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Sapphireのグラフィックスカード「NITRO+ RX 9070 XT」を購入して,散財の神Lisa Suと「12V-2×6」地獄の入口で握手した
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印刷2025/07/08 17:05

テストレポート

Sapphireのグラフィックスカード「NITRO+ RX 9070 XT」を購入して,散財の神Lisa Suと「12V-2×6」地獄の入口で握手した

 1か月ほど前のことだ。フラッと秋葉原に行って,「『SAPPHIRE NITRO+ RX 9070 XT』(以下,NITRO+ RX 9070 XT)の店頭在庫があったら,それはLisa Su神(リサ・スー,AMDのCEO)の買えというお告げだ」と,考えながら散歩していたら,店頭在庫があったので購入した。サンキューLisa。

NITRO+ RX 9070 XTの製品ボックス。すっかり巨大なグラフィックスカードに見慣れてしまった我々である
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検証時のGPUは「GeForce RTX 5080」だったのだが,なんでGeForceにしなかったのかと言えば,信仰です
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 ただの衝動買いというわけではない。購入の理由としては,COMPUTEX 2025で「Radeon RX 9070 XT」(以下,RX 9070 XT)のグラフィックスメモリ増量版が発表されなかったこと。超解像技術「FSR 4」および,その次世代技術「FSR Redstone」(FSR 5?)の存在。そして,レイトレーシング性能の向上が主な理由になる。
 たとえば,4Gamer編集部で機材の検証をしていたとき,「モンスターハンターワイルズ」(以下,モンハンワイルズ)で「レイトレーシングの表現が露骨に違っているなぁ」と体感したことも影響している。朝日の表現が,ちゃんと眩しく感じられたのだ。
 新アーキテクチャはいつだって気持ちいい。

 Radeon RX 9070シリーズと「Radeon RX 9060 XT」が登場したことで,各社のRadeon RX 7000シリーズは在庫限りの状況になっている。
 本来はハイエンド市場向けの「Radeon RX 7900 XTX」(以下,RX 7900 XTX)は,製品によってはRX 9070 XTより安い場合もあるほど。RX 7900 XTXのほうがベンチマークスコアがいいケースも多く,実際,非常に迷った。

SAPPHIRE PULSE Radeon RX 7900 XTX GAMING OC
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 筆者の場合,「SAPPHIRE PULSE Radeon RX 7900 XTX GAMING OC」から,NITRO+ RX 9070 XTへの乗り換えになる。グラフィックスメモリ容量やメモリバス帯域幅などはスペックダウンになるが,ゲームはほとんどの場合,解像度2560×1440ドットでのプレイなので困っていない。
 また,解像度3840×2160ドットの4Kゲーミングでも,60fps程度であれば,グラフィック設定を高くしてもFSR 4でフォローが効く場合が多い。どうしてもグラフィックスメモリ容量が必要な用途の場合は,RX 7900 XTXを選ぶべきだ。そうでもないなら,レイトレーシング性能やFSR 4も考えると,Radeon RX 9070 XTのほうが,今日(こんにち)の選択としては無難だと言えよう。

 RadeonとGeForceの国内在庫も落ち着きはじめ,予算や環境に応じて購入するカードを選ぶタイミングという読者もいるだろう。本稿では,NITRO+ RX 9070 XTのインプレッションをお届けしつつ,FSR 4の効果や,PC筐体へのグラフィックスカード組み込みにあたって,注意しておきたいことなどを紹介したい。


NITRO+ RX 9070 XTの実機をチェック


 NITRO+ RX 9070 XTは,SAPPHIREのフラッグシップ的なNITROシリーズの製品だ。端的にいえば「冷える,静か,デカい!」の3拍子がそろったゲーマー向けモデルで,所有感を満たしてくれる。

NITRO+ RX 9070 XT
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 なお,GeForce RTX 50世代と比べ,RX 9070シリーズやRX 9060 XTは,性能と価格のバランスが良好であるため,「今回初めてRadeonを検討している」という読者もいるだろう。そんな人だと,「SAPPHIREってなに。さっぴれ?」となっているかもしれない。
 SAPPHIREことSapphire Technologyは,グラフィックスカード製品ではRadeonのみを手がけ続けているメーカーだ。ASRockやTul(PowerColor),XFXも同様である。長年Radeonシリーズを愛用している人にとって,新しいグラフィックスカードを検討するときは,まずSAPPHIREかASRock,PowerColorかXFXから選ぶ人が多いだろう。

PCケースに取り付けた状態
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MagniPlate
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 カードの公称本体サイズは330.8(W)×128.5(D)×65.68(H)mmで,3.2スロット分の幅がある。丸みはなく,四角い箱のような見た目であり,マグネット式で着脱可能なバックパネル「MagniPlate」が特徴的だ。

 NITRO+ RX 9070 XTの電源端子は,カードの側面ではなく,ヒートシンク内にある。MagniPlateでケーブルを隠せるようになっているため,横幅が短いPCケースにも向く仕様だ。
 また,電源コネクタは,Radeonではいまのところ珍しい部類に入る「12V-2×6(H++)」だ。これまでのPCI Express(以下,PCIe)補助電源ケーブルから,12V-2×6に変換するするアダプタも付属している。ちなみに,「12V-2×6を使いたい」というのも,今回のグラフィックスカード換装理由に含まれている。

12V-2×6にすれば,PCIe補助電源×3のごちゃごちゃから解放されるんですもの……(左)。MagniPlateを外すと,12V-2×6とARGBポートが顔を出す(右)
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 冷却機構に目を向けてみると,SAPPHIRE PULSE Radeon RX 7900 XTX GAMING OCに比べて全体に熱を運べているようで,システム各部の温度はマイルドに低下している。MagniPlateがいい仕事をしているとみるべきかもしれない。
 ファンは早い段階で回り始め,負荷の高いゲーム時には,1400rpm前後で回転する。それでも静音性は優秀なようで,室温28℃以下でゲームをしている範囲では,風切り音が気になったことはない。

よくある3連ファン付きクーラー搭載。ちなみに,SAPPHIRE NITRO+シリーズは,ファンのみのオプションパーツを販売しているので,ユーザーが手軽にファン交換できる。長く使うつもりの人なら,選択肢に入れやすい
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TriXXの「Nitro Glow」タブ
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 余談気味だが,NITRO+ RX 9070 XTのカラーLEDイルミネーションをマザーボード側で一元化管理したいときは,SAPPHIREの設定用アプリ「TriXX」の「Nitro Glow」タブから,「External Source」を選ぶといい。ただ,このあたりのユーザー向け情報がまったくないのは,不親切な部分といえる

 Radeon RX 9070 XT自体のベンチマークテスト結果については,既報のレビューを参照してもらうとして,NITRO+ RX 9070 XTの性能に関する雑感を述べておこう。

 NITRO+ RX 9070 XTは,レビューで取り上げた「Sapphire PURE Radeon RX 9070 XT」よりも,ゲームクロックとブーストクロックが高く設定されている。とはいえ,極端なベンチマークスコア差はない。
 ハードウェア情報確認アプリ「HWiNFO」で見ると,NITRO+ RX 9070 XTのブーストクロックは3.15〜3.2GHzとなった。消費電力は330W前後が多いが,ときおり360W前後になることもあるため,十分な出力がある電源ユニットを用意する必要があるくらいが,注意点だろうか。

 動作確認をかねて,「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」の結果を掲載しておく。テスト環境はのとおり。M.2 SSDが多いが,ゲームおよびベンチマークソフトは,Solidigmの「P44 Pro」にインストールしている。

表 テスト環境
CPU Ryzen 9 9950X3D(16C32T,定格クロック4.3GHz,最大クロック5.7GHz,L3キャッシュ容量32+32+64MB)
CPUクーラー be quiet! Dark Rock Elite
マザーボード ASUSTeK Computer ROG CROSSHAIR X670E EXTREME(AMD X670,BIOS 3104)
メインメモリ Micron Technology Crucial Pro 128GB Kit PC5-44800 DDR5 SDRAM 64GB×2<
グラフィックスカード SAPPHIRE NITRO+ RX 9070 XT(Radeon RX 9070 XT,グラフィックスメモリ容量16GB)
ストレージ Seagate FireCuda 530(PCIe 4.0 x4,1TB)
Lexar NM790(PCIe 4.0 x4,2TB)
Solidigm P44 Pro(PCIe 4.0 x4,2TB)
キオクシア EXCERIA SATA SSD(Serial ATA,480GB)
Samsung SSD 860 EVO(Serial ATA,1TB)
Western Digital WD Black SN750 NVMe SSD(PCIe 3.0 x4,1TB)
電源ユニット Corsair SF1000 Platinum ATX3.1(CP-9020257-JP,定格1000W)
PCケース Geometric Future Model 5 Vent Black(GF-M5-Vent-YBK)
OS Windows 11 Home
グラフィックスドライバ AMD FidelityFX Super Resolution 4 (FSR 4) Technical Preview 25.10.13.02(Adrenalin 25.6.1)

 ベンチマークテスト結果を画像で示そう。設定はいずれもウルトラプリセットで,レイトレーシングは「高」で,アップスケーリングは「FSR 4.0.1」を選択。さらに,フレーム生成をオフの状態とオンの状態でそれぞれ計測している。解像度は3840×2160ドットと2560×1440ドットの2パターンだ。

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3840×2160ドット,フレーム生成オフ
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3840×2160ドット,フレーム生成オン

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2560×1440ドット,フレーム生成オフ
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2560×1440ドット,フレーム生成オン

 2560×1440ドットでゲームをする分にはまったく不足なく,4K解像度で60fpsも「非常に快適」判定と,バランスが良く優秀だ。画質についても,FSR 4の存在が大きく,「見た目が悪くなるからオフにしたい」と思わせないあたりは,進化を体感できる。
 一方で,RX 7900 XTXと比べると,メモリバス帯域幅が狭くなった影響を感じる場合もあった。とはいえ,モンハンワイルズのテクスチャ読み込みのときくらいで,「Assassin's Creed Shadows」や「Stellar Blade」などは,引っかかることもなく遊べている。

※RX 7900 XTXは960GB/s,RX 9070 XTは640GB/s

Model 5 VentのBlackモデル
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 ついでに,筆者が使用しているPCケースであるGeometric Futureの「Model 5 Vent」についても,あまり言及されていない製品なので簡単に触れておこう。
 なお,Model 5シリーズにはいくつかあるが,違いはフロントが強化ガラスであるか,ファンを設置できるかだけで,あとは同じだ。

 Model 5 Ventは,電源ユニットをフロント側に置くタイプのPCケースだ。PCケース内に小物やフィギュアを飾れる,「ディスプレイボード」というユニークなギミックもある。

筆者のModel 5 Ventの内部
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 マザーボードはE-ATXサイズまで対応するが,E-ATXの場合,マザーボード右側のクリアランスがほぼなくなるので,ケーブルマネージメントが大変だ。実質,ATXサイズまでと考えたほうがいい。

 マザーボード裏側にファンを固定できるのも特徴なのだが,取り付ける必要はあまりない。VRMの温度が気になる場合,熱だまりを防ぐ目的でのファン設置ならアリだ。筆者の場合,余っていたNoctua製「NF-A12x15 PWM chromax.black.swap」を,600rpm固定で吸気用に設置している。
 ファンの有無によるVRMの温度変化だが,室温25℃,中負荷時において3.5℃前後下げられた。

マザーボード裏側に取り付けた吸気用のファン
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 取り付け可能な電源ユニットは,ATX仕様まで対応する。「奥行160mmまでOK」とあるのだが,ATX電源ユニットを取り付けると,PSUチェンバー内でのケーブル取り回しが厳しくなるので,SFX電源ユニットを選んだほうが楽だ。
 次の写真は,Corsair製のSFX電源「SF1000」をセットした状態である。もっと長いEPS電源ケーブルが必要で,余裕をもって取り回したい場合は,650mmのケーブルがほしい。

Model 5 VentにSF1000を取り付けた状態
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RX 9070 XTでFSR 4を使ってみる


 既報のとおり,FSR 4は,Radeon RX 9000世代向けの超解像&フレーム生成技術だ。グラフィックスカードを選ばないというFSR 3のメリットが消えてしまったが,FSR 3より,ややフレームレートは落ちるものの,ビジュアル的に優れるのが特徴だ。
 この違いは,FSR 3やFSR 2の画像を見たことがあれば,すぐ分かるほど差がある。また,タイトルにもよるが,FSR 3と比べて,実質的な最小フレームレートである1パーセンタイルフレームレートが伸びやすい印象が強い。

 ただ,次世代のFSR Redstoneになると,再びAIアクセラレータを利用しなくなり,GPUを選ばないというので(関連記事),「FSR 4はどういうことだよ」と言いたくなる。実際のFSR Redstoneがリリースされるまでは,何とも言えないが。

 話を現状に戻すと,FSR 4対応タイトルには,2025年6月時点では「Assassin's Creed Shadows」や「Marvel's Spider-Man 2」などが挙げられており,「2025年末には75以上のタイトルで利用できようになる」と,AMDは発表している。
 ゲームがFSR 3.1に対応していれば,機能をオーバーライドしてFSR 4を適用できるため,実質的な対応タイトルは多い。分かりやすいタイトルで言えば,モンハンワイルズおよび同ベンチマークになろうか(関連記事)。
 なお,FSR 4でオーバーライドする設定はデフォルトでは有効化されていないため,AMD Software: Adrenaline Editionで有効化する必要がある。

AMD Softwareの「ゲームタブ」>「グラフィックス」にある「FidelityFX スーパー解像度 4」というよく分からない翻訳がFSR 4のこと。これを有効にしておくだけでいい。ゲームタイトルごとに設定も可能だ。ゲームタイトルによってはFSR 3のままだが,ステータスがアクティヴになっていればOKだ
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「FidelityFX スーパー解像度 4」を有効にした状態でモンハンワイルズの設定を見ると,「FSR 4.0.1」と表示される
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 FSR 4は,スクリーンショットで見るよりも,実際に動いている映像を見るほうが分かりやすい機能なので,PCショップや量販店で確認できそうであれば,実際に見てほしい。FPS/TPSのように動きの激しいタイトルだと,違いが分からないことは多いのだが,モンハンワイルズほどのテンポなら,体感できるシーンは多いだろう。

 スクリーンショットになるが,モンハンワイルズにおける映像の違いを見てみよう。FSR関連設定で,アップスケーリングモードを「クオリティ」,アップスケールシャープネス「0.50」(デフォルト)にして,ラバラメイル装備の画像で比べてみた。
 胸元あたりのリボンや,腰部の装飾などの描写で違いが見てとれよう。左肩部のファーの描写は,とくに分かりやすい部分だ。

上からFSRオフ,FSR 3,FSR 4だ。FSR 4のファー表現は,FSRオフにかなり近い。また,背景のディティールにも違いがあるのだが,実機の映像で見たほうが分かりやすい
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アップの場合はファーだけでなく,左膝周辺でも傾向が分かる。ファーの傾向は先の引き絵と同じだが,左膝周辺はFSRオフの場合より,FSR 4のほうが質感が良好だ。フレームレートより映像美を優先するのであれば,FSRオフ,もしくはアップスケーリングモード:nativeを選んでもいいだろう。うちの子かわいい
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 ちなみにAMD Softwareは細かく設定できるのだが,とりあえず,「FidelityFXスーパー解像度4」と「Radeon Anti-Lag」を有効にするといい。フルスクリーンで表示するのであれば,「AFMF2」を試すのも二重丸だ。
 また,ビデオのアップスケールは,低ビットレートソースを見るときに効果を発揮している。RX 7900 XTXのときは,あってもなくてもいいくらいだった機能が,かなり使える存在になった。


グラフィックスカードを交換するときの注意点:PCケース


 現在の愛機やBTO PCから,グラフィックスカードだけ交換しようとする読者もいるだろう。その場合の,最新世代の環境における注意点をおさらいをしておこう。

NITRO+ RX 9070 XTはこの厚みである
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 グラフィックスカードは要求電力の高まりに合わせて巨大化が進んでいる。RX 9060 XTや「GeForce RTX 5060」,「GeForce RTX 5050」であればコンパクトな製品もあるが,RX 9070シリーズや「GeForce RTX 5070」以降の搭載カードは,基本的に大きい。
 Radeon RX 9070 XT搭載カードは,総じて巨大であるため,横幅や奥行,何スロット分の厚みが必要なのかを,事前に確認する必要がある。カード長は300mm前後が当たり前になっており,PCケースを選ぶ。

 自作PCの場合は,PCケースのスペックシートにグラフィックスカード取り付けに関わる詳細が書かれている場合が多いものだ。だが,BTO PCの場合はそうでもない。そのため,まずは現在のグラフィックスカードを取り付けた状態でカード長や幅,高さなどを計測して,余裕のあるなしを確認するといいだろう。なお,フロント側ファンがある場合は,その厚みのことも忘れずに。

上側に360〜420mmサイズの液冷ラジエータを取り付けられるPCケースなら,カードの長さを気にする必要はあまりない
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グラフィックスカードが巨大化したことで,GPUホルダー(ステー)も一般的になった。カードに付属していることもあるし,標準装備とするPCケースも増えている
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簡易水冷前提PCケースの場合は,さらに条件が厳しくなりがち。対応CPUクーラー高が168mm前後であれば,まず問題ないのだが
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 奥行(高さ)についても注意が必要だ。グラフィックスカードの大型化により,スリムなPCケースほど制約は増える。120mmであれば問題ない場合がほとんどだが,140mmに近い場合は,取り付けられても補助電源ケーブルをすんなり接続できなかったり,できてもPCケースを閉じられなれかったりといったインシデントと遭遇しがちだ。
 また,12V-2×6(H++)ケーブルは,根本付近での折り曲げを禁止しているものもあるため,最新環境になるほど気になる部分だ。

Seasonicの公開資料では,「コネクタから35mmは曲げるな」とある
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 スロットは,PCI Expressスロットを何本分の幅が必要かといったもので,2.5〜3.8スロット仕様など,製品によって異なる。PCケース背面にあるスロットで何本と確認できるので,今使っているグラフィックスカードの占有スロットを参考にするといい。
 グラフィックスカードだけを接続している場合なら,ミドルタワーサイズ以上のPCケースであればあまり気にしなくてもいいが,何かしらの拡張ボードを接続している場合は干渉しないかどうか,確認が必要だ。


グラフィックスカードを交換するときの注意点:電源ユニットとケーブル


 たとえば,4〜5年前に購入したBTO PCのグラフィックスカードを交換するとしよう。そんなときに注意すべきなのが電源ユニットだ。
 2022年に,グラフィックスカードによる電力要求の高まりに対応するために,20年振りとなるメジャーアップデートで電源規格「ATX 3.0」が登場した。それが2023年には,マイナーアップデート版の「ATX 3.1」がリリースされる。わずか1年でアップデートされた背景には,安全面で懸念があったためだ。

これ1本で済むのが大きい12V-2×6コネクタ
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 GeForce RTX 40シリーズ以降は,グラフィックスカード用の電源コネクタは,PCIe補助電源コネクタではなく12V-2×6(もしくは12VHPWR)が主流で,RadeonもRX 9000シリーズから,12V-2×6を採用するグラフィックスカードがいくつか登場している。とはいえ,PCIe補助電源コネクタタイプのカードもあり,電源回りの事情が変わっている。

 グラフィックスカードには,PCIe補助電源コネクタから12V-2×6に変換するアダプタが付属する場合がほとんどなので,電源ユニットは,そのままで済む場合もある。ただ,電源ユニットも本来は消耗品なので,予算が許せばセットで交換がおすすめだ。
 わずか1年で仕様が更新されたので,市場にはATX 3.0対応とATX 3.1対応電源ユニットが混在している状態だが,2024年以降発売の電源であれば,パッケージなどに「ATX 3.1」の文字があるので,それを目印にすればいい。

 話を規格に戻すと,ATX 3.1は,Intelが策定した電源ユニットの仕様である。大電力を要求するグラフィックスカードへの対応が大きな特徴だ。とくに,瞬間的な負荷への対応を必須としており,電源容量の最大200%もの瞬間電力(※いわゆるスパイク)に耐えることが求められる。
 たとえば,NITRO+ RX 9070 XTのスパイクは,580Wほどだ。よって,購入時の電源ユニットによっては,PCの起動に失敗したり,ゲーム中にとくに負荷が高いシーンに入ったりしたところで,PCが落ちる可能性がある(※Windowsの「イベントビューワー」に「KP41」が記録されることもある)。

 また,ATX 3.1の仕様には,PCIe 5.1(CEM 5.1)への対応も含まれている。PCIe 5.1はコネクタ側の仕様で,PCI技術の規格化団体である「PCI-SIG」が策定したものだ。規格の詳細は,PCI-SIG会員でなければ参照できないため,エンドユーザーによる確認は難しいのだが,上記のATX 3.1の仕様から読み取れる部分も多い。

こんな状態で通電しないようにするための規格。端子カバーの色を変更して,視覚的にも分かりやすくしているメーカーもある
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 ATX 3.1において,覚えておくべき重要なポイントは,以下の2点だ。

  • 不完全な挿し込みでは,グラフィックスカードに電力が供給されない。コネクタを差し込んだときに,クリック感やロックがあるかを確認すること
  • コネクタの根本でケーブルを曲げるのはご法度

 なお,コネクタの挿抜耐久回数は30回とされている。厳密には,「30回を超えたら端子に変形などないか確認しよう」という意味に近いが,一般的な運用であれば,気にする必要はないだろう。

 過渡期ならではの話になるが,12VHPWRと12V-2×6は同じコネクタであるが,仕様が異なる。ATX 3.1にアップデートする過程で,識別のため12VHPWRは「H+」,12V-2×6は「H++」という接尾辞が後付けされて事故を防げるようにしているのだが,12VHPWR(H+)に上位互換性はなく,12V-2×6(H++)は下位互換性がある。

 こうした事情が最新世代のグラフィックスカードにはあるため,電源ユニットもセットで交換したほうがいいわけだ。そこで,筆者も電源ユニットをCorsairのSF1000に変更したのだが,トラブルに出くわした。
 SF1000付属の以下のケーブルをNITRO+ RX 9070 XTに接続してみたが,いずれも通電しなかったのだ。

  • SF1000付属の12VHPWRケーブル
  • CP-8920292:プレミアム個別スリーブ Type-5電源ケーブルプロキット ブラックの12VHPWRケーブル(関連リンク

 どちらのケーブルも,Corsair公式Webサイトで「12V-2×6にも対応する」との説明がある。一方,NITRO+ RX 9070 XTに付属する「PCIe to 12V-2×6変換ケーブル」では通電して,各種ベンチマークテストも完走した。

 SF1000は,ATX 3.1公開以前に設計されたもので,登場時は「ATX 3.0対応」と明記されていたものだ。だが,その後,ATX 3.1の要件を満たしているとして,現在はATX 3.1対応になったという背景がある。ただ,グラフィックスカード付属の変換ケーブルで通電できているため,この点は関係ないだろう。

 次に示す写真のように,センスピン4本のうち,2本がジャンパ処理されているのが原因ではないかと考えた。「Sense0,Sense1」をGND(グランド)に落とす処理は,12VHPWR(H+)では許容されていた。しかし,12V-2×6(H++)では物理ピンによる接続確認を仕様上求めているので,ジャンパ処理では通電しないことがあるのだ。

左がNITRO+ RX 9070 XT付属の変換ケーブルで,右がSF1000付属の12VHPWRケーブルだ。コネクタ中央で顔を出しているセンスピン数に違いがあるが,Corsairは「規格から逸脱していない」と主張している
画像ギャラリー No.035のサムネイル画像 / Sapphireのグラフィックスカード「NITRO+ RX 9070 XT」を購入して,散財の神Lisa Suと「12V-2×6」地獄の入口で握手した

 12V-2×6(H++)準拠のグラフィックスカードが,センスピンの物理接触を厳密に確認する設計であるのなら,わずかな接触不良でも,給電を拒否する可能性がある。つまり,Corsairのケーブルで通電しないのは,規格どおりの挙動ではないかと考えたわけだ。

NITRO+ RX 9070 XTのスペックシートを見ると,12V-2×6(H++)と明記されている
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Corsairから送られてきたCP-8920323
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 そこで,Corsairのサポートに問い合わせてみたところ,電源ケーブルの交換になった(※センスピン回りの話はスルーされ続けた)。Corsairサポートから届いたものは,国内流通していない「CP-8920323」。写真を見てのとおり「12VHPWR」と書かれており,センスピンも
CP-8920292と同じくジャンパ処理されている。見たところ,CP-8920292と同じもののようだ。
 興味深いのは,Corsairから送られてきたCP-8920323では問題なく通電して,ストレステストも正常に完走したことだ。

 考えられる可能性としては,初期不良が挙げられる。ただ,2本連続というのはちょっと考えにくい。
 もうひとつは,筆者の所作に問題があったかもしれないこと。NITRO+ RX 9070 XTの場合,カード側コネクタがヒートシンクの奥底にあるため,電源ケーブル側のコネクタを,水平ではなくちょっと斜めから挿入しがちだ。そのときに,ピンかセンスピンに影響を与えたかもしれない。
 それでも,2本連続というのは,工業製品として考えるとなさそうではある。

作業中のメモ写真を見直したところ,ケーブルをコネクタ根元から35mm未満で曲げすぎているのも確認できた(左)。といっても抜挿回数は3回ほどなので,すぐに破損するとは考えにくい。Corsairから送られてきたCP-8920323は,正しいお作法重点で取り付けた(右)
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 なお,SF1000付属のケーブルを再度テストしてみたが,やはり通電しなかった。CP-8920292の12VHPWRケーブルは,交換の条件として物理的にケーブルをカットしたため,検証対象ではなくなっている。

 何ともスッキリしないが,初期不良か個体差,あるいは取り付けミスによる可能性が高く,確認作業で何度か抜き差しをしたことで破損したのが原因だろう。12V-2×6対応とされる製品同士でも,端子の差し込みやケーブルの張力に細心の注意を払うことが,トラブル回避の鍵といったところか。


自作する人もカードだけ交換する人も,電源ユニットの規格に目を向けよう


 まとめに入ろう。ゲームPCはBTO派の場合,性能不足を感じてきたら丸ごと買い替えるという人が多いと思う。だが,昨今のグラフィックスカードはやたらと高いので,BTOゲームPCの価格も上昇している。そのため,グラフィックスカードだけ交換を検討している人もいるだろう。
 筆者が遭遇したトラブルは,そうそうそう起きるものではないとしても,交換するときはグラフィックスカードだけでなく,電源ユニット周辺の規格にも目を向けて,検討するといい。

 一方,久しぶりにPCを組み立てる,もしくは自作PC初挑戦という人もいるだろう。この場合も,電源ユニット周辺の規格は変更があった直後なので,よく調べたほうがいい。最近の自作PCは,通電さえすれば,あとはなんとかなるものだ。

 Radeon RX 9000世代で,初めてRadeonを検討する人も多いと思われる。ドライバソフトのAMD Softwareは,お世辞にも分かりやすいとは言えないが,先述したとおり,とりあえずゲーム性能に関わる部分では,FSR 4とAnti-Ragを有効にする程度からのスタートでいい。
 AMDのグラフィックスドライバは,通例だと登場から1年くらいするとよくなっていたのだが,Radeon RX 9000世代では,初手から完成度の高いものが提供されている。ゲームに没頭するには,ちょうどいいくらいの出来映えなので,グラフィックスカードの買い換えを検討している人は,ぜひRadeon RX 9000世代に挑戦してみてほしい。

SapphireのNITRO+ RX 9070 XT製品情報ページ

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