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印刷2025/08/27 08:00

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ゲーマー向けAIエージェント「G-Assist」やAIキャラクタ技術「ACE」など,NVIDIAのゲーム向けAI技術の最新動向に迫る[gamescom]

NVIDIAブースの様子
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 NVIDIAは,gamescom 2025会場内のビジネスエリアにブースを出展して,PCゲーマー向けAIエージェント「Project G-Assist」や,AIキャラクタ技術「ACE for Games」などを披露していた。
 それ以外にもユニークな展示があったので,レポートしよう。


髪や草を表現するのに役立つ「LSS」が「インディ・ジョーンズ/大いなる円環」に実装


 NVIDIAは,GeForce RTX 50シリーズで,レイトレーシングを高速化する特殊機能を多数搭載した(関連記事)。しかし,そのほぼすべてが,DirectX Raytracingから直接活用できないため,ゲーム側が個別に対応する必要がある。
 そんな事情もあり,GeForce RTX 50シリーズが本領を発揮するには,少々,時間がかかるかもしれない,と予想していたのだが,一部のPCゲームでは,導入しやすい機能から対応を進めているようだ。

 最も導入のハードルが低いのは,髪や細い草を表現するのに役立つ「Linear Swept Spheres」(LSS)機能だろう。NVIDIAブースでは,その対応タイトル第1号として,「インディ・ジョーンズ/大いなる円環」を紹介していた。

ゲーム内オプションのグラフィックス設定では,「Ray Traced Hair」という項目で設定できる
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 レイトレーシングは,放たれたレイがポリゴンとの衝突判定を行うところから始まるので,その描画品質は,どれだけ正確にこれが行えるかに依存する。


 すべてのユーザーが,ウルトラハイエンド市場向け「GeForce RTX 5090」を使えるわけではないので,1ピクセルから放てるレイは,多くても数十本程度が限度となる。映画用のオフラインCGなどでは,これが数千本以上となるので,品質の差は明白だ。

 限られたGPU性能による映像を,どれだけ本物っぽく見せるかがゲームグラフィックス制作者の腕の見せ所。しかし,難度がとにかく高いのが,細い線分のような表現だ。具体的には,金網や針金,糸や紐,毛髪などの3Dオブジェクトが該当する。
 こうした線分オブジェクトは,きしめんのような,細いリボンのような連結ポリゴンで表現したり,十字ビルボード(Disjoint Orthogonal Triangle Strips,DOTS)で表現したりすることもある。ただ,これらの手法では,むやみにポリゴン数が増えてしまうので,処理能力的に割に合わない。
※2枚のビルボード(板型のポリゴン)が交差角90度で十字に交わったオブジェクト

 そこで,そうした細い線分を,球体(Sphere)が移動する軌跡――連結されたカプセル形状――で表現して,処理能力をあまり使わずにレイとの衝突の正確さを向上させる新機能を搭載した。これがLSSだ(関連記事)。

LSSによる毛髪表現のジオメトリ情報量は,同品質の毛髪をポリゴンベースで表現したときの1/3で済む。処理能力に換算すれば約3倍速いことになる
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 カプセル形状は,見映え的には複雑に見えるが,算術的には球体の半径情報と,球体の軌跡における始点と終点の3D座標だけで表現できる。そのため,線分モデルを多ポリゴンモデルで表現するよりも,衝突判定には圧倒的に軽量なのだ。

LSS技術を活用した毛髪表現「RTX Hair」の例。サムネイルをクリックしてフルサイズ画像を見てほしい
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 オンのほうは,毛髪に鏡面反射によるハイライトが乗るようになり,毛髪の線分がきちんと連続している。それに対してオフは,毛髪の陰影が拡散反射のみのライティングのように一様な感じとなり,破線のような不連続な描画にもなっているのが見てとれよう。
 インディ・ジョーンズのRTX Hair技術対応アップデートは,9月4日にリリース予定のDLC「The Order of Giants」配信開始と同時に行われる予定だ。GeForce RTX 50シリーズのユーザーは,アップデート後に,実際のゲームで違いを確認してほしい。



ゲームプレイの秘書を務めるAI「G-Assist」がさらに進化


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 NVIDIAは,AIでPCゲームのプレイをアシストするAIエージェント「Project G-Assist」(以下,G-Assist)をCOMPUTEX 2024に発表。β版に相当するVersion 0.1を,2025年5月のCOMPUTEX 2025のタイミングで公開した。

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 NVIDIAは,COMPUTEX 2025には出展していなかったが,会場のすぐ側にあるホテルで,独自イベント「NVIDIA GTC TAIPEI at COMPUTEX 2025」を開催して,存在感は示していた。会場の展示コーナーやデモルームで取材したもののなかから,4Gamer読者の関心が高そうなものを紹介しよう。

[2025/05/30 19:19]

 このG-Assistがさらに進化して,Version 0.1.17がリリースされたのだ。
 Version 0.1でベースとなっていたAIモデルは,Metaが開発した「Llama」の8B(80億パラメータ)モデルだった。これがVersion 0.1.17では,Alibabaが開発した「Qwen3」の4B(40億パラメータ)モデルに置き換えられた。
 一般的には,8Bモデルのほうが4Bモデルよりも優れている場合が多いそうだが,NVIDIA担当者によれば,Qwen3 4Bモデルは,Llama 8Bに優るとも劣らぬ品質だという。

 この自然言語AIモデルは,いわゆる「Small Language Model」(SLM)となっており,G-Assistの動作に必要な学習結果だけを凝縮したモデルだ。つまり,クラウド側のAIサーバーを介さず,AIコアと学習データはすべてローカルPC側にある状態で動作する。
 ローカルで動作するAIエージェントという点は,Version 0.1も同じだが,Llama 8Bモデルは,動作にはグラフィックスメモリが12GBも必要だった。これが,Qwen3 4BモデルベースのVersion 0.1.17になると,6GBで十分になったのだ。
 その結果,動作可能なGPUが大きく拡大されて,メモリ容量6GB版のGeForce RTX 2060を含む,6GB以上のグラフィックスメモリを搭載するすべてのGeForce RTXシリーズで,G-Assistが動作可能になる。

G-Assistがグラフィックスメモリ容量6GB以上のGeForce RTXシリーズのすべてで動作が可能に
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 さて,G-AssistのAIは,容量6GB以上のグラフィックスメモリが必要と聞くと,動作中は常に6GBのグラフィックスメモリを使用してしまうのか,と心配する人もいるかもしれない。この点は,その心配はないそうだ。
 G-Assistは,呼び出されたときに,CPUが管理するメインメモリ側からGPU管理下のグラフィックスメモリに,AIモデルや学習データを転送してから動作する。つまり,ゲーム実行中などは,AIモデルをメインメモリ側へ退避して,ゲームにグラフィックスメモリを明け渡す仕組みとなっている。日常的にG-Assistを活用したい人は,その分のメインメモリ側を多く搭載しておく必要があるかもしれない。
 また,G-Assistとの音声対話を行う場合は,さらに3GBほどのメモリが必要になるそうだ。

 なお,性能面の問題で,G-Assistとの音声対話を行うには,GeForce RTX 30シリーズ以上が必要とのこと。当面の対応言語は,英語のみだが,近い将来に多言語対応にも乗り出すという。
 AIモデルや学習データの最適化,6bit化や4bit化が実現できれば,「将来的には,グラフィックスメモリ要件を4GBまで減らせる可能性が,ありえなくもないかも」とはNVIDIA担当者の弁。たった3か月でこのペースでの進化なので,G-Assistのアップデートには今後も期待できそうだ。

 G-Assistが標準的に備えているアシスタント機能には,以下のようなものがある。

  • ゲーム性能の最適化診断
  • GPUやキーボードなどの設定変更
  • フレームレート,温度,遅延などのステータスを表示する機能
  • GeForceシリーズやPCハードウェア,ゲームに関連した一般的な質問への回答

CPUとGPUの負荷グラフ。こうした機能は,G-Assistの標準機能として搭載されている
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 さらにG-Assistでは,さまざまなプラグインを組み込むことで,機能を拡張することも可能だ。
 G-Assistのプラグインシステムをシステマティックに運用するために,NVIDIAは,ゲーム改造情報共有プラットフォームの「mod.io」と協力して,「G-Assist Plug-In Hub」を開設した。

G-Assistのプラグイン配布Webページ
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 ブースでは,「Twitch」プラグインを使って,特定ジャンルのTwitch放送を検索したり,「Canrun」プラグインを使って,自分のPCスペックで特定のゲームタイトルが快適にプレイできるかを判定したりするデモが披露された。
 Qwen3 4Bモデルは,話者の命令語の意味を深く理解する知性があるため,「Hey Twitch」や「Hey Canrun」のような,AIプラグイン名を叫ばずとも,直接,「I want to watch Street Fighter 6 live on Twitch」(Twitchでスト6のライブ配信を見たい)とか,「Check if my system can run Elden ring」(私のPCでエルデンリングを動かせる?)と,直接,G-Assistに話しかけるだけで,質問内容から,どのプラグインに動作を委ねるかを賢く選んでくれるとのことだ。

Twitchプラグインを入れれば,お気に入りのTwitch配信者が,ライブ中かをG-Assistにチェックしてもらえる
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Canrunは,自分のPCスペックが,ゲーム側の動作要件を満足しているかどうかをチェックしてくれるプラグイン。ゲーム側の動作要件はSteam側の情報を利用している
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 各PC周辺機器メーカーやアマチュア開発者から,驚くほどのスピードで続々と新しいプラグインが,G-Assist Plug-In Hubに投稿されているとのこと。いずれ,「どのプラグインをインストールすればいいか,迷ってしまうかもしれない」と言う筆者に対し,担当者は一言。
 「そんなときには,G-Assistを使って,ほしい機能を告げれば,その願いを叶えてくれるG-Assisプラグインがあれば見つけてくれるし,そのまま音声コマンドでインストールさせることだってできるよ」だそうだ。
 G-Assist,とても便利そうなだけに,早期の日本語対応が望まれる。

G-Assistプラグインのアマチュアコンテスト「Project G-Assist Plug-In Hackathon」も行われた
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NPCに知性を与えるNVIDIA ACE。ローカルAIだけを使ったゲームも可能に


 NVIDIAは,AIキャラクターに知性をもたらすカスタムAIモデル開発システムとして「NVIDIA Avatar Cloud Engine」(ACE)のゲーム向け技術「ACE for Games」を2023年に発表した(関連リンク)。

 ACEは,ゲーム中のNPCに対して,2つの手法で知性を与えることができる。
 ひとつは,クラウド側に置いた生成系AIを活用する方法だ。応用力の高い知性を与えることができる。
 2つめは,ユーザー側のローカルPC上で動作するコンパクトな生成系AIで,知性を与える方法だ。特定状況に対応することに限定した知性であれば,こちらが向いている。
 どちらを活用するかは,ゲーム開発者がどんなゲームを実現したいかで変わるわけだ。

ACEを「Mecha BREAK」で活用しているデモ画像。右のNPCがACEを使って,プレイヤーと会話する
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 AIをクラウド側に置いた場合は,ユーザーのローカルPC性能に依存しない,かなり高度なAIが動かせる。その反面,動作中はインターネット接続が不可欠で,通信環境によっては,ユーザーからの問いかけに対して遅延をともなうことがありうる。
 そもそも,クラウドサーバーの利用料金も馬鹿にならない。これをゲームメーカーが受け持つのか,ゲームのプレイ代金に含めるのか,といった議論も必要になる。

 gamescom 2025で公開されたACE活用の新しいゲーム事例は,後者のアプローチ,つまりローカルPC上で動作するAIでNPCを動かすものだ。
 Iconic Interactiveが開発中の「The Oversight Bureau」というタイトルで,リリース時期は2025年内予定,言語は英語限定とのこと。本稿執筆時点で価格は不明だ。

The Oversight Bureau
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 本作の内容をざっくり説明すると,「謎の更正施設に閉じ込められたプレイヤーが,試練を乗り越えて施設からの脱出を目指す」という感じの,いわゆる脱出ゲーム的なものとなっている。
 プレイヤーには,何の特殊な能力もないので,できることは会話だけ。プレイヤーはNPCと会話をすることだけで,与えられた試練を乗り越えていかなくてはならないのだ。


 デモで実演されたシーンでは,突然鳴った電話の受話器を取ると,助けを求める女性の声が聞こえる。女性がいる場所は火事が起きていて,「今にも火の手が迫ってきているので,助けてほしい」と訴えてくるのだ。
 この場面でプレイヤーに与えられた試練は,女性がいる施設の図面を見ながら,煙で視界を奪われた女性を,会話だけで出口まで誘導するというもの。
 実演担当のNVIDIA担当者は,「今,何階のどの部屋にいるのか」「火の手はどっちから迫ってきているのか」と女性に質問して,その返答を元に「どっちへ行け」といった指示を出していく。
 しかし,そこはゲームなので,一筋縄ではいかない。女性は,「先に進んだら扉はあったが,締まっていて開かない」とか,「火の手が行き場を阻んでいて,前に進めない」とか,別の困難を訴えてくるのだ。

図面を見ながら,電話の向こうの女性NPCに退避路を説明していく場面。プレイヤーに求められるのは説明するスキルだ
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 これに対してプレイヤーは,図面をよく見ながら,「扉を開くためのボタンがどこそこにある」とか,「消火器が部屋の奥にある」といった指示を出していくことになる。
 こうして,会話のやりとりだけで,女性を火事現場から脱出させることができれば,ゲームは新たな局面へと進んでいく。

 このゲームにおける音声認識処理や自然言語での会話機能は,NVIDIA ACEのサブシステム「NVIDIA Riva」を用いて開発しているとのこと。グラフィックスメモリの占有量は,1GB程度だという。

 ゲームに登場するNPCの応答は,Iconic Interactive独自開発のSLMベースAIとシナリオエンジン(Narrative Engine)を組み合わせている。これにより,NPCのAIはゲームのストーリーや状況に応じた返答が可能になる仕組みだ。
 実際には,あらかじめ録音された音声から,NPCのAIが適切なものを選択している。

SLMとNarrative EngineはIconic Interactiveが独自開発。言語音声認識処理系についてはNVIDIA ACEのサブシステム「NVIDIA Riva」を活用している
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 いろいろな意味で高コストな生成系AIを使って,NPCを動かすことにリアリティを感じないゲーム開発者は少なくなかったと思うが,The Oversight Bureauのアプローチは,随分と現実的だ。
 NVIDIA担当者の実演を見る限り,ローカルAIなので応答速度は速かったし,事前に収録済みの音声での台詞選びも,ゲーム進行と合っていた。プロの声優がしゃべっている分,臨場感は素晴らしい。

 ただ,台詞は事前収録ということから,音声の多言語対応は,従来と同等のコストがかかる。とはいえ,AI技術の進化は早いので,オリジナル言語での台詞の声色や演技を維持したまま,他言語に変換することもいずれ可能にはなることだろう。


RTX Remixにパーティクルシステムが統合


 MODによるゲームの改造は,PCゲームにおける大きな魅力であり,ゲームファンによる重要な二次創作文化にもなっているのが現状だ。もちろん,著作権の観点から,MODに対するさまざまな意見もある。NVIDIAとしては,クラシックゲームのMODは,そのタイトルを再注目させる大きな要因となると考えており,むしろ奨励している。
 そんなNVIDIAが,MOD開発の支援ツールとして提供しているのが「NVIDIA RTX Remix」だ。

クラシックゲームをレイトレーシング時代の先進グラフィックスに改造するためのMOD開発支援ツールがRTX Remixだ
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 ここで軽く,RTX Remixの基本概念とワークフローについて解説しておこう。
 RTX Remixを用いてMODを制作できるゲームは,DirectX 9,8時代のゲームに限られる。また,ゲームグラフィックスにプログラマブルシェーダをあまり活用していない,固定パイプライン活用主体で制作されたタイトルのほうが,改造しやすいという。

 NVIDIA RTXをインストールした環境で,改造対象のゲームのインストールフォルダに「RTX Remix Runtime」を置いて,ゲームを起動する。これで,ゲームと同時にRTX Remix Runtimeのオーバーレイシステムが作動するので,実行中のゲームのグラフィックス処理を,RTX Remixに含まれる「d3d9.dll」で解析できるようになるという手順だ。
 解析といっても,ゲームプログラムをリバースエンジニアリングするのではなく,対象のゲームグラフィックス全体――ジオメトリからテクスチャまでのすべて――を「USD」(Universal Scene Decsription)形式でキャプチャできるようにする。
 キャプチャしたゲームのグラフィックス要素を,実質的なRTX Remixエディタである「RTX Remix Toolkit」に読み込めば,あとはMOD開発者が,好きに改変,差し替えできるようになる仕組みだ。
 こんな具合で,ゲームプログラム自体を書き換えるわけではなく,あくまでもグラフィックスを差し替える仕組みを提供するのが,RTX Remixの改造メカニズムである。

 そして今回,2025年9月にリリースを予定しているRTX Remixの新バージョンに,パストレーシング対応のパーティクルシステムを搭載することを,NVIDIAが発表した。プラグインではなく,新バージョンのRTX Remixにパーティクルシステムが追加されたという理解でいい。

RTX Remixに,待望のパーティクルシステムが搭載
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 これで何ができるかといえば,任意の場所からパーティクルエフェクトが付与できるようになるだけの,とてもシンプルなものだ。
 具体的にいうと,ゲーム内に登場する任意の静的,動的な3Dオブジェクトに対して,ゲームメカニクスには何の影響も及ぼさない,派手なパーティクルエフェクトを発生させるだけ。

 たとえば,クラシックなゲームでは,炎の表現として,板ポリゴン(ビルボード)に炎のアニメーションテクスチャを貼り付けたものを使っていることがある。これが新しいRTX Remixを使えば,炎ビルボードの周辺から,無数の火の粉が生じる表現が可能になるのだ。
 炎から舞い上がる火の粉のパーティクルや,飛び散った燃えかすのパーティクルが,地面やほかの3Dオブジェクトに衝突しながら弾むような,高度な表現も行える。
 各パーティクルは,光源としても扱うこともできるので,ほかのオブジェクトを照らすことも可能。それこそ,無数に飛び散った火の粉が,その瞬間だけ周囲を間接照明として明るく照らすような表現も行える。

 新しいRTX Remix Toolkitでは,パーティクルの発生源や衝突,発光,出現から消失までのライフタイムまでの設定や,パーティクルに作用する重力や風の強さの設定など,かなり高度に作り込めるようになっていた。
 以下の動画は,RTX Remixによるパーティクルシステムのデモとなる。改造元のゲームは「Half-Life 2」だ。


 ブースで来場者の注目を集めていたのは,パーティクルの発生源を,動体3Dオブジェクト,たとえば敵3Dモデルの構成ポリゴンのすべてに設定して,消失までのライフタイムを長めに設定した場合の実演だ。
 ゲームシーンを動き回る敵の体から,ボディと同色のパーティクルが出る様子は,まるで溶解しながら残像を放っているように見える。また,ライフタイムをかなり長めに設定したパーティクルは,いつまでもゲームシーンに残ってプレイヤーの視界を奪う。そうなると,まるでパーティクルエフェクトによって,攪乱攻撃をしているかのような状態になっていた。
 本来は,ゲーム性の改変を行えないはずのRTX Remixだが,パーティクルシステムに関しては,使いようによっては新しい遊びを創出,付与できるかもしれない。

 そのほかには,RTX Remixを使った,賞金総額5万ドルのMOD開発コンテスト「NVIDIA and ModDB RTX Remix Mod Contest」の最終受賞者が,gamescom 2025中に決定した。

NVIDIA and ModDB RTX Remix Mod Contestの受賞者
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 各賞の受賞者およびゲームタイトルは,以下のとおりだ。

  • 最優秀RTX MOD賞:Painkiller RTX Remix(Binq_Adams 作)
  • 最優秀RTX活用MOD賞:Painkiller RTX Remix(Binq_Adams 作)
  • 準優勝:Vampire:The Masquerade - Bloodlines - RTX Remaster(Safemilk 作)
  • 準優勝:I-Ninja Remixed(g.i.george333 作)
  • 最も完成度の高いRTX MOD賞:Painkiller RTX Remix(Binq_Adams 作)
  • コミュニティ選出RTX MOD賞:Call of Duty 2 RTX Remix of Carentan(tadpole3159 作)

 各タイトルの入賞作品の紹介および,各MODの入手方法は,NVIDIAのコンテスト公式サイトを参照してほしい。


NVIDIAのgamescom 2025特設Webページ(英語)

  • 関連タイトル:

    GeForce RTX 50

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