連載
熱源にすがり命をつなぐ極寒ホラー「Kriophobia」(ほぼ日 インディーPick Up!)
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そこは冷たい鉄の壁と,非道な実験の痕跡が残る死の世界。凍えきった指先でライトを握りしめ,彼女は闇に潜む異形と自身の記憶におびえつつ,出口を求めて歩き出す。
本日紹介するのはFira Softが手掛ける「Kriophobia」だ。物語の主人公は,地質物理学者のアナ。彼女は調査のために訪れた孤島で事故に遭い,閉鎖された地下基地の深部へと足を踏み入れることになる。
そこは単なる廃墟ではなく,かつての軍事機密とアナ自身のトラウマが交錯する場所だった。
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本作の最大の特徴は,襲い来る「寒さ」との戦いだ。アナの体温は刻一刻と奪われていく。プレイヤーは探索の最中も常に体温計に目を配り,ヒーターや暖炉といった熱源を見つけ出して暖を取らなければならない。
凍てつく通路を強行突破して先を急ぐか,遠回りしてでも暖かい部屋を経由するか。その判断が生死を分けることになる。
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探索を進めるには,基地内に残された装置を動かす必要がある。配線をつないで電源を復旧させたり,クレーンを操作して道を切り開いたりしながら,閉ざされた扉の先を目指すのだ。
道中には,施設の闇が生み出した怪物が徘徊している。だが,アナは兵士ではない。銃弾は貴重であり,正面から挑めばすぐに尽きてしまう。物陰に隠れ,足音を殺してやり過ごすことこそが,この場所で生き残るための最善策となる。
熱源にすがり命をつなぐ極寒体験
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このゲームにおいて,最も恐ろしい敵は怪物ではなく気温だ。探索中も体温は容赦なく下がり続け,視界は白く霞んでいく。わずかな薪や燃料を探し出し,暖炉に火を灯した瞬間の安堵感はなんとも言い難いものがある。
アイテムを拾うために寒い部屋へ入るか,それとも諦めて安全なルートを行くか。常に突きつけられる選択が,プレイヤーの精神をじわじわと削っていく。
動く劇画の中を彷徨う映像美
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グラフィックスは独特なイラスト調で描かれ,カメラアングルは固定されている。まるで海外のコミックブックを読み進めるような感覚だ。
キャラクターが奥へ進むとカメラが切り替わり,新たな視点から不気味な廊下が映し出される。あえて視界を制限するこの手法が,見えない死角への恐怖を掻き立て,プレイヤーの想像力を刺激する。
逃げ隠れ震える無力な探索行
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アナの手元にある物資は常に不足している。怪物は硬く,執拗だ。見つかれば貴重な回復薬や弾薬を浪費することになるため,戦うよりも逃げるほうが賢い。
ロッカーに身を潜め,怪物が通り過ぎるのを息を潜めて待つ時間は,永遠のように長く感じるだろう。派手なアクションではなく,静かな緊張感こそが本作の醍醐味だ。
静寂と寒気が支配する地下基地で,リソース管理の重圧と忍び寄る恐怖に耐える体験は,往年のホラーゲームファンに強く刺さるはずだ。派手な銃撃戦よりも,じっとりと肌にまとわりつくような不安感を楽しみたい人や,物語の断片から背景を読み解くことが好きな人には,特におすすめしたい一本だ。
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