
ニュース
「Radeon RX 9060 XT」の性能はPS5 Proを大きく上回る。AMDが発表した新GPUと新CPUはどのようなものか
![]() |
本稿では,4Gamer読者も関心がありそうなGPUとCPUの話題を見ていこう。
Radeon RX 9060 XTは16GBモデルが狙い目か
![]() |
そんな熱い視線が集まる中で発表となったのが,Radeon RX 9060 XTだ。一部に筆者推測値を含んだスペック表を以下に示そう。
![]() |
Radeon RX 9060 XTの理論性能値は,約26 TFLOPS。Xbox Series XのGPUに比べると2倍以上,PlayStation 5 ProのGPUよりも10 TFLOPS高いといったところで,ミドルクラス市場向けGPUとしては妥当といったところ。
ただ,Radeon RX 9070シリーズに対してメモリインタフェースが128bitに減っているので,メモリバス帯域幅は320GB/sとなっている。これはPlayStation 5の448GB/sをだいぶ下回る。
ここから見えてくるRadeon RX 9060 XTの性能は,4K解像度でのゲームプレイを楽しむには無理があり,「FSR」系の超解像技術を使えば,ギリギリ4K表示が楽しめるGPUといったところだ。
![]() |
これまでのAMDのGPUビジネスの流れを踏まえると,Radeon RX 9060 XTは,より低クロックに動作させるノートPC版もリリースされることだろう。
Radeon RX 9060 XTの北米市場における価格は,16GBモデルが349ドル前後(約5万円,税別),8GBモデルが299ドル前後(約4万2800円)とのこと。世界市場における発売日は6月5日の予定だ。
日本市場価格は不明だが,Radeon RX 9070 XTが14万円前後で販売されていることを考えると,Radeon RX 9060 XTの16GBモデルは,7万5000円前後あたりになるだろうか。
いずれにせよ,2025年以降のPCゲームが要求するであろうスペックを考慮すると,16GBモデルを選択したほうがよさそうだ。
Ryzen AI Max+シリーズの性能が予想外に高いこと
今回のプレスカンファレンスで,AMDがさりげなく,だが力強くアピールしていたのが,「Ryzen AI Max+」シリーズ(Strix Halo)だ。
Ryzen AI Max+シリーズは,最近やっと搭載ノートPC製品の販売が始まったところだが,なぜかAMDは,これまであまり強くアピールしてこなかった。それが今回のプレスカンファレンスでは一転して,IntelのCore Ultra 200(開発コードネーム Lunar Lake)シリーズに対する性能差をアピールしてきたのだ。
![]() |
実は,このRyzen AI Max+シリーズは,2024年に発表となった「Ryzen AI 300」シリーズ(開発コードネーム Strix Point)とは,かなり別物のプロセッサに仕上がっている。そもそも半導体ダイ自体,まったくの別物だ。
「Max+」付かないRyzen AI 300シリーズのCPUは,Zen 5とZen 5cの2タイプのコアで構成しており,たとえば「Ryzen AI 9 HX 375」であれば,4基のZen 5と8基のZen 5cコアを組み合わせている。
Zen 5cとは,L2キャッシュメモリ容量が小さいZen 5で,Intel製CPUで言うところの「E-core」的な,バックグラウンドプロセスの担当を想定したCPUコアだ。ただ,IntelのE-coreとは異なり,「Hyper Threading」(同時マルチスレッド)には対応している。
Max+が付かないRyzen AI 300シリーズの内蔵GPUは,RDNA 3.5系の「Radeon 800M」シリーズで,実質的には「Radeon RX 7000」シリーズに属する。理論性能値は,Ryzen AI 9 HX 375のGPUである「Radeon 890M」が,Compute Unit(以下,CU)16基の構成で約12 TFLOPS。おおむねXbox Series X程度の性能といったところか。
![]() |
Ryzen AI Max+シリーズの内蔵GPUは,「Radeon 8000S」シリーズだ。型番が4桁に増えているものの,中身はRadeon 800Mシリーズと同じRDNA 3.5世代なので,やはりRadeon RX 7000系となる。
ただ,Radeon 8000SのGPUは規模が大きい。Ryzen AI Max+ 395のGPUである「Radeon 8060S」は,CU 40基構成で,理論性能値は約30 TFLOPSにもなる。PS5の約3倍,PS5 Proの約1.8倍にもる。ちょっとした単体GPUの性能だ。
それに加えてRyzen AI Max+シリーズでは,理論性能値だけでなく,後述するメモリ性能も相応に高いおかげで,Ryzen AI 300シリーズと比較しても,グラフィックス性能は理論性能値の比率以上に高くなる。
今回のプレスカンファレンスでAMDは,この点を強調していた。
ちなみに,Ryzen AI Max+シリーズのパッケージは,Appleの「Apple M」シリーズと同じで,LPDDR5Xメモリをパッケージ上に搭載している。しかも,驚いたことに,このメモリは,なんとCPU側と256bitのインタフェースで直結されているのだ。つまり,「Apple M Pro」シリーズに近いメモリバス帯域幅を実現している。
なお,Ryzen AI Max+シリーズが搭載するメモリは,LPDDR5X-8000なので,そのメモリバス帯域幅は256GB/sに達する。この値は,エントリー市場向け単体GPUのメモリバス帯域幅に匹敵するほどだ。
Ryzen AI 300シリーズの場合,今までのCPUのように,メインメモリは一般的なデュアルチャネル構成の64bit×2,インターリーブ式128bitインタフェースなので,実質的なメモリアクセス性能は,64bitバス+α程度しかない。しかし,Ryzen AI Max+シリーズのオンパッケージメモリは,256bitインタフェースそのものの性能が出るため,Ryzen AI 300シリーズのメモリアクセス性能と比べて4倍(≒直結256bit÷インターリーブ64bit)に近い実効性能が得られるはずだ。
一方で,Intelの「Core Ultra 9 288V」が採用しているオンパッケージメモリは,128bitインタフェース直結である。これもそれなりに優秀なのだが,Ryzen AI Max+395は256bitだ。今回のプレスカンファレンスでAMDは,「Ryzen AI Max+395の実効性能は,Core Ultra 9 288Vの3倍もある」とアピールしていたが,一定の説得力はあると,筆者は考えている。
ワークステーション向けGPUにもRDNA 4世代が登場
![]() |
これらについては,発表以上のことは分かっていないので,本稿では軽く取り上げておこう。
ワークステーション向けのThreadripper PRO 9000シリーズは,最上位モデルの「Ryzen Threadripper PRO 9995WX」が96コア192スレッド仕様となっている。
![]() |
対応ソケットは,Zen 4世代のThreadripperで使われていた「sTR5」のままで,UEFI(BIOS)をアップデートすれば,前世代のマザーボードをそのまま流用できる。PCI Expressは5.0となり,総レーン数は128。メインメモリはDDR5-ECCの8チャンネル仕様で,メモリクロックは最大6400MHzまで対応するという。
![]() |
写真上にあるThreadripper 9980X(32C64Tモデル)のパッケージと,Threadripper Pro 9995WX(96コア192スレッドモデルのパッケージを見比べると,Threadripper 9980Xは,左右2つずつ,合計4基のCPUダイを積んでいないことが分かる。Zen 5のCPUダイ1基あたりは8コア16スレッド仕様だ。
一方,ワークステーション版GPUのRadeon AI PRO R9700は,GPUコア自体は「Navi 48」である。これは,すでに発売済みのRadeon RX 9070 XTと同じものだ。一番の違いは,グラフィックスメモリの容量にある。Radeon AI PRO 9700は,Radeon RX 9070 XTの2倍となる32GBのGDDR6メモリを搭載しているのだ。
![]() |
Threadripper 9000シリーズは,PCI Express 5.0インタフェースを128レーンも備えているので,1枚のマザーボードに最大4基のRadeon AI PRO R9700を搭載して,総グラフィックスメモリ容量128GBのパーソナルなAI開発環境を構築できる。
昨今は,AMDに限らず,AIを開発するためのシステム提案がホットになっていることを,強く感じる製品だ。
AMDのCOMPUTEX 2025特設Webページ(英語)
4Gamer.netのCOMPUTEX 2025特集ページ
- 関連タイトル:
Radeon RX 9000
- 関連タイトル:
Ryzen(Zen 5)
- この記事のURL: