
レビュー
最強スペックのeスポーツプロ向けマウス。約3万円の価値は?
Razer Razer DeathAdder V4 Pro
eスポーツプロ向けという本製品をレビューしていこう。
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●目次
DeathAdder V4 Proの外観
DeathAdder V4 Proは,左右非対称形状の右手用ワイヤレス&ワイヤードマウスだ。
公称本体サイズは,68(W)×128(D)×44(H)mmで,前世代の「Razer DeathAdder V3 Pro」と変わらない。DeathAdderは,このサイズが最適と感じるプロゲーマーが多いのだろう。
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実測重量は約56gで,DeathAdder V3 Proより約3gほど軽くなっている。正直なところ,もう10gほど軽くなっていれば驚きもあったと思うが,数グラム程度だと,「こんなものか」といったところか。
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ボタン構成は,左右メインボタンとセンタークリック機能付きスクロールホイール,左サイドボタンが2つの計5ボタンがある。
底面にも,電源兼DPI切替ボタンがあるので,カスタマイズ可能なボタン数は6つだ。ゲーム用途として必要最低限の構成に絞っていると言えよう。
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スクロールホイールの幅は,実測約8mmで,内側の7mmにラバー素材の滑り止め取り付けられている。
このホイールは24ノッチで1回転する仕様だ。表面にある突起がいい感じに指先にかかるので,指を軽く前後移動させるだけでホイールを回せる。操作しやすい。
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左側面は,親指を配置しやすいように窪んだ形状をしており,左右から指で挟みやすくなっている。
2つのサイドボタンは,どちらも長さ約19mmで幅は約10mmだ。サイドボタンは,本体側面から約1.5mmほど突き出しているため,親指だけでもしっかりと存在を感じられるので,操作ミスをすることはあまりないだろう。
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底面部には前後方向とセンサーホールの外周に,PTFE製のマウスソールが計3枚貼り付けられていた。前後のソールは非対称形状だ。
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センサーホールの左側には,先述した電源兼DPI切替ボタンがある。ボタンを押すとDPIが切り替わり,長押しすると電源が切れる仕組みだ。
DeathAdder V4 Proには,専用のUSBワイヤレスアダプタが同梱されている。USBワイヤレスアダプタは,半球状という変わった形をしており,前面に3つのLEDインジケータが並んでいる。
後述するが,このインジケータは,設定ソフトでどういった情報を表示させるかを設定可能だ。
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サイズは,DeathAdder V4 Proのほうがわずかに大きいが,重量は約4g軽い。センサーの感度周り,とくにトラッキング解像度(DPI)とポーリングレート(USBレポートレート)は,ほぼ同じだ。
どちらも外見に大きな違いはないのだが,両側面にあるグリップを増すための窪み具合は,若干異なる。あくまで筆者の所感なのだが,PRO X SUPERLIGHT 2 DEXのほうが窪みが強く感じ,DeathAdder V4 Proはやや太目という印象を受ける。
スクロールホイールに関しては,DeathAdder V4 Proのほうがやや回転時のノッチ感が少ない程度で,使用感にあまり差はない。
結局のところ,どちらも似通ったマウスなので,実際にデモ機を置いてある店頭で触って,自分に合うほうを選ぶのがいいだろう。
基本仕様 | 光学センサー搭載,独自方式ワイヤレスおよびワイヤード接続型 |
---|---|
搭載センサー | Razer Focus Pro 45K Optical Sensor Gen-2 |
主要ボタン数 | 最大6(左右メイン,センタークリック機能付きスクロールホイール,左側面×2,底面) |
トラッキング速度 | 900 IPS |
最大加速度 | 85G |
トラッキング解像度 | 最大4万5000 DPI |
ポーリングレート(USBレポートレート) | 最大8000Hz |
リフトオフディスタンス | 未公開,調整可能 |
オンボードフラッシュメモリ | 搭載 |
LEDイルミネーション | 非搭載 |
公称本体サイズ | 68(W)×128(D)×44(H)mm |
公称本体重量 | 約56g |
マウスソール | PTFE |
ケーブル長 | 約1.2m |
対応OS | 未公開 |
直販価格 | 2万8980円 |
保証期間 | 2年間 |
どの持ち方でも快適
DeathAdder V4 Proを持ったときの,フィーリングを確認しよう。
先述したとおり,DeathAdder V4 Proの形状は,DeathAdder V3 Proから大きくは変わっていない。そもそも,このシンプルで握りやすい形状が人気の一因なわけで,そこを大きく変化させるような冒険はしないだろうが,一応確認しておきたい。
ここでは,マウスの代表的な持ち方である「つまみ持ち」「つかみ持ち」「かぶせ持ち」に加えて,親指と薬指,小指といった側面に配置する指を立たせるように持つ変則的な持ち方の「BRZRK持ち」の4パターンでしばらく使用してみた印象を紹介する。
![]() つまみ持ちの例。重さが軽いマウスなので快適に操作可能 |
![]() つかみ持ちの例。持ち上げるときに,手の裏でしっかり後側(手前側)をホールドできていれば,問題なく操作できる |
![]() かぶせ持ちの例。とくに問題も感じず自然に扱える |
![]() BRZRK持ちの例。支点となる側面に配置した指で,しっかり握り込めれば快適 |
4つの持ち方で試してみたわけだが,とくにコレといった問題は感じられず快適に扱うことが可能だ。やはり,軽量なマウスは手首や腕への負荷が少なく,長時間ゲームに興じていても不快に思うようなことはなかった。
Razer Synapse 4で設定をカスタマイズしよう
DeathAdder V4 Proは,Razerが提供している統合設定ソフトウェア「Razer Synapse 4」で設定をカスタマイズできる。Synapse 4を利用すれば,マウスセンサーの感度やLEDインジケータなどを,自分に合わせて細かく設定できるのだ。
簡単ではあるが,どういった設定が可能なのかを,画像で説明していこうと思う。
まずは,「カスタマイズ」タブ。ここではボタンの割り当て変更や,USBワイヤレスアダプタに搭載されているインジケータLEDが何を示しているかの設定を行える。
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「パフォーマンス」タブでは,マウスの感度やポーリングレート,ほかのマウスから移行するときに同程度の感度にする「感度マッチャー」など,センサー周りの調整が可能だ。
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「電源」タブでは,バッテリーに関連する項目を設定できる。マウスをどれくらい操作しないでいるとスリープモードに入るかや,どれくらいのバッテリー残量で低電力モードになるかを決められるので,好みに合わせて調整しよう。
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「キャリブレーション」タブには,マウスをどれくらい持ち上げたら,センサーの反応が途絶するかの「リフトオフディスタンス」(Synapse 4ではトラッキングディスタンス)に関連した設定項目だ。
「非対称カットオフの有効化」をオンにすると,リフトオフだけでなくランディングディスタンスも調整できるようになる。
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「アドバンスト」タブは,マウスの加速度や持ち方の傾斜による水平方向の補正など,センサー周りに関連した追加の設定項目をまとめた項目だ。
加速を利用したい場合は,あらかじめ用意されている3つのプリセットから選ぶか,自分でカスタムできる。ゲーマー向けマウスで,加速を利用するゲーマーはあまり多くないだろう。
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Synapse 4ではDeathAdder V4 Proをかなり細かくカスタマイズすることが可能だ。筆者が個人的に注目したのは,パフォーマンスタブのポーリングレート欄にある「スマートポーリングレートスイッチャー」である。
これは,フルスクリーンモードでゲームを開始すると,Synapse 4が自動的にポーリングレートを変更してくれるというものだ。普段使いでは500Hzで運用し,ゲーム中は2000Hzにしたいというような場合,この設定はかなり有用である。
ただし,ゲームによっては,高いポーリングレートを使用するとスタッタリングなど性能低下を招くこともあるので,その点は注意しておこう。
DeathAdder V4 Proのセンサーをチェック
DeathAdder V4 Proには,Razer独自の「Focus Pro 45K Optical Sensor Gen-2」が内蔵されている。ポーリングレートは最大で8000Hz,トラッキング解像度は最大4万5000 DPIと,ゲーマー向けマウスとしてはかなりのハイスペックと言えるだろう。
そこで,4Gamerでは恒例となっているセンサーのテストとして,「MouseTester」を用いてテストしてみた。
なお,テストで使用した環境とSynapseのバージョンは下のとおり。使用したマウスパッドは「ARTISAN 飛燕 MID」だ。環境が異なれば結果に差が生じることもあることはお断りしておく。
●テスト環境
- CPU:Core i9-12900KF(16C24T,定格クロック3.2GHz,最大クロック5.2GHz,共有L3キャッシュ容量30MB)
- マザーボード:MSI Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4(Intel Z690チップセット)
- メインメモリ:PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2
- グラフィックスカード:GeForce RTX 3080(グラフィックスメモリ容量10GB)
- ストレージ:Intel SSD 670p(SSDPEKNU010TZX1,NVMe M.2,容量1TB)
- サウンド:オンボード
- OS:Windows 11 Pro
●テスト時のマウス設定
- DeathAdder V4 Proのファームウェア:10.0.15063.0
- Synapseのバージョン:4.0.86.2507220252
- DPI設定:100〜45000 DPI(1 DPI刻みで設定可能)
- USBレポートレート設定:125/250/500/1000/2000/4000/8000Hz(主にワイヤレス接続の1000Hzを利用)
- Windows側マウス設定「マウスポインターの速度」:左右中央
- Windows側マウス設定「ポインターの精度を高める」:無効
テスト方法は,マウスを一定のリズムで左右に振り,DPIを400,800,1600と切り替えて異なるトラッキング解像度で行う。
計測結果のグラフは,縦軸(xCounts)のプラス方向は左で,マイナス方向が右への振り。横軸はミリ秒(ms)単位での時間経過を表している。青い点はセンサーの実カウントで,青色の線はカウントを正規化したものだ。青線が滑らかかつ点がその上に並んでいるほど良好となる。
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続いてはリフトオフディスタンスを見ていく。テスト方法は単純で,厚みの異なるステンレス板を,マウスとマウスパッドの間に敷き,反応が途絶する高さを割り出す。
なお,Synapse 4でスマートトラッキングの設定を「高」に,つまりセンサーの反応距離が高い状態でテストした。その結果は,1mmで反応したりしなかったりという状態になり,1.1mmで完全に途絶という状況だ。
4Gamerの合格基準である2mm以下にきちんと収まっているので,優秀と言えるだろう。
最後は,アングルスナップこと直線補正の確認をする。これは使用者の意図しない補正が働いていないかの確認だ。Windows標準アプリの「ペイント」を使い,いろいろな線を引いて確認する。その結果が次の画像だ。
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線を引いてみたが,とくに引っ張られるような感覚もなく,操作したとおりにラインが引かれている。補正はないか,あるいは感じられない程度に弱いものなのではないだろうか。
DeathAdder V4 Proと他のハイエンドマウスで違いを感じられるか?
何度も述べているとおり,DeathAdder V4 ProとPRO X SUPERLIGHT 2 DEXは,ともに8000Hzのポーリングレートに対応している。これは1秒間にマウスとPC間で,情報を8000回やり取りできることを意味しており,一般的なゲーマー向けマウスで多い1000Hzよりも,ユーザーの手の動きを忠実に読み取れるわけだ。
マウスの初動や止めなども,情報のやり取りが多い分だけ早くなる理屈である。
ただ,問題点もある。通信回数が増えるということは,増えた転送データ量を処理するために,CPUにかかる処理負荷が増えてしまう。そのために,CPU性能とプレイするゲームによっては,フレームレートの低下を引き起こし,結果的に快適さが失われるケースもあるわけだ。
つまり,8000Hzが誰にとっても最良というわけではない。個々の環境に合わせたポーリングレートの設定をするべきだろう。
それでは,DeathAdder V4 ProとPRO X SUPERLIGHT 2 DEXを,それぞれポーリングレート8000Hzで動かしたときに,明確な差があるのか? 筆者の感覚では,とくに両機で目立った差があるようには感じられなかった。
比較的CPU負荷が低めなエイムトレーニングソフトウェアの「Aim Labs」を用いて,両機でいろいろ試してみた。普段使いの1000Hzと比べれば,どちらも多少精度が上がっているような気はするのだが,明確に「上がった」とまでは断言できない程度だ。
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それぞれに形状の違いがあるので,手に馴染む,馴染まないという好みの違いはあると思うが,センサーの性能やポーリングレートの面で,大きな差というのは感じられなかった。これは,筆者が40代のオッサンゆえ感覚が鈍くなっているのが原因なのかもしれないが。
結論として,一般消費者向けのマウスやゲーマー向けでもスペックの低いマウスからDeathAdder V4 Proへの乗り換えであれば,違いを感じられるかもしれない。すでにゲーマー向けのハイスペックなマウスを使っている人が,DeathAdder V4 Proに乗り換えたとしても,違いを感じられない可能性はあるということだ。
安定して使えるが価格に難あり
結論として,DeathAdder V4 Proは,eスポーツで十分に戦えるマウスだと言える。数グラムではあるが,本体の軽量化を果たし,バッテリー駆動時間もポーリングレートが1000Hzなら最大150時間,8000Hzでの運用でも最大22時間と,結構長持ちだ。
また,Synapse 4には,フルスクリーンでアプリケーションを動かしたときだけポーリングレートを変更させる機能もあり,個人的にはかなり良いマウスだと感じている。
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ただ,税込直販価格が2万8980円と,3万円に近いので,手を出しにくいというのが正直なところ。より低価格でもeスポーツで戦えるゲーマー向けマウスが存在している今の市場で,この価格帯は強気すぎる印象が拭えない。
結局は,ゲーマーのお財布と相談というところだろうか。ある意味,忠誠心が試されるマウスかもしれない。
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