
連載
“起こるかもしれない”が現実に。「21世紀大予言ゲーム」を今プレイすると,無邪気には楽しめない!? 昭和・平成レトロボードゲーム大百科 第5回
![]() |
少し前に,「7月5日に日本大災害」説が話題になりましたね。海外からの観光客が減少するなど,国際的な騒動(?)になったようですが,おそらく昭和50年代に少年時代を過ごした筆者と同世代の人なら,不安より懐かしさを感じた人が多かったのではないでしょうか?
その頃は世紀末の一歩手前で,人気テレビ番組には,「あなたの知らない世界」やUFO特番,超能力者ユリ・ゲラーのスプーン曲げ,さらには謎の生物を追った川口浩探検隊シリーズなどがありました。わりとオカルト的なものが身近に感じられた時代だったんですよね。
そしてこの時期,まことしやかに信じられていたのが,五島 勉氏のロングベストセラー「ノストラダムスの大予言」。ノストラダムスの詩に暗示された“1999年7月,空から降ってくる恐怖の大王によって,世界は滅亡する!”は,にわかに信じがたいものの,当時の少年たちは「でも,もしかしたら……」みたいな不安も感じていました。
そして,そんな不安をなぜかエポック社がボードゲーム化。それが今回の「昭和・平成レトロボードゲーム大百科」で紹介する「21世紀大予言ゲーム」です。
未来の異変を予言し,財産を守れ!
まずパッケージの箱絵が怖い。上部には戦争,火山噴火,大隕石落下といった,さまざまな異変や災害の様子がリアルなタッチで散りばめられ,その下で巨大な目が見つめているという,悪い夢のような大胆な構図です。そして箱を開けてみると,巨大な予言書のようなゲームボード(の裏面)が目に飛び込んできます。開封体験のデザインとしては,なかなか秀逸ではないでしょうか。
![]() |
このゲームの目的を最初に書いておきましょう。まずは未来に起こる異変を予言し,それを的中させること。さらに巻き起こる異変から上手に逃れ,できる限り自分の財産を守ること。このふたつをいかに達成できるかが,勝利のポイントになります。
![]() |
盤面は,2001年から2040年までの時間を進んでいくM字状のマス目と,財産を配置する地図状のマス目,さらにそれを挟み込むように6個ずつ合計12の異変が描かれたスペースの3つに分かれています。
ということを踏まえたうえで,スタート前の準備作業を説明しましょう。まずプレイヤーは「大預言者」「作家」「占星術師」「天才少女」「評論家」「科学者」という6人の人物から1人を選びます。意味ありげな6人ですが,プレイするうえでの差はないので,好みで選んで大丈夫です。
次にその人物用の「予言カード」13枚と「財産コマ」(食料3個,燃料2個)を配ります。なお,異変が12に対して,予言カードが13枚あるのは,12枚の異変に加えて,「安泰の日々」という,何も異変が起こらない予言も含まれるためです。
![]() |
参加人数によって異変の数が変わる……!?
続いて「異変カード」をランダムに配るのですが,使用する異変カードは参加人数によって異なります。先ほどの説明で書いたとおり,異変は全部で12種類あるのですが,12種類全部の異変カードを使うのは最大参加人数の6人でプレイしたときのみ。最少参加人数3人でのプレイでは6種類の異変しか起こらず(6種類の異変カードしか使用せず),ある意味,世界にとっては幸せなことなんですが,ゲームとしては不謹慎ながらやや盛り上がりには欠けるかなと……。
![]() |
![]() |
なので,誤解を恐れず書くと,できることなら6人集めて12種類すべての異変が起こる危機的な世界でプレイしたほうが面白いと思います。ということで,ここでは6人フル参加でプレイした際のゲーム説明をつづけていきます。
まずは2001年から2010年までに起こる未来を予言
異変カードがランダムで6枚配られたら,各プレイヤーはそのカードを見て,まず2001年から2010年までの10年間に起こる異変を予言します。予言できる異変は2個。予言カードの中から2枚を選び,盤上の自分のスペースに,カードを裏向きに伏せて置けば完了です。予言の当たり外れについては後述しますが,自分に配られた異変カードの中で,例えば「火山噴火」のカードが2枚以上あれば,それを予言したほうが多少当たる可能性が高くなりそうです。
また,この10年間は異変が起きないを予言する場合は,「安泰の日々」を選択します。ただ,安泰の日々を1枚だけを裏向きに伏せて置くと,安泰の日々を予言したことがほかのプレイヤーにバレてしまうので,その場合は,安泰の日々といっしょにどれでもいいので異変の予言カードを伏せておきましょう。
すべてのプレイヤーの予言が完了したら,次は財産コマを地図上のマス目に配置。このときにプレイする順番をジャンケンで決め,その順に財産コマの食料1個,燃料1個を地図の好きな場所に配置します。なお,1つのマス目に置ける財産コマは1つだけです。これにて準備完了,ゲームスタートとなります。
![]() |
不穏なルーレットが廻り,異変の予兆が起こり始める
このゲームはルーレットの出目によって進行していきます。このルーレットがやや特殊で,その動きは筆者が知る限りもっとも不穏。レバーを引いて放すと,中の白い2つの玉がそれぞれ内輪,外輪を回転するんですが,磁石で誘導されるその玉の動きが不気味で,オカルトな雰囲気を表現するうえで大変素晴らしい。
ここにはエポック社のルーレットにかける強いこだわり,熱意が感じられます。このあたりの作り込みもレトロボードゲームならではです。ついでに書いておくと,「里中満智子の星占いゲーム」のルーレットもミステリアスで一見の価値ありです。機会があればぜひ紹介したい。
……と,ちょっと話がそれましたが,そんなルーレットが指し示すのはプレイヤーのコマが移動する数(内側)と,異変カード引く人物の色(外側)。この人物の色というのは各人物それぞれ色が決まっていて,大預言者(黄),作家(緑),占星術師(紫),天才少女(赤),評論家(茶),科学者(青)となっています。
プレイヤーは,スタート地点である2001年のマスから,ルーレットの出目の数だけ自分のコマを動かしたあと,ルーレットが示した色のプレイヤーが持っている異変カード(各プレイヤーに最初に配られた6枚)から1枚ランダムで引いて内容を確認し,盤上にある異変の絵のスペースに置きます。なお,あとはこれを順番に繰り返し,同じ異変カードが4枚盤上に出たら“異変発生“”となります。
ほぼ運かと思いきや,わずかに介在する予言者の意志
このように,基本はルーレットによって決まるプレイヤーの異変カードをランダムで引いて盤上に出していくだけなので,運の要素が強いのですが,ただひとつ例外が。
それが,ルーレットで自分の色を出したとき。この場合に限り,いま自分が持っている異変カードの中から好きなカードを盤上に出せます。つまりこれにより,最初に同じ種類の異変カードが複数枚配られ,うち1枚を予言として出していれば,自分が予言した異変を早める,あるいはそれが4枚目だったら発生させることも可能になるわけです。
逆に異変が起きない「安泰の日々」を予言しているなら,もっとも盤上に出ていない異変カードを出せばいいわけで,このちょっとした意志の介在がこのゲームの戦略要素となって,ゲームバランスを面白いものにしています。
![]() |
大災害の発生を予測し,財産を避難させよ
さて,人物コマが2001年からスタートし半分の地点を超えたところから財産コマの移動が可能になります。財産コマが置かれている地図のマスには,そこで発生する異変(を示す数字)が書かれています。なので,異変カードがすでに3枚出ているマスに財産コマがあった場合は,早急に避難する必要があるワケです。
![]() |
なお,避難時で移動できるマスの数は人物コマと同じです。例えば3が出れば財産コマも3マス左右上下に動かせます。また,食料のコマを2マス,燃料のコマを1マスといった感じで,3マス分を分けて移動することも可能です。
ただし,ほかのプレイヤーの財産コマを飛び越しての移動は不可。また,島に渡るときはちゃんと橋を使う必要があり,さらに地図の中央部分にある海(黒い部分)には侵入不可となっています。
経済パニックは都市部中心,火山噴火は山地中心といったように,異変によって発生エリアの分布も異なるので,どの異変を警戒するかによって,財産の動かし方も考える必要があります。
![]() |
そして異変カードの4枚目が出た時点で,その数字に該当するマスに財産コマがあった場合は,財産喪失となって,そのプレイヤーの財産コマは地図上から失われます。
10年一区切り,予言の検証と新たな予言
以上のことを繰り返し,2010年のマスに到達したところで一旦ストップ。ここでほかのプレイヤーも2010年に到達するまで待ちます。ですが,もし異変カードがまだ手元に残っていれば,好きなカードを1枚だけ盤上に出すことができるので,ここでも予言的中に近づけます。
そして全プレイヤーが2010年のマスに到達したところで予言の検証へ。各プレイヤーが最初に伏せて出した2枚の予言カードをオープンして,この10年間で実際に予言した異変が起きていたら的中。得点表に予言的中の数だけピンを刺すことができます。
なお,得点はひとつの異変的中につき5点ですが,異変が一切起きない「安泰の日々」を的中させた場合は20点となります。実に4倍なので,安泰の日々が狙い目のような気もするんですが,いざやってみると何かしらの異変が発生する可能性が高く,このあたりの点数バランスもよくできています。
![]() |
そして検証が完了したら,次の10年に向けた予言タイムへ。異変カードを配り直し,それを見たうえで2010年から2020年までに起きそうな異変を予言し,2枚の予言カードを伏せて手前に置きます。またこのとき,食料の財産コマを地図上に新たに1個配置してスタートします。
そして2040年,予言は的中したか!? 財産は守れたか!?
といったように,予言と財産移動の慌ただしい10年間を4セット行い,ゴールである2040年に到達したら,最終集計へ。まず40年分の予言的中数の合計を出し,そこに守りきった財産コマの得点を追加します。なお,食料は1個2点,燃料は1個3点で計算。合計点が一番高かったプレイヤーの優勝となります。
![]() |
そんな「21世紀大予言ゲーム」ですが,予言カードの中にはここ数十年の間に実際に起きてしまったこともいくつかあり,今の時代においては,こういったテーマをゲームとして扱うこと自体,若干不謹慎だと感じる人がいるかもしれません。ただ,異変も災害もある程度自由に語れた時代だからこそ生まれたボードゲームであり,そこを理解したうえで楽しんでいただければ……と。
なお,この「21世紀大予言ゲーム」も,筆者が経営している「Book CAFE ヨミヤスミ」のイベント「8時だョ!レトロボードゲーム」にてプレイできますので,よかったらご参加ください。
■■Book CAFE ヨミヤスミ■■
京王線の京王多摩川駅から徒歩6分ほどの場所にあるブックカフェ。1980〜90年代の本や雑誌,漫画に加えて,パソコン雑誌やゲームブックなども揃っています。
毎週末開催されるイベント「8時だョ!レトロボードゲーム」では,本連載で紹介したものをはじめとしたレトロボードをプレイできますので,下記のイベントサイトでお申し込みのうえ,ぜひご来店ください。
公式サイト:https://sites.google.com/view/yomiyasumi
公式イベントサイト:https://sites.google.com/view/yomiyasumi-8jidayo
公式X:https://x.com/yomiyasumi
- この記事のURL: