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そうだ アニメ,見よう:第243回は劇場版「チェンソーマン レゼ篇」。謎の少女レゼとデンジのボーイミーツガールを描いた,ひと夏の恋物語
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2022年10月から12月にかけて放送された,藤本タツキ氏原作のTVアニメ「チェンソーマン」。その最終回から続くエピソード「レゼ篇」が2025年9月に劇場版として上映を開始し,初日で観客動員数27.2万人,興行収入4.2億円を突破。その後も順調に数字を伸ばしている。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第243回のタイトルは,劇場版「チェンソーマン レゼ篇」。制作はMAPPA,脚本は「進撃の巨人」や「ガチアクタ」の瀬古浩司氏が担当。監督はTVアニメ版から変更され,「夜ノヤッターマン」や「ブラッククローバー」の𠮷原達矢氏が務めている。なお,本稿には内容に関するネタバレが含まれているので,未視聴の人は注意してほしい。
劇場版「チェンソーマン レゼ篇」
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公安のデビルハンターであるマキマ(CV:楠木ともり)に保護されたデンジは,彼女の管理下に入り,公安対魔特異4課に所属することになった。
4課の仲間であり,先輩の早川アキ(CV:坂田将吾)や「血の魔人」パワー(CV:ファイルーズあい)との同居を始めたデンジは,その力を使って「コウモリの悪魔」や「永遠の悪魔」「サムライソード」といった強敵を打倒していく。
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そんな中,憧れのマキマとの“映画巡りデート”を堪能し浮かれていたデンジは,急な雨に見舞われ,雨宿りをしていたところで“レゼ”と名乗る少女(CV:上田麗奈)と出会う。近所のカフェ「二道」で働いているという彼女は,デンジに優しく微笑みかけた。
「俺は俺のことを好きな人が好きだ!」
この出会いをきっかけに,2人は急速に仲を深め,デンジの日常は大きく変わり始めていく。
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謎の少女との“ボーイミーツガール”
「レゼ篇」は,原作漫画の第39話から第51話までをアニメ化したもので,単行本1巻分程度のショートストーリーとなる。TVアニメ第12話のラストにチラ見せで登場した謎の少女は,彼女だったというわけだ。
この「レゼ篇」では,レゼとデンジのひと夏の“ボーイミーツガール”が描かれる。この前のエピソードである「サムライソード篇」でバトルが多かった反動から,恋愛モノが描きたかったと原作の藤本氏は語っている。
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2000年に公開されたアニメ映画「人狼 JIN-ROH」から着想を得たとされており,そのほかにも「台風クラブ」(1985年公開)や「シャークネード」シリーズ(2013年公開)など,映画好きの藤本氏ならではのオマージュが随所に盛り込まれている。
ちなみに,「人狼 JIN-ROH」がどんなお話かというと,政府の機関である「特機隊」の隊員と謎の少女の,はかなくも危険な恋模様を描いている。原作・脚本を押井 守氏が手がけており,Netflixなど各種配信サービスでも視聴できるので,気になる人はチェックしておくといいだろう。
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レゼの魅力にメロメロ
肝心の映画本編はというと“圧巻”の一言に尽きる。前半のデンジとレゼの瑞々しいラブロマンスでは,レゼに翻弄されるデンジの心情が観ているこちらにも伝わってきて,彼のドキドキをダイレクトに味わえた。
夏の青空や夜のプール,祭りの夜の花火など,ビビッドな色彩に満ち溢れた演出も,2人の恋を盛り上げるのに一役買っている。先日公開された再構成版の「チェンソーマン 総集篇」でも監督を務めた𠮷原氏は,本作を手がけるにあたって,年頃の男女の芝居やセリフの間合いに特に配慮したという。
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何よりレゼが魅力的すぎた。デンジでなくても男なら誰でもコロッといってしまいそうな笑顔や仕草,言動に参ってしまう人も多いはず。原作でも藤本氏は自分が好みだと思ったキャラクターを描いたとしているが,レゼ役を演じた上田麗奈さんの熱演も相まって,アニメ版はさらに魅力度がアップしている。レゼのグッズはどこで売ってるのだろうか……。
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そして,穏やかな恋愛描写から一転し,物語は後半の激しいバトルパートへ突入する。PVでも一部確認できるが,戦闘シーンの迫力は圧倒的だ。ネタバレを避けるため詳細は控えるが,デンジのオトモとなるサメの魔人ビーム(CV:花江夏樹)が思いのほか活躍したとだけ言っておこう。
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EDは宇多田ヒカルさん×米津玄師さんのコラボ曲
また,オープニングやエンディングを含めた劇伴曲が素晴らしかった。米津玄師さんの主題歌「IRIS OUT」や,宇多田ヒカルさん×米津さん奇跡のコラボエンディング曲「JANE DOE」にもグッときたが,なによりTVアニメ第3話のエンディングテーマである,マキシマム ザ ホルモンの「刃渡り2億センチ(全体推定70%解禁edit)」が挿入された場面の盛り上がりは特筆もの。できれば,劇場の大音響で体感することをおすすめする。
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原作で話題となった藤本氏のオリジナル楽曲「ジェーンは教会で眠った」も上田さんの歌唱で堪能でき,ファンにはうれしいプレゼントと言えそうだ。なお,劇場版のサウンドトラック「CHAINSAW MAN THE MOVIE: REZE ARC original soundtrack -summer's end-」もリリースされている。
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「レゼ篇」は,ヒロインの魅力と切ない展開で原作ファンの間でも人気の高いエピソードだ。マキマに思いを寄せながらも,レゼに惹かれていくデンジの揺れる心情や,本心を秘めつつ彼に向き合うレゼの姿など,登場キャラクターの複雑な感情が丁寧に描かれている。悪魔が跋扈する過酷な「チェンソーマン」の世界観の中では,異色のラブストーリーとなる。
果たして,デンジとレゼの恋はどんな結末を迎えるのか,ぜひ自分の目で確認してほしい。まだ,TVアニメ「チェンソーマン」を観ていない人は,前述した「総集編」のほかに,特別映像「10分で振り返るアニメ『チェンソーマン』」が公開されているので,劇場に足を運ぶ前に視聴しておこう。
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そうだ アニメ,見よう:第170回はMAPPA渾身の注目作「チェンソーマン」。悪魔を身に宿した少年が暴れ回るダークヒーローアクション

「そうだ アニメ,見よう」第170回は,“チェンソーの悪魔”を身に宿した少年・デンジの活躍を描いた「チェンソーマン」。制作はMAPPA,脚本を「進撃の巨人」などの瀬古浩司氏が担当。監督は「呪術廻戦」では絵コンテ・演出、「劇場版 呪術廻戦0」では原画を手掛けた中山 竜氏が務めている。
「劇場版 チェンソーマン レゼ篇」公式サイト
「劇場版 チェンソーマン レゼ篇」公式X
放映データ |
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2025年9月19日全国公開 |
キャスト | |
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デンジ:戸谷菊之介 | |
ポチタ:井澤詩織 | |
マキマ:楠木ともり | |
早川アキ:坂田将吾 | |
パワー:ファイルーズあい | |
東山コベニ:高橋花林 | |
ビーム:花江夏樹 | |
暴力の魔人:内田夕夜 | |
天使の悪魔:内田真礼 | |
岸辺:津田健次郎 | |
副隊長:高橋英則 | |
野茂:赤羽根健治 | |
謎の男:乃村健次 | |
台風の悪魔:喜多村英梨 | |
レゼ:上田麗奈 |
スタッフ |
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原作:藤本タツキ(集英社「少年ジャンプ+」連載) |
監督:𠮷原達矢 |
脚本:瀬古浩司 |
キャラクターデザイン:杉山和隆 |
副監督:中園真登 |
サブキャラクターデザイン:山﨑爽太,駿 |
メインアニメーター:庄一 |
アクションディレクター:重次創太 |
悪魔デザイン:松浦 力,押山清高 |
衣装デザイン:山本 彩 |
美術監督:竹田悠介 |
色彩設計:中野尚美 |
カラースクリプト:りく |
3DCGディレクター:渡辺大貴,玉井真広 |
撮影監督:伊藤哲平 |
編集:吉武将人 |
音響監督:名倉 靖 |
音楽:牛尾憲輔 |
配給:東宝 |
制作:MAPPA |
主題歌 : 米津玄師 「IRIS OUT」 |
エンディング・テーマ: 米津玄師, 宇多田ヒカル「JANE DOE」 |
(C) 2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト (C)藤本タツキ/集英社 |
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