は,「肉体」「知力」「技術」といった基本能力値と,それに紐づいた多彩なスキルを習得していくことで進めていく。銃で並みいる敵をなぎ倒すもよし,スレッジハンマーでミンチを量産するもよし,ハッキングやステルスでスマートに任務をこなすもよし。それらを組み合わせた“ハイブリッド型”を目指すのも,もちろんアリだ。
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さらには,身体にサイバーウェアと呼ばれる義肢や強化パーツを埋め込むことで,身体能力そのものを拡張することも可能だ。腕に強力なブレードを仕込んだり,脚を強化して高所へのジャンプを可能にしたりと,自分好みのスタイルをとことん追求できる。
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と,こんなふうに並べると「やることが多くて大変そう」と感じるかもしれないが心配ない。筆者は初めてプレイしたとき,物語にグイグイ引っぱられるまま進めているだけで,経験値稼ぎらしいこともほとんどせずにエンディングを迎えられた。サイバーウェアに至ってはほぼ手付かずのままだ。
これこそが本当の自由……と言うのはさすがに言いすぎかもしれないが,好きな要素だけをつまんで楽しむ,そんな遊び方も十分アリなのだ。
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では,Nintendo Switch 2版はどうなのか?
2025年6月,そんな「サイバーパンク2077」のすべてが詰まった「サイバーパンク2077 アルティメットエディション」が,Nintendo Switch 2でリリースされた。高性能なゲーム機やゲーミングPCを揃えることにハードルを感じていた人にとっても,これはうれしいニュースになったのではないだろうか。
……肝心のSwitch 2がなかなか手に入らないのが難点ではあるが,なにせ,リビングの大画面でも,手のひらの中でも,あの広大なナイトシティを駆け巡ることができるのだから。
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そんな超大作がSwitch2でどの程度快適に遊べるのか。これは気になる人も多いだろう。リリース当時に表現規制のないPC版をプレイし,その後もPS5やXbox Series X,さらにはクラウドゲーミング版でも本作を試してきた(試しすぎである)筆者もそれは同じ。そして実際に試してみたわけだが,そんな筆者の目から見てもSwitch2版はとくに問題なくゲームに没頭できる仕上がりだった。
もちろん,他ハード版の映像と見比べれば,解像度やフレームレートはそれなりに「分かる」レベルで違う。だが,今回Switch2版で新たにゲームをスタートしたとき,そうした違いはほとんど気にならず,「ほぼ遜色ない」と感じたのもまた事実である。
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細部に注目すれば,たしかに精細感は控えめだ。だが,画面全体の絵作りのバランスがよく,プレイ中はそこまで気にならない。さらに,Switch 2はストレージの読み込みが速いため,ファストトラベル時の待ち時間も短く,テンポを損なうことはほとんどない。
ゲーミングPCや高性能なゲーム機を揃えることにハードルを感じている人にとって,Switch2版は十分に満足できる選択肢だと自信をもってオススメできる。とくに携帯モードでプレイすると,このゲームが携帯可能なデバイスで動いていることにちょっとした感動を覚えるはずだ。
文字を読む機会の多いゲームではあるので,やはり大画面で遊ぶほうが内容的には適しているかなとも感じる面はある。ただそれは個人差もあるところなので,お好みの方でどうぞ,としておこう。
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Joy-Con 2を両手で持ってのモーション操作も試してみたところ,かなり高い精度で動きを拾ってくれた。手首のひねりで弾をリロードしたり,振りかぶって強攻撃を繰り出したり(ボタン操作なら長押しに相当)といった体感をともなうアクションは,「サイバーパンク2077」にこれまで触れてこなかった人や,接近戦をメインに楽しみたいプレイヤーにはけっこう刺さるかもしれない。
ライフルで精密にヘッドショットを狙いたいときなども,Joy-Con 2やSwitch 2 PROコントローラーのジャイロ操作が非常に便利に感じられる。
とはいえ,「人間の体というのは,存外思い通りには動かないもんだなあ」と,ちょっとメタな感想が浮かぶくらい,正確な動きを何度も繰り返すのはけっこう難しい。ジャイロのズレを右スティックでちょこちょこ修正する必要もあって,すでに従来の操作に慣れている筆者としては,「これは気分転換に,たまにやってみるくらいかな」と感じたのも正直なところだ。
ともあれ,操作方法の選択肢が増え,自分に合ったスタイルを見つけやすくなったという意味では確実に進化している。それをどれくらい活用するか,どう楽しむかはプレイヤー次第だ。
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HD振動に関しては,銃撃や車のエンジンの揺れ,タイヤが路面をしっかり捉える感覚,さらにはサイバーウェアの動作まで,手のひらで味わえるような作りになっていて,なかなか気分を盛り上げてくれる。インベントリ画面の操作時などにも軽く振動が入り,操作が「受け付けられた」ことを感覚的に伝えてくれるのも分かりやすい。
そして意外なことに,振動の体験としてもっとも“まとまりがある”と感じられたのは,Joy-Con 2をグリップに装着した状態やSwitch 2 PROコントローラー使用時ではなく携帯モードだった。本体スピーカーからの音とのシンクロ感が強くなるからだろうか。
ちなみに,近年のゲーム開発においては,振動演出をサウンドチームが担当することが多いという。本作がそうであるかは定かではないが,携帯モードで振動がより豊かに感じられたのは,もしかするとそのあたりが関係しているのかもしれない。
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今回Switch2版をプレイしてみて素直に感じたのは,「久々にナイトシティに帰ってこれたな」ということだ。煌びやかなネオンに照らされた,濡れたアスファルトの上を走り抜けていくあの感覚──あれは他ではなかなか味わえない,このゲームならではの体験だ。
かつてはゲーム用のPCやハイエンドなゲーム機でしか味わえなかったこの作品が,いまやSwitch2という小型デバイスの中でしっかり動いている。その驚きはやはり大きい。
もちろん,ハンドヘルドPCやPlayStation Portalのような携帯型のゲーム環境も存在する。だが,Joy-Conによる多彩な操作や,携帯モードからテレビモードへのシームレスな切り替えといった“Switchならではのプレイ体験”を味わいながらゲームをプレイできることに,ほかにはない魅力を感じられるのだ。
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ツール(=ハードウェア)は新しくなっても,ゲームは勝手知ったる「サイバーパンク2077」のままであり,そしてナイトシティである。すぐに車で街を流してイザコザに首を突っ込んだり,キてる通行人を撮影したりと,気づけば遊びそのものに没頭してしまう。それくらい,ゲーム体験のコアな部分は損なわれてはいなかった。
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主にSwitchやスマホでゲームを遊んでいるプレイヤーにとって,「サイバーパンク2077」は,これまであまり縁のなかったタイプのゲームかもしれない。だが,上でもお伝えしたように,本作はシステムに振り回されることなく,物語にどっぷりと浸れる“ストーリードリブン”な一面も持ち合わせている。
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もちろん,スキル構成にとことんこだわって,サイバーウェアをこれでもかと積み,サイバーサイコ(作中に登場する,サイバー化の影響で精神が崩壊した人たちの総称)まっしぐらなビルドで突き進む遊び方も楽しい。だが一方で,身構えず,気軽に遊べるゲームであることも強調しておきたい。
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たとえば,ドライブしながら街の看板を眺めたり,通行人の写真を撮って回ったり,ラジオを聴きながら流したり,その辺に置かれた読み物を読み漁ったり──そんなふうに,ナイトシティの“文化”そのものを味わうのも,このゲームの立派な楽しみ方だ。ちょっとした空き時間にも手軽に起動できるSwitch2は,そういった寄り道型のプレイスタイルとも非常に相性がいい。
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なんとなくヤバそうで,反社会的で,物騒なゲームに見えるかもしれない(まあ実際,合ってるところもある)。だが本作は,技術の進歩が人間にもたらすものと,そのなかで生きる魅力的なキャラクターたちの姿を描き,“人間とは何か”を問いかけてくる壮大なドラマでもある。
そんな魅力的な群像のあいだで,プレイヤーの分身となるVは,果たしてどのように生きるのか。その選択の一つひとつが,Vの行く末だけでなく,ナイトシティの未来すらも書き換えていく。
Nintendo Switch 2版の登場を機に,ぜひこの超大作の世界に飛び込んでみてほしい。
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……おっと,最後にひとつだけ。ゲームを始めたら,オプション画面でスピードメーターの単位を「ヤード・ポンド法」から「メートル法」に切り替えておこう。地味な設定に思えるかもしれないが,これだけでプレイ中の違和感がぐっと減って快適なナイトシティでの日々を過ごせるはずだ。お忘れなく。
「サイバーパンク2077 アルティメットエディション」公式サイト
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- ライター:高橋祐介

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