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「GeForce RTX 5080」よりもちょっとパワフルになったクラウドゲームサービス「GeForce NOW」の新機能を体験してきた
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このイベントでは,8月19日に発表されたばかりの新要素を,いち早く体験できるだけでなく,NVIDIAの技術スタッフによる新要素の技術解説も行われた。
本稿では,イベントの様子をレポートする。
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クラウドゲームサービス「GeForce NOW」がBlackwell世代に刷新。DLSS 4をクラウドゲームで使えるように

欧州時間2025年8月18日,NVIDIAは,gamescom 2025に合わせて,クラウドゲームサービス「GeForce NOW」や,ゲーマー向けサポートAI「G-Assist」などのアップデートを発表した。GeForce NOWは,サーバー側GPUがGeForce RTX 50と同じBlackwell世代になり,DLSS 4や5K解像度表示を利用できるそうだ。
GeForce NOWで使えるようになったBlackwell GPUは,RTX PRO 6000 Blackwellがベース
基本的な話題は既報のとおりだが,まずはおさらいを兼ねて,2025年9月から,GeForce NOWがどのように変わるのかを簡単に整理しておこう。
GeForce NOWはクラウドゲームサービスであるが,正確には,ゲーム用途にフォーカスした仮想マシンサービスである。NVIDIAのクラウドサーバー上にあるGeForce搭載仮想マシンをレンタルして,ゲームをプレイするサービスだ。
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PCゲーマーなら周知のとおり,最新のGeForce GPUは,2025年にGeForce 50シリーズが登場したばかり。2025年9月からNVIDIAがGeForce NOWで提供する仮想マシンは,「GeForce RTX 5080」相当へとアップグレードされるのだ。
なお,GeForce RTX 5080相当にアップグレードされるのは,GeForce NOWの最上位プランである「Ultimateメンバーシップ」(以下,Ultimate)に限られる。
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月額料金そのままで,GPUが新世代にアップグレードされるのは,仮想マシンを用いたクラウドゲームサービスならではの魅力だろう。新作ゲームをプレイするときの映像品質を,その時代の最上位クラス設定で楽しめるのは,PCゲーマー冥利に尽きる。
さて,新しいGeForce NOWについてNVIDIAは,「GeForce RTX 5080相当の性能を得られる」とアピールしているが,相当という言葉に引っかかった人もいるだろう。
これはデメリットではなく,むしろプラス要素と理解したほうが適切だ。ユーザーが利用できるGPUのグラフィックス性能指標であるFP32理論性能値は,最大で約62 TFLOPSへ引き上げたと,NVIDIAは公表している。この性能について,説明を担当していたNVIDIA担当者は,「PlayStation 5 Proの3倍以上に相当する」と鼻息も荒かった。
ちなみに,この理論性能値は,GeForce RTX 5080の56 TFLOPSよりも,10%ほど高い。また,グラフィックスメモリ容量は,GeForce RTX 5080が16GBなのに対して,GeForce NOWのUltimateでは,最大48GBも利用できるというから驚きだ。このメモリ容量は,GeForce RTX 50シリーズ最上位である「GeForce RTX 5090」の容量32GBを超えている。
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RTX PRO 6000 Blackwellは,GB202で有効化されているCUDAコア数が,GeForce RTX 5090の21760基よりも10%多い,24064基へと増やされたGPUである。その理論性能値は約125 TFLOPSで,グラフィックスメモリ容量は96GBである。
GB202のフルスペック状態におけるCUDAコア数は,24576基だ。つまりRTX PRO 6000 Blackwellは,GB202コアをほぼすべて開放したGPUと言っていい。
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RTX PRO 6000 Blackwellの演算性能である125 TFLOPSと,メモリ容量の96GBをそれぞれ2で割ると,今回のGeForce RTX 5080相当の仕様である62 TFLOPSと48GBに一致する。
あくまでも筆者の推測だが,新しいGeForce NOWのUltimateは,RTX PRO 6000 Blackwellを2ユーザーで共有するような仮想マシン構成なのだろう。
ちなみに,これまでGeForce NOWのサーバーGPUは,Ada Lovelace世代の「NVIDIA L40 GPU」だったという。
この点について,NVIDIA技術スタッフに,「GeForce NOWのアップデート後,先代のL40はどうなるのか。破棄されるのか」と半分冗談で聞いてみたところ,「一部は置き換えられるだろうが,大半はそのままとなるだろう」という答えが帰ってきた。
というのも,GeForce NOWでGeForce RTX 5080相当のサーバーGPUを利用できるのは,Ultimateのユーザーに限定され,PerformanceメンバーシップやFreeメンバーシップのユーザーは,従来と同じサーバーしか使えないのだ。
またNVIDIAは,ワークステーション用途の仮想マシンサービス「NVIDIA RTX Virtual Workstation」も展開している。先代GeForce NOWを支えたL40 GPUの一部はそうした用途への割り当てが行われることもありうるだろう。
GeForce NOWの新しい高画質モード「CQS」
新しいGeForce NOWでは,「Cinema Quality Streaming」(以下,CQS)と呼ばれる,高画質伝送モードが利用できるようになった。
NVIDIAが発表時に示したスライドでは,さまざまな項目が書かれていたので,筆者はてっきり,これらの要素すべてを利用できるストリーミングモードなのかと思ったのだが,そうではないらしい。
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今回,CQSのデモコーナーでは,2台のMac miniをGeForce NOWのクライアントにして,従来の画質モードとCQSモードの比較デモを披露していた。ゲームは「黒神話:悟空」で,森の中のシーンで比較をしている。
NVIDIAの担当者によると,これまでの画質モードでは,映像中の暗い領域は目立たないという理由で,ビットレートが低くなりやすい制御が入るという。一方のCQSモードでは,そうならないように制御しているそうだ。
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画面に近寄って,それぞれの画質を見比べてみると,暗がりの岩のディテールに,大きな違いが出ていることに気付く。違いが分かりやすい部分を動画にしてみた。違いがあることは,同意してもらえるだろう。
次の写真は,それぞれの画質モードにおけるストリーミング中のステータスだ。
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それぞれのステータス画面を見て,気づいたことがあった。従来のストリーミングモードは,ビデオコーデックが「AV1」なのに対して,CQSのコーデックは「H.265」だったことだ。
また,従来型のデモは,輝度解像度はフルだが,色解像度が「YUV420」で4分の1と低い。一方,CQSのデモは,輝度解像度も色解像度も両方フルの「YUV444」だ。
CQSモードは,前掲のスライドにある「AV1+RPRモード」がCQSモードの最重要ポイントだと考えていたのだが,どうやら違うらしい。
NVIDIA担当者によると,「悟空の場合,AI Video Filterの制御の最適化を工夫して,この画質に追い込むことができた。ゲームごとに適切なエンコード設定チューニングを行うことは,とても大切なことだと考えている。それと,AV1はコーデックの圧縮効率でとても優れているが,それを採用することだけが,CQSを成立させるための絶対要件ではない」とのこと。
どうやらCQSは,スライドにあった要素をすべて満たす必要はなく,クライアント側との組み合わせで,柔軟に変えるようだ。
そうなると,Mac miniは,AV1コーデックのデコードに対応しているので,従来の画質モードではAV1を使っているのに,なぜCQSモードでは,H.265を使うのかという疑問が出てきた。
この点について担当者は,CQSでAV1コーデックを使う場合,スライドにもあるAV1+RPRモードを使うのだが,新しいGeForce NOWでは,まだすべてのハードウェアに対する動作検証が済んでいないため,今回のデモではこうなっているとのことであった。
なお,AV1+RPRモードとは,ストリーミングビデオのビットレートが急変しても,AV1デコーダがキーフレームへの参照方法を柔軟に適応させることで,デコード映像の画質が急変するのを抑制する仕組みである。
AV1の「Reference Picture Resampling」(RPR)モードは,AV1デコーダを内蔵するプロセッサでの対応が進んでいるそうだ。GeForce NOWのCQS対応クライアントも,今後増えていく見込みだとのこと。
ちなみに,現状でAV1+RPRモードに対応しているプロセッサは,PC向けGPUでは,GeForce RTX 50/40/30シリーズの「NVDEC」のほか,AMD製GPUはRDNA 3世代以降で,IntelはIntel Arc系とCore Ultraの内蔵GPU,Appleも「M3」プロセッサ以降で,AV1 RPRモードに対応しているそうである。
ただ,NVIDIA担当者は,「CQSは,従来と比べれば非常に高画質になったが,ローカルPCでプレイする体験を置き換えるものではない。CQSモードも,1ピクセル単位のディテールや陰影の表現力については,ローカルでのプレイ映像には,まだ及ばない」とも述べていた。
GeForce NOWの進化は止まらない
新しいGeForce NOWでは,対応する映像解像度とフレームレートが拡充されたこともトピックとなっている。デモブースでは,この点に関する展示がとくに多かった。
まず解像度は,最大5Kにまで広がった。しかも,アスペクト比16:9の5120×1440ピクセルだけでなく,アスペクト比21:9で5120×2160ピクセルのウルトラワイドにも対応したのだ。
ブースでは,LG Electronics製のゲーマー向け湾曲型5K有機ELディスプレイ「45GX950A-B」を用いて,「インディ・ジョーンズ/大いなる円環」を動かすデモを披露していた。ストリーミングモードはCQSである。映画を題材にしたゲームを,CQS,つまりシネマ品質モードでプレイできるのは感慨深い。
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対応する最大フレームレートは,1920×1080ピクセルで360fps,2560×1440ピクセルで240fpsまで引き上げられた。
ブースのデモでは,フルHD/360fpsで表示している「Overwatch 2」で,マウスクリックをしてから,攻撃エフェクトが画面に描画されるまでのシステム遅延時間を測定できた。用いた遅延計測器は,NVIDIAの「LDAT」だ。
筆者も試してみたところ,実測値は20ms台なのを確認できた。
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フレームレート(≒リフレッシュレート)を上げれば上げるほど,ゲームループ1回分の時間は短くなるので,入力遅延もどんどん減っていく。このデモでは,クラウドゲームのフレームレートもディスプレイも360fps(360Hz)であったが,GeForce NOWを体験するにあたっては,必ずしもそれぞれを合わせる必要はない。
ユーザー側のディスプレイが60fpsであっても,クラウドゲームのフレームレートを360fpsに設定すれば,サーバー側でのゲームループが360fpsになる。目の前の映像が60fpsであっても,ゲームループ 1回分の時間は60fps時よりも6倍速い。
つまり,ディスプレイのリフレッシュレートとは無関係に,システム遅延時間を360fps相当にできるのだ。これが,GeForce NOWにおける低遅延化のメカニズムである。
ユーザー側のクライアントは,届いた最新のフレームだけを表示して,表示が間に合わないフレームはすべて破棄するだけ。性能の低いPCでローカルプレイするよりも,サーバー側が高性能なGeForce NOWでプレイしたほうが,低遅延になることがあるのは,こうした理由からだ。
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NVIDIAの担当者は,今後,GeForce NOWで目指したいのは,音声や音響面での低遅延と述べていた。タイムリーなことに,セガが開発中の「フォグゲーミング」において,最新の技術テーマが音声,音響面の低遅延化だという話を思い出す。
今後のGeForce NOWの進化は,もしかしたらサウンド関連になるのかもしれない。
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NVIDIAのGeForce NOW公式Webページ
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